定年後の時間は思った以上に長い。老後生活をイメージするためのお金の見直し方と「定年活動」のススメ

それまでの人生を振り返ってみてください。会社や仕事を中心に物事が回っていませんでしたか? 多くの人は日常の時間の中心に「仕事」があります。それが60歳で定年を迎え、仕事の第一線から外れることになります。

ここで、一度立ち止まって、生き方の総括をしてみませんか? この時期に定年後のプランニングを考えることは、とても大切です。定年後の選択肢は、いくつも用意されています。リタイア、再雇用、転職、起業、フリーランス、ボランティア、学び直し、……などなど。

のんびりした人生を過ごすのか? または、仕事の第一線として働き続けるのか? それとも、いままでとは違った新たな道に進むのか? すべて、あなた次第です。

その重大な分かれ目になるのが、定年です。自分のお金のプランニングはもちろんのこと、キャリアについても見つめ直して、さらに人とのつながりも再構築していく必要があります。

それを整理するために「定活」=定年活動があります。今回は「定活」のススメということで、解説していきます。


仕事していた時間よりも定年後の時間の方が長い!

定年活動は、現在の自分を整理して一度見つめ直してみることです。定年後は、「余生だからのんびりする」なんて思っていませんか? しかし、定年後を「余生」なんて考えていると、あまりにも長い時間に後悔をすることになってしまいます。

いままでは、仕事をしている時間が人生の大半でした。これからは違います。自分が自由に使える時間が増えるのです。定年後の時間は、いままで働いてきた時間よりも、はるかに長い時間が待っているのです。

・働いていた時間
22歳から60歳まで、1日8時間の労働で月20日働いたとしたら、
8時間×240日×38年間=7万2960時間

・定年後の自分の時間
60歳から90歳まで、1日10時間自分の時間があるとしたら、自分の時間は
10時間×365日×30年=10万9500時間

どうですか? 定年後を余生なんて思っていたら大間違いで、第二の人生と捉えることが重要です。ですので、いままでの人生を整理して、次の人生への目標を見つけることが大事なのです。

新たな目標、生きがいを見つけるためには

定年を境に、自分の置かれた状況は大きく変わります。

まず、仕事中心の生活に変化があります。役職や権限は縮小され、第一線でいられなくなることが多いです。再雇用になると収入も大幅に減少します。さらに再雇用の期間が終了すると、年金だけになり、収入はさらに減少します。

家庭の状況も一変します。子どもたちは、大学を卒業して就職していくでしょう。さらに、子どもたちは結婚や自立により、夫婦二人暮らしになっていきます。

そこで、人生の目標を修正する必要が出てくるでしょう。子どもたちのため、家族のため、そして仕事のために生きてきたとしたら、変更せざるを得ません。

定年後のキャッシュフロー表を作る

それらを見つめ直して、第二の人生を歩むための指針となるのが、「定活」です。第二の人生を歩むためには、現在の状況を把握して、いくつかの項目に分けながら整理する必要があります。

まず、もっとも重要なのが「お金」の項目です。「お金(家計)」の現状を知ることで、その後の働き方などが決まってきます。でも、お金に余裕がない人にとっては、いちばん知りたくない現実かも知れません。しかし、ご託をいっている場合ではありません。しっかりと把握しておきましょう。

お金の流れを見るのに、もっともよい方法はキャッシュフロー表を作成することです。現在の資産残高と退職金などを合わせた老後資金の総額、定年後の収入である公的年金、企業年金などの収入、そして定年後の支出を出すことで、定年後のお金の流れがわかります。

ちょっと面倒だという人は、年金の受給額を基にして定年後の収入、そして現在の生活費から考えた定年後の支出を引いた金額を出してみてください。

定年後の収入−定年後の支出=○円
この数字がマイナスの場合には赤字です。その時は、老後資金を毎月の赤字額で割ってください。すると老後資金が何年持つのかがわかります。

老後資金÷(毎月の赤字額×12ヵ月)=○年
あなたの老後資金は○年まで持ちます。

この結果で、あなたは、定年後にどのくらい働けばいいのか?も見えてくるし、定年後の老後生活もどんな暮らしになるのかをなんとなくイメージができるようになるでしょう。

キャリアの棚卸しが定年後のキャリアにつながる

定年後に、どんなふうに働くのかはとても重要です。60歳から再雇用という人は、65歳までの5年間を「会社にぶら下がっていればいい!」なんて思っていてはいけません。

これからは、70歳まで働く時代になってきます。10年間、会社にぶら下がるのは、かなりキツイです。やる気のないままですと、会社にとってもお荷物になるし、何よりも自分に取ってマイナスにしかなりません。先ほどの「お金」の項目で、老後資金が足りない人は、もっと収入を増やすとか、さらに長く働く必要があります。

多くの人が再雇用ですが、定年後の道にはさまざまな選択肢があります。転職、起業、フリーランス、ボランティア、リカレントなど、選択肢を広げてみてはいかがでしょうか?

そのためには、一度キャリアの棚卸しが必要になります。子どもの頃、やりたかった夢は何ですか?実現できていない夢は何でしょうか? 自分の原点を探りながら、自分のキャリアと照らし合わせる作業をしてみる必要があるかも知れません。それから、第二に人生に向けても目標を考えるようにしてはいかがでしょうか?

仕事の人間関係は、次に引き続けられるのはわずか?

会社員として仕事を続けてきた人は、仲間や友だちも多いのではないでしょうか?

でも、よく考えてください。その仲間・友達というのは、仕事を通してではありませんか? その仕事が終わって、第一線から退いても、仲間としてのつきあいは続けることができるのでしょうか?

じつは、定年後に待っている大きな問題は「孤独」です。

仕事の仲間というのは、仕事が終わってしまうとそのまま疎遠になってしまうことが多いのです。定年後には、環境も状況も変わります。そのため新たな友達・仲間を見つけるのも重要になります。それは地域だったり、趣味の友達だったりでもいいでしょう。

さらに重要なのが配偶者とのつきあいかも知れません。仕事にかまけてキチンと向きあっていなかったということはありませんか? 定年後の時間ができたのであれば、家事を手伝ったり、料理を習ったりすることで関係もよくなるかもしれません。

これらのことをエンディングノートのように書き出してみることをオススメします。第二の人生で、やりたいことが見つけられると思います。

著者:中島 典子 (監修), 長尾 義弘 (監修)
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定年は人生の一大事。
でも、手続き次第で金持ち老後にも、貧乏老後にもなりうることを知っていますか?
本誌は、定年を意識しはじめる50代なかばから、60歳、65歳、70歳、それ以降と、定年を中心にやっておくべき手続きをまとめた実用ムックです。
巻末には取り外せる「書き込み式『定活』ノート」を活用すれば、定年後の「お金」「仕事」「生きがい」の棚卸しができます。
思い立ったが吉日。今日から金持ち老後を目指しましょう!

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