宮城県で1年間に8.8万トン 食品ロスの削減へ高校生が新たな名物を考案

食べることができるにもかかわらず廃棄される、食品ロスの問題です。宮城県では、1年間8.8万トンに上っています。食品ロス削減のため、塩釜市であるプロジェクトが始まりました。

10月29日。塩釜市の老舗うなぎ店、割烹中長で新名物のお披露目会が開かれました。その新名物とは、フィッシュバーガーです。
一見、どこにでもあるようなフィッシュバーガーですが、実は傷付き価値の下がった魚を使っています。考案したのは、塩釜高校でフードデザイン学を専攻する3年生29人。
塩釜高校の生徒「SDGsにも共通して考えられたので、貢献できたのはうれしく思う」「食品ロスの問題が多く挙げられている。こういった機会で、より食べ物に対しての思いが深くなるので、良い機会だと思う」

高校生が考案したフィッシュバーガー

塩釜市の基幹産業である漁業。魚市場は東北有数の水揚げ量を誇っています。しかし、長年ある課題に直面しています。
漁師「(1キロ当たり)200円から300円くらい。いっても500円くらい。こっちだと2500円から3000円くらい。商品だから見た目が悪いとね、どうしても価値が無くなる」

刺し網漁で捕獲したヒラメやマダイなどのうち、傷が付いたものは活魚としての価値が下がり、価格が10分の1ほどに。更に、傷が多い場合は廃棄されることもあります。
食べることができるにもかかわらず廃棄されてしまう、食品ロス。県によると、その量は県内で1年間に約8.8万トンに上っています。これは、県民1人がご飯を茶碗1杯分、1年間毎日廃棄し続けている量に相当します。

商品価値が無い魚

価値の下がった魚や廃棄される魚を活用できないか。4月、塩釜市の商工会議所や高校、飲食店、水産加工会社、漁師など、地元の産学官が連携を図り魚の有効活用について検討を開始。

新たな名物にと考案されたのが、ヒラメやマダラなどの白身魚のフライを使用したフィッシュバーガーです。
割烹中長根岸幸一郎さん「タラのフライは和食のような感じですけど、洋食でもあるしハンバーガーとして合わせることは打ち合わせの中でポンポンと決まった」

塩釜高校の生徒が考案

大まかなデザインは高校生が担当。14種類のフィッシュバーガーを考案しました。味付けや盛り付けは、地元の割烹の料理人や料理教室の代表などプロが吟味を重ね監修し、最終的に3種類に絞りました。

プロジェクト始動から半年。完成したのがタラのフライを3段重ねにして、さっぱりとした甘酢とマスタード風味のタルタルソースで味付けした洋風バーガー。
揚げた白髪ねぎに梅風味のタルタルソース。決め手に創業100年以上のうなぎ店秘伝のたれを使用した和風バーガー。
キャベツの千切りにゆで卵とホワイトソースをふんだんに使い、タラのフライをコッペパンでサンドした、たらこっぺ。
試食した人たちからは軒並み高評価が得られました。
試食した人「すごいおいしいです。ボリュームがあると思ったけど、全部食べられるね」「お魚だとさっぱりしているので、いっぱい食べられる。今までだと、ハンバーガーは子どもの食べ物だと思っていたけど、これだったら食べられるなと」

しかし、中には改善点を指摘する声も。
試食した人「ちょっと塩味が足りないかなと思っただけ」「三角のハンバーガーが入るような紙があって、そこの中に入れてかむと食べやすいかなって。こぼれたりしない」

にぎわい創出へ

3種類の中で一番人気だったのが、たらこっぺです。
割烹中長根岸幸一郎さん「こういうのは絶対良いと思うので、継続して何かできればという感じですね。うちだったら、ウナギのたれといろいろなたれを使って、ある意味お祭り事ですし」
塩釜商工会議所越後宏経営相談員「想定を超える反響をいただいたことで、新規でお帰りいただいた方もいらっしゃったので、そこは少し残念に感じながらそこを自信につなげていけるきっかけになったと思う」

食品ロスの削減に向け、漁業のまちで始まったプロジェクト。新たな名物でにぎわいの創出も目指します。
塩釜商工会議所越後宏経営相談員「新しい観光資源となり得るメニューだと思っているので、こちらを広く皆さんに周知していきながら、塩釜市に一人でも多くの皆さんに来ていただいて、街歩き楽しんでいただけるような取り組みしていきたい」

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