“大渋滞は回避”ハウステンボス花火大会 道路と鉄道のバランスも課題に 佐世保

花火直後のハウステンボス駅周辺。道路は徐々に渋滞が解消したが、駅構内は利用者で混雑が続いた=佐世保市南風崎町(写真は一部加工しています)

 長崎県佐世保市のテーマパーク、ハウステンボス(HTB)が毎年開催する大規模な花火大会。多くの観客を引きつける一方、昨年秋は大渋滞が発生した。HTBは関係機関と対策を検討。今年秋は、事前にJRの利用を呼びかけるなどして大きな混乱はなかったが、隣接駅の混雑や路上駐車も目立った。当日現場を歩いて課題を考えた。
 10月8日昼。九州各地のナンバープレートを付けた車がHTBに続々と吸い込まれた。お目当ては西日本最大級を誇る2万2千発の「大花火まつり」。園内外には昨年より2割程度多い約7750台分の駐車場を用意し、夕方に満車となった。午後8時半に花火の打ち上げが終わると、周辺道路は一時混雑したが、徐々に解消。イベント関係者は胸をなで下ろした。

列車を待つ人で混雑するハウステンボス駅のホーム

◆苦い記憶
 昨年は苦い記憶が残った。新型コロナ禍が一服した11月に開催。想定以上の車が一度に押し寄せ、駐車場や誘導員が足りずに大渋滞した。近隣の男性住民(70)は「生活道路が長時間ふさがれた。車で帰宅できずに困った」と振り返る。
 反省を踏まえ、HTBは県警や県、佐世保市などと対策を協議。年末のカウントダウン花火から交通誘導員を増やすなどして、秋のイベントに向けた準備を進めた。
 注力したのは、車からJRに乗り換え、ハウステンボス駅から来園する「パークアンドライド」。佐世保市は、同駅に近い、佐世保、三河内、川棚、彼杵各駅周辺の駐車場確保を支援。HTBの坂口克彦社長も自ら交流サイト(SNS)で分散来園の情報を発信した。同社は「昨年と比べ、渋滞を抑制できた」と総括する。
 JR九州は花火に合わせ、ハウステンボス駅発の臨時列車を8本運行、普通列車の連結車両数を増やした。利用者は昨年と比べ、長崎方面が約3倍、佐世保方面が約2倍に増えた。

ハウステンボス周辺地図

◆長蛇の列
 その半面、駅構内は列車を待つ人で混み合った。SNS上では利用者から「臨時便や車両をもっと増やして」と不満が続出。同駅は交通系ICカードが使えないため、切符売り場に長蛇の列ができた。
 このほか、周辺の早岐瀬戸沿いや歩道では路上駐車が散見。コンビニは無断駐車で埋まり、店員は「毎回のこと…」とあきらめ顔。パトカーの注意を受け流す人もいた。
 県と同市は、HTBへのカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を計画。交通渋滞は共通課題となるため積極的に協力した。市担当者は「人の流れがJRに分散して渋滞緩和につながった」とする一方、「(JRが混雑した)反動で次回は車移動が増える可能性がある」と懸念する。
 JR九州は「今後も適切な輸送力を検討する」。ただ、HTBを経由する大村線は単線のため、臨時便を増やすダイヤの調整が難しく、車両の追加にも限界があるという。
 道路と鉄道のどちらかに人流が集中すれば混雑のリスクが高まる。そのバランスをいかに取るかも今後の対策の鍵を握りそうだ。


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