新電力撤退・割安プラン廃止で「電力難民」続出 「どれだけ上がるか読めない」

飲食店などが入居するテナントビル。運営会社は電気代高騰に不安を抱える=京都市東山区

 燃料価格の高騰や為替の円安で新電力の経営が悪化し、契約者に影響が広がっている。新電力の事業撤退やプランの廃止で「電力難民」となる契約者が続出し、新たに契約を結び直した場合も電気代高騰の懸念がくすぶる。新電力側も事業の採算が取れない中、新規契約の受け付け停止や割安なプランの廃止など厳しい選択を迫られている。

 「月平均50万円だった電気代がどれだけ上がるか読めない。電力卸売価格の高騰で2~3倍に跳ね上がるかもしれない」。飲食テナントなどが入居するテナントビル1棟の運営会社(京都市東山区)に勤める男性(58)は、表情を曇らせる。

 今年5月、長年契約していた新電力の料金プランが9月末で廃止されると通知を受けた。すぐに他社を探したものの、軒並み新規の受け付けを停止している状況という。契約先が見つからない場合も、大手電力の送配電会社による最終保障供給制度で電気の供給は受けられるが、標準的な電気料金より割高になる。

 結局、関西電力が新たに設けた市場価格連動型プランで契約を決めた。ただ、同プランは、日本卸電力取引所(JEPX)の取引価格が料金に反映されるため、高騰する懸念が常にある。新型コロナウイルス禍で痛手を負うテナントには請求できないため、上昇分は運営会社が負担するつもりだが、男性は「ガソリンや肥料は支援があるのに、電気は放置されている。早急に対策をとらなければ企業の経営が成り立たなくなる」と嘆く。

 新電力側も対応に苦慮している。電力調達費が販売費を上回る状況が続く中、京都や滋賀を拠点とする事業者の多くが、法人向けの新規契約の受け付けを停止している。ある新電力の営業担当者は「従来の料金プランでは採算が合わない。契約更新のタイミングで解約してもらっている状況だ」と明かす。

 全国では倒産や撤退に追い込まれる新電力も多く、「電力難民」となる契約者が今年に入って急増。経済産業省によると、10月3日時点で全国約4万5千件が、セーフティーネットにあたる最終保障供給制度を利用している。

 秋以降、電気代はさらに上昇する見通しだ。最終保障供給の料金体系が9月から値上げされたほか、大手電力各社も来春に向け、料金の改定などを相次いで表明している。政府は来年1月にも、家庭向けの電気料金を約2割引き下げ、今後想定される平均的な値上がり分を国が肩代わりする負担軽減策を導入する考えだが、燃料高と円安で電気料金が高騰する構造的な問題は残ったままだ。

 再生可能エネルギーを扱う新電力、たんたんエナジー(京都府福知山市)の根岸哲生取締役は「緊急対策も大事だが、根本的な問題解決にはならない。再エネへの転換や省エネが進むよう中長期的な支援が必要ではないか」と指摘する。

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