【後編】スポーツを通じて、地域・日本・世界を豊かに 笑顔咲き誇るスポーツビジネスの創造を目指して 

〝スポーツ×〇〇〟をコンセプトに、スポーツにかかわる人々の〝熱い想い〟をつたえるメディア、GrowSが今回お話をうかがったのは、スポーツX株式会社に勤務する中田彩仁(なかた・さやと)さん、松永健太(まつなが・けんた)さんです。
セカンドキャリア構築のフィールドとして、スポーツX株式会社への転職を決めた中田さんと松永さん。この決断には、”スポーツで地域、日本、そして世界を豊かに”という熱い想いがありました。
スポーツをフックに、世界中の豊かな価値の創造に懸ける中田さんと松永さんのキャリアやスポーツに対する想い、そして、スポーツX株式会社のビジネススピリットについて、スポーツ×ビジネスの視点から、前編・後編の2本でお届けします。

“サッカーを通じて、日本中、そして世界中を豊かに” ―スポーツX代表・小山淳氏が抱いた”熱き志”

ーー前編でも少しお話いただきましたが、あらためて、スポーツX株式会社(以下、スポーツX(敬称略))が取り組まれているスポーツ事業や、ビジネスモデルについて教えてください。

中田彩仁さん(以下、中田さん):日本中・世界中に数多くのプロスポーツクラブを作り、スポーツの力を通して地域に貢献していくというモデルを描いています。その標準モデルとなる、おこしやす京都ACというサッカークラブの運営では、(クラブに関わってくださった)方々や物心両面で少しでも豊かになることを大切にしています。
その他にも国内では、仙台市(宮城県)、福山市(広島県)にもクラブの拠点を構え、更にスクールでは全国各地とアジアで計1.7万人の子供達に通って頂いています。
スポーツXの立ち上げ準備の際には、弊社代表取締役である小山が世界48ヵ国ほどを視察しました。現在は、コロナ禍という事情のもと、調整中ですが、その視察の際にご縁ができた、ガーナのサッカー協会との関わりも今後、深めていきたいと考えています。

ーー48カ国の視察…!度々、お話にも登場されているスポーツX株式会社代表取締役の小山淳さんは、中田さんにとって、どんな存在ですか?

中田さん:自分自身、大変影響を受けており、中でも、小山の”サッカー界に対する感性”に、とても共感しています。
藤枝MYFCを立ち上げられたという実績もさることながら、元々は彼自身もトップレベルでサッカーに取り組んでいたというバックグラウンドを持っています。彼は、サッカーのまち、藤枝市で生まれ育ち、中学校、高校ともに全国優勝されて、世代別の日本代表にも選出されたトップアスリートでした。
彼は、10歳の頃に、マラドーナ選手が活躍されたメキシコワールドカップを見ていて、当時の日本と世界のサッカー環境の差に課題意識を感じられたそうなのです。その中で、将来は日本サッカー協会の会長になって、サッカー界全体を盛り上げるという志を持ち、構想を考え始め、そのためには自分自身が各年代で優勝し、世代別の代表に入る必要があると逆算し、サッカーに取り組んできたとお聞きしました。

現役時代のスポーツX代表取締役・小山淳さん(写真/藤色ユニフォーム・ご本人提供)

その後、彼は〝サッカー協会会長は早稲田閥である〟というお父様の助言により、早稲田大学に進学したのですが、そこで怪我をしてしまい、手術も失敗し、2年ほどのリハビリを試みるも、再起不能になってしまいました。失意のどん底の中で大学も中退し、暗中模索の日々が続いたそうですが、その後アルバイトで120万円貯めて、世界放浪の旅に行ったそうなんです。
そこで、その日の暮らしもままならない人や犯罪に手を染める人がいる光景を目にし、自身も2度強盗に襲われた経験を経て、”日本中、そして世界中を豊かに”という想いのもと、IT企業を立ち上げました。IT企業を経営する中で、またサッカー界との縁も復活し、自分がやってきたサッカーとITを繋げるとまた違う形で社会に貢献できると考え、藤枝MYFCの創設に繋がりました。
その後、小山が創設した藤枝MYFCは史上最速の5年でJリーグに昇格しましたが、その中で自分だけでは5年で1つのサッカークラブしか生み出せないけれど、経営を任せられる人材を自身が育てていくことで、多数のスポーツクラブをつくることができるのではないかいう発想を持ち、スポーツXが立ち上げられました。

怪我で引退後の時間、世界放浪の旅に出た小山代表(写真/ご本人提供)

弊社が行うスポーツ事業には、”日本中、そして世界中に理想的なサッカークラブをつくることで、チームに関わる地域や人々が豊かになっていく“という小山の思いやビジョンが根付いているんです。
また、入社前に、私自身も既に働いている社員の皆さんと小山代表との関係性や社長像を聞かせていただいていましたが、実際に入社して働いている中で、人材育成というところをすごく重要視しているなと感じます。
私も松永も週に1度、小山さんと2時間ほどの1on1ミーティングをおこなっていますが、そういった、社員一人一人と向き合う時間を大切にしているところも、弊社のカルチャーとして、強く根付いているように思います。

週に1度、社員と2時間ほどの1on1ミーティングをおこなっている小山代表。社員一人一人と向き合う時間を大切にしている(写真/小山代表(写真左)、松永さん(写真右)・スポーツX株式会社ご提供)

いかに価値を感じていただくか

ーーGrowSの取材を通じて、たくさんのアスリートの皆さんやスポーツ事業に携わられている皆さんから、スポーツを通じて生まれる情熱や感動といった、”数値化できない社会的価値をどのように経済的価値と紐づけていくべきか”という課題について、よくお聞きします。小山代表のスピリットとしても”サッカーを通じて、日本中、そして世界中を豊かに”とありましたが、お二人は、この課題について、どのようにお考えでしょうか?

中田さん:個人的には、何か1つでも、光る強みを持っている組織に飛び込んで、学ぶということも一つの方法ではないかなと思います。
私に置き換えて考えても、特段、コンサルティングの知識が秀でていたわけでも、全部の業務をはじめからこなせたわけでもありませんでした。
ですが、自分にとって足りないものがあるからこそ、素直に吸収しようと思える部分はあるかなと考えています。そうした意味では自分自身にとって足りない部分を学べる環境に身をおくことが、スポーツ事業のマネタイズへの第一歩かなと思います。そうした素養があってこそ、スポーツビジネスにおいて、得られるものが多いと考えています。
弊社のおこしやす京都ACで代表を務める添田隆司(そえだ・たかし)は、かつて東大出身のJリーガーとして活躍した選手で、セカンドキャリアとしておこしやす京都ACの経営に携わっています。
彼は、三井物産の内定を断って、藤枝MYFCでJリーガーになり、その後おこしやす京都ACの代表に就任したという経緯があるのですが、最初に弊社のパートナーシップ営業に携わった際、なかなか結果が出なくて、すごくつらい時期があったとお聞きしました。しかし、社内で最も営業力に長けた一人となっています。
話を聞いてみると、”どうやったら、相手に”喜んで”お金を出して頂ける”という視点で、考えたことが突破口となったそうで…。助けてもらうようなお金の出され方ではなくて、”喜んで”お金を出して頂くためにはどのような価値を提供できるのか。そのための提案を、こちらがどれだけ知恵を絞れるかという部分が重要だと考えられたそうです。
私自身も、そこは修行中なのですが、”お金を頂く”ということを、どのような発想で捉えるかというところは、スポーツビジネスでマネタイズするためには、とても重要な要素になるのではないかと思います。

松永健太さん(以下、松永さん):個人的に感じているのは、”スポーツ界は、ビジネスの世界の常識とかけ離れているところもあるな”という感覚です。
そのため、スポーツ界の知識とビジネスの知見を、しっかり掛け合わせるというのが必要です。そうした意味で、一度スポーツ界から離れて、ビジネス業界に挑戦するということも重要なことだと考えています。
中田からもお話したように、マネタイズに関してはしっかり知恵を絞るということが大切です。単に、お願いしますという姿勢ではなく、サッカークラブにどのような価値があり、どのように活用できるのか、ということを考え続けていくことに尽きるのではないか、と考えています。

“いかに、スポーツを通じて、日本中、そして世界を少しずつ豊かにしていけるのか”―強い当事者意識が繋ぐ”スポーツXスピリット”

ーーサッカークラブの繁栄のその先にある、スポーツクラブの運営を通じた豊かな社会的価値の創造を大切にされているスポーツXには、どんなバックグラウンドをもたれた方がいらっしゃるのですか?

松永さん:グループ会社や選手兼任社員を含め、約300名ほどが在籍しています。
バックグラウンドとしては、アスリートとしてのキャリアを歩んできた選手はもちろん、中田や私のような、コンサルティング業界から中途採用で入社した者もおります。あとは、藤枝MYFC時代から関わっている社員や、学生インターンがそのまま入社するケースも稀にあります。
その他にも、商社や電力会社など、幅広いバックグラウンドをもつ方が在籍していますが、“どうすれば、スポーツという手段を用いて、日本中、そして世界を少しずつ豊かにしていけるのか”という弊社の目指す社会像や世界観に共感し、入社を決めているのは共通しています。

「〝喜んで〟いただくために知恵を絞る」という視点を大切にしている(写真/右端・おこしやす京都AC代表取締役 添田隆司氏、右から2番目・小山代表、左二名・スポーツX株式会社 社員の皆さん(スポーツX株式会社ご提供))

中田さん:社員は、どちらかというと学業やスポーツに注力してきたというバックグラウンドをもつ方が多い印象です。
それぞれがもつバックグラウンドの違いに少しギャップを感じることもありますが、逆にそれが、弊社の魅力だとも感じています。自分と違うバックグラウンドを持った方達の話を、いつでも聞ける環境に身を置ける豊かさに感謝しています。

多様なバックグラウンドを生かし、目の前の課題に成長を見出す人材を

ーー将来の事業拡大も踏まえ、今後、どのような方にスポーツXに入社いただきたいなと思いますか?

中田さん:会社として、株式上場を目指していく中で、コーポレート的な機能を担っていただける方に御参画いただく方向性があるかなと思います。
現在は、(コーポレート部門は)人事、財務、広報がメインですが、今後は、現在、松永が担当しているSSP(スマートスポーツパーク)の事業開発にご参画いただける方を募る可能性もあります。
また、多拠点に展開していくというビジョンを踏まえると、クラブ経営者として直接関わって頂ける人にご参画頂くことも、しっかりと拘っていくことが重要だと感じています。
一方で、シンプルに、素直でハードワークな方と一緒に仕事がしたいなという気持ちもあります。私自身も、1年前は、ガーナ人の監督の通訳をするとは微塵も考えていなかったように、ベンチャー企業ならではの人事配置のダイナミックさがある中でどのような仕事を任されても、そこに対して成長を見出せるかというマインドが重要になってくるように思います。そうした方に、入社頂けると大変嬉しいです。

松永さん:多種多様なバックグラウンドを尊重する方に入って来ていただきたいなと考えています。おこしやす京都ACにもガーナ国籍の選手や監督が所属していますが、サッカークラブの性質上、多国籍になりやすい状況ですし、国際的な多拠点経営を視野に入れる中で、社内の国籍という意味での多様性も広がりが出てきます。
また、サッカークラブは株主やパートナー企業の経営者様、ファン・サポーターや地域住民の皆様、行政組織の皆様、試合をする選手達など一般的な企業では通常ありえないほど様々な人と接する機会があります。そのため、様々な多様性に対する尊重と、自分とは違うバックグラウンドをもつ方々と良好な相互関係を築けるような方が、弊社には必要なのではないかと考えています。

ーースポーツXでのキャリアについて、お二人のこれからのビジョンを教えてください。

松永さん:社内で担当しているプロジェクトを進める中で、地域にとって価値のある施設をどのように作っていくか、そして、実際に(施設を)作った後に、どのように運用していくことが、地域にとって、関わる全ての方々にとってベストなのかということに、知恵を絞って考えていきます。
(プロジェクト内で)自分が取り組むべきことが日々変わっていく中で、まずしっかり目の前のタスクに情熱を傾け、取り組んでいきます。
また、もう少し長い目で見ると、スポーツビジネスには、未開拓の領域がまだまだ存在しているので、弊社にとって、強みとなるような領域をしっかり確立していきたいと考えています。

中田さん:スポーツXに入社してから、自分の中でキャリアに対する前提の変化がありました。
コンサルティング時代は、”キャリアは2、3年のスパンで一区切り”という感覚があったので、スポーツXでも2、3年の経験を積んで…と、短期的なキャリアに対する思考をもっていたのですが、(入社後は)スポーツビジネスの奥深さや、中・長期的なスパンでプロジェクトに携わる必要性を感じるようになり、自分自身、より高いの能力や知識が必要だな、と感じるようになりました。
現在は、現場での(対人の)マネジメントとして、多種多様なコーチングを学んでいます。そうした経験を、”クラブの経営人材を多数輩出する”という弊社が掲げる目標に、しっかり活かしていきたいと考えています。
自分自身も、中・長期的にクラブ経営を担っていける人材になれるよう、一つ一つのステップに対し、大切に向き合っていこうと考えています。

スポーツX株式会社の、スポーツに対する情熱、スマートな感性で新たなクラブチームのカタチを目指す姿勢。地域活性、そして、世界中の社会的価値と経済的価値の創造に大きな可能性を秘めた〝スポーツ×ビジネス”に、これからも注目と期待が集まります。

(取材/高橋麻菜美 文/秋山彩惠)

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