
今回のテーマは、「スマート農業」の現状。スマート農業とは、農業に先端技術を使うことで、従来の課題を克服していく取り組み。

例えば自動操舵のシステムは10年ほど前から普及し始め、今では全国で1万8000台近く販売。そのうち北海道は1万4000台ほどと、全国の8割近くが集中している。

技術が進んでいく一方で、どのように運用するのか。現場では試行錯誤が続いている。
【ロボットトラクターをシェア!?見えてきた課題も】
当別から深川へと向かうトラック。運んでいるのは・・、最新の「ロボットトラクター」、いわゆるロボトラだ。価格は約1800万円する。

畑作農家の阿波さん。自動操舵は今年から利用しているが、ロボトラは初めてだ。まずは有人でぐるっとほ場を回り、形状を読み込ませる。

後はリモコンでスタートすれば、完全自動でトラクターが動き、後ろにつけたロータリーが畑を起こしていく。


最新のロボトラ、別の日には沼田町に。近隣の農家の方にも見てもらう。無人のトラクターが整地し有人のトラクターで麦の一種エンバクの種をまく。1人でトラクター2台を動かす「協調作業」だ。

順調に進んでいたが・・・途中で止まってしまった。無人運転なので安全第一。草を障害物と判断したようだ。

この取り組み、スマート農機を離れた地域の複数の農家でシェアすることで、経費の削減や収益向上につながるかを実証するプロジェクト。あえて離れた地域にしているのは、作物の生育時期のずれを利用し、作業時期をずらすことができるか確かめるためだ。特別に設置した観測装置で細かな気象データを集め作業スケジュールを調整する。

9月、稲刈りの時期。2000万円以上する最高級のコンバインが、自動で作業をしていた。以前は一定以上の技術を持たないと稲刈りの作業はできなかったが、自動化によってバイトの人でも可能になった。自動のコンバインは従来のものより200万円ほど高いというが、使用した農家は「人件費と考えると、すぐにペイできる」と話す。

一方、刈り取った後には違う米の種類が次の農家と混じらないようにきれいに清掃することが必要。この作業を誰がやるのか?そして万が一故障した時の費用はどうするのか?コンバインなどをシェアリングするには、こうしたいろいろな課題もある。

ドローンで上空から撮影した生育状況などのデータも活用されている。肥料を効率的に散布したり、刈り取りの時期を判断したりすることができる。これまでのドローンの2倍以上の作業効率が期待できる速度の速いドローンの導入も検討している。このドローンもシェアリングの対象だ。

スマートリンク北海道の小林常務は「地域によって気候状態が違う。今年ある程度気象データを取得できたので、農家の作業に合わせて、このデータをもとに生育ステージを予測しながらさらに細かくスケジューリングしていくことが重要」と話す。

【スマート農業の第一人者 北大の野口教授の見解は?】
スマート農業の第一人者として知られる北海道大学の野口教授。スマート農業機械について「世界的に機械の大型化には限界があるとされている。何十トンもある機械が畑の中を走り回ると土が固められてしまい、作物の生育を阻んでしまう。比較的小さなロボットが複数同時に作業することによって大きいトラクター並みの作業をするという流れにある」と話す。

野口教授は「例えば畑作だと、小麦、大豆、てんさい、ジャガイモ、タマネギなど、いろいろな種類があり、作業機はバラバラで、ロボットに切り替えていくのは大変。さらに、収穫作業のような難しい作業もロボット化できるのか。ロボット農機をコアにして、いろいろな作業に適応できるようにすることが北海道の次の課題だ」と話す。
【MC杉村太蔵さんの一言】

MCの杉村太蔵さんは「技術とヒトの融合でできないことをなくしていくべき」と話した。現状では全ての作業を自動に置き換えることは技術的にも、運用的にも難しい。ただ、一部でも単純作業を自動化できれば、作物の品質が向上したり、人間にしかできないことにより力を注いだりすることができる。
北海道の基幹産業である、農業。これからも注目していきたい。
(2022年11月5日放送 テレビ北海道「けいナビ~応援!どさんこ経済~」より)