【岩手県大槌町】清き湧水が紡ぎ生まれた「源水 純米吟醸」《後編》

新銘柄「源水 純米吟醸」が生まれた酒蔵『浜千鳥』へ

大槌町の隣『釜石市』に構える酒蔵『浜千鳥』にて、純米吟醸酒「源水」は誕生しました。

今回、特別に酒蔵にご招待いただき、酒造りの生の現場を見せていただきました。酒蔵を出た後、いただいた「源水 純米吟醸」の味わいが、より一層格別なものとなったのは言うまでもありません。

約100年の歴史を持つ酒蔵『浜千鳥』

酒蔵『浜千鳥』の創業は、1923年。

「自然とひとつになった酒造り」をモットーに、国際的な日本酒コンクールで最高賞を受賞するなど、いまや日本国内のみならず、世界をもうならす魅力的な酒を世に送り出し続けています。

日本酒は、以下のような工程を経て出荷されます。

【1】洗米・浸漬

【2】蒸米・製麴(せいぎく)

【3】酒母(酛)造り・仕込み

【4】上槽・火入れ・貯蔵

【5】調合・瓶詰め

今回見せていただいたのは、上記【2】と【3】。日本酒造りには「一麹、二酛(きもと)、三造り」という言葉がありますが、この言葉が指すのがまさにそれらの工程。極めて重要な工程を見せていただいたことになります。

「一麹」〜 麹を造る

『酒蔵』に足を踏み入れると、米を蒸している真っ只中にありました。

大型の蒸し器「甑(こしき)」により、蒸しあがったばかりの酒米が高く持ち上げられた光景は「圧巻!」の一言。

そして、すぐさま「製麴」の準備に取り掛かります。

「製麹」とは、蒸米をもとに麹菌を培養して「麹(こうじ)」を作る工程です。

「麹」がお米に含まれる澱粉をブドウ糖に変え、「酵母」がそのブドウ糖からアルコールや香り成分を生みます。

日本酒独特のフルーティーな香りは「酵母」によるもので、その酵母が健全に働けるようブドウ糖を生み出し、酒米から旨味やコクを引き出すのが「麹」の役割ということになります。

準備が整うと、杜氏 奥村康太郎さんの手ならぬ口によって、麹菌の「種振り」が始まりました。

流れてくる蒸米に、麹菌を吹きかけていきます。

差し込んだ光を受けて、立体的に浮かび上がる麹菌の胞子。一瞬、奥村さんの周囲に漂ったと思った途端、蒸米にスゥッとやさしく覆いかぶさるように降り注ぎます。

麹菌の胞子をまとった蒸米は、製麹室へと運ばれます。そこで2昼夜かけ、麹菌を繁殖させることで、ようやく「麹」が出来上がるのです。

「二酛」〜酒母を造る

「酒母(酛)」とは、アルコールを生成するための酵母を大量に培養したもの。酵母のアルコール発酵を安定・促進させるのが、「酒母」を造る目的になります。

「酒母」を造るため、麹、蒸米、乳酸、水、酵母を混ぜ合わせていきます。

なお、新銘柄「源水」を造る際に扱う水は、もちろん『大槌町 源水地区』の清き湧水。

そして、酵母には「ゆうこの想い」を。

ここ『浜千鳥』では自社酵母を使った酒も多く作られていますが、新銘柄「源水」には2007年に誕生した岩手県オリジナルの清酒酵母「ゆうこの想い」を採用しました。

「1番の違いは、やっぱり香り。」

「なにより岩手の人たちの想いが詰まったものだから。」

とは、杜氏 奥村康太郎さん。

加えて、発酵力が強く、柔らかく温かみのある味わいを生み出すこの酵母は、「純米酒との相性が良い」ということも忘れてはなりません。

「三造り」〜醪を仕込む

大きなタンクが整然と並んだ部屋に足を踏み入れると、なんともいい酒の香りに鼻腔が刺激されました。

ここは、日本酒の原型「醪(もろみ)」を造る場所。日本酒の香りの良し悪しは、この場所で決まる!と言っても良いでしょう。

「酒母」をタンクに移し、麹・蒸米・水を計3回、4日間かけて混ぜ合わせ、「醪」を仕込みます。以降は「醪」の発酵管理を。発酵が進むと、炭酸ガスの発生と共にアルコールが形作られていきます。

その後、上槽(醪を濾す)、火入れ(酵母による味の変化を防ぐ)等を経て、ようやく酒が完成します。

杜氏をはじめ、酒造りに関わる皆さんが躍動する姿には終始圧倒されるばかり。皆さんの所作や眼差しには、酒造りに関わる確固たるプライドはもちろん、酒造りを通して表現される故郷への愛情や感謝の念が篭っていたように感じます。

その熱量は「源水 純米吟醸」を介し、芳醇な旨味の一部となって、私たちの体に沁み入るのです。

ラベルで表現する「源水」

「源水」の命名はもちろん、ラベルデザインのコンセプト策定には、地域住民の皆さんも多数参加されました。

湧水の一滴が『大槌町』の豊かな自然を育み、バイカモやその地域の人の繋がりを育てていく──

ディスカッションの末に導き出された上記イメージを、親しみやすさと高級感とを併せ持ったデザインに仕上げていきました。デザインの方向性には、若い世代にもぜひ手に取って欲しいという想いも込められています。

結果、仕上がったデザインがこちら。

雫が滴る先、円を組み合わせて表現したのは「バイカモ」の花びら。

それは地域の人そのものを表し、また、円の連続性には「湧水の恵みによる幸福が永遠に続いていきますように」という願いも込めました。

ちなみに、バイカモの花言葉は「幸福になります」。

この清楚な白き花が内に秘めた強い意志のようなものが、東日本大震災を乗り越えた地域住民の皆さんの姿とも重なります。

また、更なる取り組みとして、地元学生の皆さんからもオリジナルデザインを募集。見事、最優秀「源水賞」に輝いたデザインを「特別版ラベルデザイン」として採用する予定です。

そのラベルを貼った「源水」は、来年2023年の販売予定。『大槌町』でのみ購入することができるようになるそうです。

「源水 純米吟醸」を、ぜひお手元に。

凛とした輪郭を感じたかと思えば、品よく舞う清楚な甘味。そして、口の中いっぱいに満ちる豊かな旨味に、体と馴染むような柔らかい感覚を覚えます。

同時に、その余韻からはやはり力強さのようなものも感じてしまうのです。

『北山山地』より流れ入る「清き湧水」。

その水で育った酒米「吟ぎんが」。

それらを扱い、酒へと昇華させる「杜氏の技」。

湧水を軸に、それらがひとつに結びつき新しく生まれた「源水 純米吟醸」。それはかの震災を乗り越え、清き自然と地元の皆さんとが手をとりあい生まれた、生命の力強さのようなものがギュッと詰まった結晶と思えてなりません。

2022年11月、純米吟醸酒「源水」の販売がいよいよスタートします。

もし可能であれば、『大槌町』まで足を運んでいただき、町の澄んだ空気をゆっくりと吸い込んだ後で、この新たな純米吟醸酒「源水」を味わっていただけたら幸いです。

>>前編はこちらから

岩手県大槌町

岩手県上閉伊郡大槌町

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*この記事は2022年9月時点の情報を基に作成しています。

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ライター:ヤマネコ

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