【漫画】『肩幅ヒロコ』が生み出す切ない笑い 作者のコンプレックスから生まれた話題作

作者であるクリスティーヌ中島さん(@christine_nakaj)自身が、学生時代に抱えていた“肩幅が広い”というコンプレックスを軽妙に描いた作品『肩幅ヒロコ』がTik Tokで70万回再生され、話題をさらった。よくある学園ドラマの中で、異様に肩幅が広い主人公の肩幅ヒロコが投入されると、途端にシュールレアリズムの魅力や、切ない笑いが押し寄せ、不思議な面白さにハマってしまう。

そんな新たな表現を模索する、漫画家の中島さんにメールで取材を行い、『肩幅〜』をはじめ、代表作に関する創作秘話について話を聞いた。

ハッピーエンドで読み返したくなる作品に

SNSなどで積極的に作品を発表している中島さんは、これまでに並み居る漫画賞でも実績を残すプロの漫画家だ。ざっと羅列すると、講談社アフタヌーン四季賞チャレンジカップもう一歩で賞、講談社シリウス新人賞準佳作、講談社モーニング期待賞、ライン漫画月例賞奨励賞、anon press(Web SF誌) 読切掲載されるなどの実績がある。

『肩幅ヒロコ』1-1

たくさんの作品を発表する中で、<笑い>の要素を大切にしているのが特徴だ。その理由について、中島さんは「編集さんから『漫画家志望の人は皆陰鬱な漫画を描くので無個性に見える』という話を聞きました。それに、尊敬する漫画家さんが『ハッピーエンドで読み返したくなる漫画を目指したい』とおっしゃっていたのを聞いて、やはりプロは人を楽しませるのが仕事だろうと思うようになり、それからは明るい作品を描きたいと思い、コメディ要素が多くなりました」と話す。

自身のコンプレックスが創作のきっかけ

では、Tik Tokで話題となった『肩幅ヒロコ』はどのようなきっかけから生まれたのだろうか。中島さんは、自身のコンプレックスが創作に大きく関わっていると話す。

クローン人間の話をテーマにしたSF恋愛作品。クローンをテーマにした作品では珍しく笑いの要素を踏まえた異色作だ /『本物のアツシ』2-1

「私も体格がいいほうで肩幅もあるので“肩幅コンプレックスの人の話を描こうかな”という発想から、『肩幅ヒロコ』を描きました。やはり、コンプレックスに対処方法は人それぞれで、大人しく見える子も攻撃的な子も、コンプレックスがないように見える子も弱さを表面に出していないだけなんじゃないか。それに、主人公のヒロコは単に男の子に気に入られてハッピーエンドではなく自分で弱さを克服するような話にしようと思いましたね」。そうした思いから生まれたこの作品は、ストレートな笑いだけではなく、胸に迫るような切なさも魅力となっている。

厨二病の学生をテーマにしたコメディ作品。荒唐無稽な展開が何とも面白い / 『鬼龍院の話』3-1

11月4日には電子書籍として出版されることが決定した『肩幅ヒロコ』。この作品を踏まえて、今後はどのような活動を展開していくのだろうか。中島さんは言う。「今まで短編を中心に描いてきたのですが、長編でヒット作を出したいと思うようになりました。今企画を考えているところです。全部うまくいくとは限りませんが、めげない性格なので継続して頑張っていきます。応援いただけると嬉しいです!」と強い意気込みを語ってくれた。“切なオモロイ”路線を踏襲した作品になるのか。それとも全く別の作風を世に送り出すのか。注目していきたい。

中島さんには珍しいシリアス要素が強い作品。AIの男の子と開発者の女性が恋をするストーリーでSF好きだという中島さんの愛が各所にあふれている / 『モノリス』4-1

◆クリスティーヌ中島さんInformation

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(よろず~ニュース特約・橋本未来)

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