追う立場のSUBARU BRZ井口「いい緊張感で戦える」。後半戦に磨いた“適応力”も武器に/第8戦GT300プレビュー

 初タイトルを目指していた昨年は、6ポイントのリードで挑んだ最終戦。今年、SUBARU BRZ R&D SPORTはその最終ラウンドに、2.5ポイントの差を追いかける立場で乗り込むこととなった。

『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』走行前日となった11月4日、決戦の地・モビリティリゾートもてぎに姿を表した井口卓人は、昨年に比べだいぶリラックスしているように見えた。

 実際、井口も「去年の方が、圧倒的に緊張感はありました」と振り返る。

「正直、あのレースウイークの感覚はあまり覚えていないというか……地に足がついていないとういか、もう本当にがむらしゃらにやっていたので」

「そういう面で言えば、今年は冷静にいろいろと考えながら、この最終戦に入れていると思います。でもやっぱり、明日公式練習がスタートすれば、まずはQ1に向けた緊張感は高まってくると思うのですが……いい緊張感で戦えると思います」

 この、程よくリラックスした雰囲気には、シーズン後半をいい流れで戦ってきたことも影響しているようだ。

 今季、SUBARU BRZ R&D SPORTは第4戦の富士で優勝。ウエイトが半減した前戦オートポリスでも表彰台を得ている。そのなかでは、“結果以上”の成果も得ることができていた。

 サクセスウエイトがかさんだ中盤以降、「鈴鹿、SUGO、オートポリスと、セットアップの面などをいろいろ試した状態で持ち込んで、公式練習を走り出してきました」と井口。

「結果的にそれでバランス的に厳しいということも多くて、練習走行中に見切りをつけてセットを大きく戻す、みたいなこともしています。ジオメトリー関係だったりするので、時間がかかることもあるのですが、そこはいい判断ができていると思います」

「足回りをいろいろと試すなかで、いいところが見つかったり、戻したり、中間を採用したりなど、レースウイーク中の合わせ込みがうまくいっているんです。そのおかげもあって、(重い状態でも)予選が前に行けている部分があるので、チームの判断や合わせ込みはうまくいっていますね」

「SUGOも決勝では雨が降ってしまって結果としてはあまり良くなかったんですけど、ドライのまま行っていれば、たぶん上位でチェッカーを受けていたと思います。そういったわけで、後半戦は調子としては悪くないんです」

2022スーパーGT第8戦もてぎ SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)

 BRZ陣営はもてぎでの事前テストはしていないが、タイヤを含めてあまり心配はしていないと井口は言う。

「タイヤは最近、自信があります。決勝での苦しさなどはまだある部分もありますが、以前ほど『タイヤ(の持ち込み)を外して、全然走れない』みたいなことはなくなりましたから、そこは大丈夫だと思っています」

 井口は「ウエイトが軽くなって、GT-R勢がどれだけのパフォーマンスを出してくるのかは見えない部分ではあります。そこでドンと前に行かれてしまったら、結構大変なことにはなりますけど……」とライバル勢の動向を多少は気にしているものの、自分たちがやるべきことにフォーカスできているようだ。

 今季、予選では圧倒的な速さを見せているSUBARU BRZ。山内英輝はここまで4回予選最速をマークしており、今週末はシーズン5回目のポールポジション獲得にも期待がかかる。

「不安よりは、どこかワクワクの方が大きいかもしれませんね」(井口)

 タイトルは、獲るよりも守る方が難しいと言われる。“追う立場”の“いい緊張感”で最終決戦に入ったBRZ陣営は、その難関をクリアできるだろうか。

2022スーパーGT第8戦もてぎ SUBARU BRZ R&D SPORT(井口卓人/山内英輝)

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