「被害者支援に生かしたい」 女性警官が公認心理師資格 長崎県警、大渡優子警部補

「これまで以上に被害者らに寄り添いたい」と話す大渡さん=長崎市尾上町、県警本部

 長崎県警犯罪被害者支援室の大渡優子警部補(48)が、県警の警察官で初めて「公認心理師」の資格を取得した。仕事と育児の傍ら、独学で勉強を重ね試験に合格。専門的な知識を生かし、これまで以上に、犯罪被害者やその家族に寄り添い、支援していく考えだ。
 公認心理師は、心理学に関する専門的な知識や技能に加え、保健医療や福祉、教育などの知識を持ち、関係職種と連携して心理的な支援をする国家資格。2018年から国家試験が実施されている。大学や大学院の指定科目履修が受験資格だが、17年9月から5年間に限り、実務経験5年と講習受講で試験を受けられる特例措置がある。大渡さんは、今年で最後だった特例措置での試験を7月に受け、突破した。
 18年春、犯罪被害者支援室に配属。トラウマ(心的外傷)や心的外傷後ストレス障害(PTSD)について研修を受けたことはあったが、2年前に上司から勧められ資格取得を意識した。かつて、被害者家族の対応に当たった時の苦い経験も、きっかけの一つだった。
 「警察と関わることがきつい。支援をしてほしくない」
 当時、大渡さんは早急なケアが必要だと考え、ある被害者家族の説得に当たったが、なかなか首を縦に振ってもらえなかった。
 「何とかしたい」と思い関係機関に相談。後日、精神科医と被害者家族の面談で、医師がほんの十数分話をすると、家族は支援を受け入れる意思を示したという。大渡さんの目に、専門家の肩書を持つ精神科医が「魔法使い」のように映った。
 本格的に勉強を始めたのは本年度に入ってから。図書館で参考書や問題集を借り、休日に部屋にこもってリモートで講習を受ける日々。夫と小学生の子どもたちのサポートもあって乗り切ることができた。
 「わずか十数分の面談で被害者家族に支援を受け入れさせることができた、あの時の医師のように、私も被害者やその家族に寄り添う“魔法使い”になりたい」。大渡さんはそう思っている。


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