「素晴らしい音が出る芸術作品」“音楽の街”で生まれた壺型スピーカー【しずおか産】

今回の「しずおか産」は音楽と楽器の街・浜松市で生まれた『壺の形をしたスピーカー』です。

高級オーディオ向けスピーカーの設計と販売をする「Tom's lab」代表の谷脇さんです。

壺の形をしたスピーカー

<Tom's lab 谷脇富さん>

「見てわかるとおり、ここの一部から音が出ているところがポイントでして、無指向性スピーカーですから、当然ながら広がり感、臨場感が出ます」

スピーカーの奥側に演奏者がズラッと並んでいる状況が非常にわかりやすいんです。木のスピーカーでは味わえないような音質のスピーカーにすることができました。黒いツヤと滑らかな輪郭が美しい陶器製の壺。陶器という素材が吸収する音と壺の丸みで、まるで劇場にいるかのような音質を実現しました。

谷脇さんは、かつて大手楽器メーカーで電子楽器やAV機器の開発を手掛けていました。11年前に独立し、理想のスピーカーを追求し続けています。

<Tom's lab 谷脇富さん>

「従来からこれだけではなくて何種類か試作品を作っていたものがあったんですけど、2021年12月ぐらいにコロナの関係であるとか、戦争のことで、かなり世の中が落ち込んだ状態、私も精神的に落ち込んだので『これじゃいかんな』ということがありまして、それをもう一度始めてみようと思って、いろんな陶芸家だったり、メーカーに伺いを立てたけど『難しい』とほとんど断られた」

Tom's lab 谷脇富さん

谷脇さんの想いを叶えたのが、天竜区の陶芸家・山口剛さんです。壺の口とスピーカーを隙間なく組み合わせるためには、図面と1mmのズレもなく作る必要があり、それはプロの陶芸家でも至難の業でした。

<遠州天龍焼 山口剛さん>

「自分の作品だと目見当でやっていた部分が多いが、この壺型スピーカーの部分はそういうわけにはいかない。いわば、工業製品に近いものなのでその精度を求められるという点では自分の作品とは大きく異なった部分でしたね」

ロの陶芸家でも至難の業

山口さんの作品は高い芸術性と機能性をあわせもつ「遠州天龍焼」として知られています。山口さんは日本伝統工芸展で計5回の入選を誇る陶芸家です。

遠州天龍焼

<遠州天龍焼 山口剛さん>

「実際にできたもので音楽をきいたら、音がふんわり出てくるような感じがして、なんかすごく気持ちがいいというか、その空間にいることがとてもリラックスできる感じがしました」

遠州天龍焼 山口剛さん

壺型スピーカーは「熱意」と「技術」によって生まれました。

<Tom's lab 谷脇富さん>

「当然、家庭においてもいいですけれども、例えば喫茶店であるとか、レストランとか、たくさんの人が集まるような所で使われるといいんじゃあないかと。見てもこれがスピーカーなのかわからない人がいるかもしれません。単純に芸術作品として見る方もいるかもしれないですし。だけど、素晴らしい音が出ているよというところがポイントかなと」

壺型スピーカーは「熱意」と「技術」によって生まれた

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