中国大型ロケット「長征5号B」コアステージは日本時間11月4日夜に再突入か

【▲ 実験モジュール「夢天」を搭載して打ち上げられた「長征5号B遥4」ロケット(Credit: CNSA)】

中国は2022年10月31日に独自の宇宙ステーション「天宮」2番目の実験モジュールとなる「夢天」を打ち上げました。夢天は打ち上げ翌日の11月1日に天宮宇宙ステーションの「天和」コアモジュールへドッキングすることに成功し、11月3日には左舷側ドッキングポートへの移設が行われており、天宮宇宙ステーションは主要なモジュールの組み立てが完了しました。

関連:中国、実験モジュール「夢天」を打ち上げ 独自の宇宙ステーション「天宮」完成へ

【▲ 天宮宇宙ステーションの想像図(Credit: CMS/CASC)】

この打ち上げに使われた「長征5号B」ロケットのコアステージ(第1段)は夢天の分離後に地球低軌道を周回していましたが、間もなく制御されない状態で大気圏へ再突入する可能性が報じられています。

宇宙物体(人間が宇宙に打ち上げた物体)の再突入予測を行っている米企業のエアロスペース・コーポレーションによると、コアステージの再突入ウィンドウは日本時間2022年11月4日20時20分の前後3時間(11月4日17時20分~23時20分)と予想されています。ウィンドウのちょうど中間のタイミングであれば南太平洋上空で再突入する可能性がありますが、下図の水色と黄色の線で示された場所なら、どこでも再突入する可能性があると同社は注記しています。

【▲ 米エアロスペース社による長征5号B遥4コアステージの再突入地点予測(日本時間11月4日4時58分時点)。日本時間2022年11月4日20時20分の再突入予想地点は南太平洋上空(円で囲まれた場所)で、それよりも早くなった場合は青い線の場所、遅くなった場合は黄色い線の場所のどこかで再突入する可能性がある(Credit: Aerospace Corporation)】

ロケットの一部が大気圏に再突入するのはめずらしいことではありませんが、一般的なロケットで地球を周回する軌道に残されるのはサイズが小さく軽い第2段以降のステージとなります。サイズが大きな第1段やロケットブースターなどは打ち上げの早い段階で切り離されて地上や海上に落下することが多く、事前に落下予測範囲が設定されており、航空機や船舶などに対して事前通告が行われています。また、近年ではスペースXの「ファルコン9」のように第1段を回収・再使用するロケットも登場しています。

いっぽう、長征5号Bは全長約33m・直径5mのコアステージと4本のロケットブースターのみで構成されていて、ペイロード(衛星や宇宙船などの搭載物)はコアステージが軌道に投入します。そのため、ペイロードを分離したコアステージが軌道に残り、やがて大気圏へ再突入することになるのです。過去の長征5号B打ち上げと同様に、今回もコアステージは制御されない状態で再突入するとみられています。

関連:中国が7月24日に打ち上げたロケット「長征5号B」コアステージは海上へ落下か(2022年)

エアロスペース・コーポレーションによれば、長征5号Bのコアステージが再突入する場合、地上や海上には5~9tの燃え残った部分が落下する可能性があるといいます。

【▲ 夢天実験モジュールを搭載した長征5号B遥4ロケット(Credit: CMS/CNSA)】

過去に3回実施された長征5号Bの打ち上げでは、アフリカのコートジボワール(2020年5月)、インド洋のモルディブ諸島付近(2021年5月)、フィリピンのパラワン島付近のスールー海(2022年7月)に燃え残ったコアステージの破片が落下したとされています。2020年5月の打ち上げでは地上の建物に被害が生じていますし、軌道上物体に詳しい天体物理学者のJonathan McDowellさんによると、2022年7月の問天モジュール打ち上げに使われた長征5号Bのコアステージはボルネオ島で破片の一部が見つかっています。

Source

文/松村武宏

© 株式会社sorae