えびす饅頭 ~ あんこたっぷり、焼きたてをどうぞ!阿智神社西参道のそばにあるお饅頭屋さん

倉敷美観地区へ行くと、いつも楽しみにしているお店があります。

阿智神社の西参道すぐ近く、焼きたてが食べられる「倉敷名物 えびす饅頭」です。

大判焼き、今川焼き、太鼓まん、御座候、ひじり焼き…。

地方によって呼び方はいろいろです。

岡山県では夫婦饅頭(フーマン)とも呼ばれますが、美観地区では「えびす饅頭」の名前でおなじみなんですよ。

営業は秋冬のみ。
夏の終わりには、いつ営業が始まるのか、シャッターが開く日を待ちわびるほどです。

焼きたてをその場で頬張るもよし、たくさん買ってお土産にしてもよし。

倉敷名物「えびす饅頭」を紹介します。

阿智神社の西参道すぐそばにある、焼きたての味「えびす饅頭」

倉敷駅から続く「えびす通り商店街」にある「倉敷名物 えびす饅頭」。

名前の由来はもちろん、「えびす通り商店街にある饅頭屋」として付けられたそうです。

阿智神社の西参道すぐそばにあり、美観地区にも近いですよ。

えびす饅頭の営業は、9月30日~翌年のゴールデンウィークの前後まで

秋冬だけの美味しいお楽しみです。

倉敷工業高等学校 繊維科(現:ファッション技術科)制作の「のれん」。

エビス様の顔がなんともユーモラスですね。

「倉敷名物 えびす饅頭」の字は、書道の先生である店主・島村稔(しまむら みのる)さんの奥さまが書かれました。

お饅頭は1個100円(税込)。10個買っても1,000円です。

「他と比べて少し小ぶりだから」と島村さんは言いますが、それでもこのお値段には驚きです。

焼きたてを待ちわびて。朝から通うかわいい常連さん

開店前、かわいい常連さんに出会いました。友永さんと息子さんの翔太くん(3歳)親子です。

美観地区を散歩して、えびす饅頭で休憩することが日課だそうですよ。

小銭をにぎりしめ、お饅頭の焼き上がりを待っています。

焼きあがりが待ちきれず、ようすを見に行く翔太くん。一緒に見てみましょう。

丁寧に油を塗り込み、熱した生地を銅板に流し入れます。

ちょっと生地がハミだすところがカリカリして美味しいんです。

手作りの粒あんをたっぷりと。

ぷくぷくと生地が盛り上がってきました。

翔太くんもこの笑顔。焼き上がりが待ち遠しいね。

空いている型に生地を流し込んでいきます。

あんこ側の生地を組み合わせてできあがり。きれいに焼き上がりました。

「大きいのはどれかな?これかな?こっちが大きい?」

と優しく聞きながら、翔太くんと一緒にお饅頭を選んでいます。

笑顔の素敵な店員さんが渡してくれますよ。

あんこたっぷり!焼きたて熱々のえびす饅頭

焼きたて熱々の「えびす饅頭」100円(税込)。

UFOの円盤のように羽がついているところが特徴です。

熱々のお饅頭を割ると、粒あんがぎっしりと詰まっています。

粒あんからも湯気がほかほかと出て、寒い日にはたまらないですね。

カリッと焼き色が付いた皮に、熱々とろとろの甘い粒あん。

焼きたては格別の美味しさ!お腹にお饅頭の温かさが広がって、身体もポカポカしてきます。

小ぶりなので手も汚れず、食べ歩きにもちょうど良いサイズですね。

翔太くんもこの笑顔。大事そうに、お饅頭を少しずつ食べていました。

毎朝えびす饅頭に寄ることを楽しみにしている翔太くん。春からは幼稚園に通うそうです。

かわいらしい常連客がいる、えびす饅頭。

そんなえびす饅頭の店主、島村稔さんにインタビューをしました。

家族で力を合わせて続けていく。「えびす饅頭」店主、島村稔さんインタビュー

インタビューは2020年3月の初回取材時に行なった内容を掲載しています。

──倉敷美観地区の食べ歩きといえば「えびす饅頭」というイメージがあります。お店はいつ頃からあるのですか。

島村────

う~ん、戦前くらいからじゃないですかね。あまりよく知らないんですよ。

というのも、私はもともとお店をやっていた人とのつながりがあるわけじゃないんでね。

──血縁関係で代々お店をされている、というわけではないのですか。

島村────

それが違うんですよ。

もともと「えびす饅頭」を考案されたかたがいて、始めは甥っ子にお店をさせていたんです。

そのあと考案者の息子さんが受継いで。

その息子の奥さんと私の家内が姉妹だったので、その縁でお店をやることになったんです。

もう20年になるかなぁ。

──えびす饅頭は粒あんのみの1種類ですよね。それはなぜですか。

島村────

初代(えびす饅頭のレシピを考案した人)が「絶対に変えてはいけない」と仰っていたそうなんです。

作り方もずっと同じ、形も大きさも、あんこも手作りの粒あん1種類のみ。

「絶対に美味しい」という自信の現れだと思います。

1種類だけで勝負できるから、変える必要がないんです。

──饅頭作りから自家製粒あんまで、すべてご家族でされているのですか。

島村────

私と、いまは娘(ご長男の奥さま)が一緒にお店を回しています。

あんこの仕込みは親戚の者がしているし、知り合いの娘さんに手伝いに来てもらったり。

私も今年(2020年)で78歳になるし、身体もきかなくなってきたから、家族で力を合わせていきたいですね。

娘にはぼちぼち、無理をしないでやってもらいたいです。

──夏期のお休み中は、何をされているのですか。

島村──

陶芸が趣味なので、ずっと好きなことをしています。

家内が書道の先生なので、60歳、70歳のときに陶芸と書道の二人展をやりました。

これからはちょっとゆっくりできたら良いと思っています。

島村さんが作った備前焼の花瓶

えびす饅頭がいつもそこにある、かけがえのない風景

「長くお店が続くと良いですね」
「いつまでも続けてください」

時に軽々しくこの言葉を使ってしまいがちですが、お店側がその気持ちに応えることは、なんて大変なことなんだろう、と思います。

えびす饅頭の不思議な縁は、「店を続けていこうとした努力」があってのことなんだなぁと感じました。

そして、焼きたてを頬張り、おしゃべりをし、楽しそうに行き交うお客さんの姿も印象的でした。

その姿は、何年も長い時間をかけて作られた、かけがえのない風景なのですね。

私もまた、阿智神社の西参道すぐそばにある、あんこたっぷりのえびす饅頭を食べにでかけたいと思います。

© 一般社団法人はれとこ