3年ぶり華やかな伝統行事「お通り」 母衣をまとった姉妹 広島・庄原市 東城町

広島・庄原市 東城町に江戸時代から伝わる伝統行事の「お通り」が、3年ぶりに開かれました。町を巡る祭りの花形は、「母衣(ほろ)行列」です。

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大名に武者行列。

姿可憐な華童(はなわらべ)。

歴史を伝える時代絵巻「お通り」が、静かな県北の城下町に帰ってきました。

毎年11月初旬に行われてきたお通りは、新型コロナの影響で去年・おととしは中止…。

3年ぶりとなる祭りの準備会場に母娘がいました。藤原久美子さんと娘の実央さん、瑠南さんです。

藤原実央さん(16)
「コロナで母衣が中止になって、ことしは誘われて」

お通りの花形・母衣。この伝統衣装を着て、お通りに参加できるのは、例年は中学生までです。中止期間に高校生になった実央さんは、ことし、特別に母衣を身につけることになりました。妹・瑠南さんといっしょです。

藤原実央さん
「(妹と)ケンカはよくするけど、仲はいいです」

― 一緒に参加するのは?
「イヤではないです」

妹 藤原瑠南さん(13)
「ちょっとうれしかったです。いつも一緒にいるから緊張がほぐれる。いつも仲良く優しく接してくれて感謝しています」

姉 藤原実央さん
― 気持ち、上がってきた?
「緊張のほうが大きいです」

妹 藤原瑠南さん
ー お姉さんは緊張…
「自分はめっちゃ楽しみです」

対照的な姉妹の様子に母の久美子さんは目を細めます。

母 藤原久美子さん
「姉妹で出るのは珍しいので。ケンカもありますけど、この年になって仲が逆によくなった。小さいころよりは」

準備を終えると、1人ひとりが母衣をまといます。

お通り保存振興会のスタッフ
「はい、手を前に出して」

実央さんと瑠南さんの番です。

妹 藤原瑠南さん
― このへんで。
「これ、けっこう引っ張ってもだいじょうぶですか」

姉 藤原実央さん
― がんばって。重たくない?
「はい」

― だいじょうぶ?
「うん、一回背負ったことあるけん」

妹 藤原瑠南さん(13)
「やばい。重いです。みんなに見てもらっとるので、最後まで。最後まで笑顔でやり切りたいです」

3年ぶりのお通りが始まりました。

町を練り歩くお通りは、関ヶ原の合戦のあと、城主となった長尾隼人が、東城の秋祭りに武者行列を加えたのが始まりと伝えられています。

祭りの花形・母衣は、もともとは敵の矢を除けるための武具。江戸時代以降、子どもの健やかな成長を願う伝統衣装として受け継がれました。

母衣には大将人形が乗せられ、秋の到来を告げるサザンカの花があしらわれています。このような形で母衣が残った祭りは、全国でも珍しいそうです。

母 藤原久美子さん
― 表情はいかがですか、娘さん?
「硬いですね」

およそ100人が参加した華やかな行列を一目見ようと、1万5000もの人が町に集まりました。

祭りのさなか、母の久美子さんが、瑠南さんの異変に気づきました。

母 藤原久美子さん
― 草履が切れた?
「そうみたいです。すぐ持って来てもらえるように頼みました」

「母の衣」と書いて「母衣」。成長を願う母の思いは、心配の裏返しでもあります。

母 藤原久美子さん
「歩きにくくなかった? だいじょうぶ?」

妹 藤原瑠南さん
「実央、背中、ヤバない? 重たいし、どんどん背中が痛くなってきます」

先輩のお母さん
「最後の橋は母親がにらまれる。娘に。娘がこんなに痛い思いをしてるのに」

― やらせるなって?
「母親にしか言えない。みんなには笑顔をふりまくんじゃけど、母親にはキッとにらむ」

母娘だからこそわかること、姉妹だからこそ分かち合えることがあるのかもしれません

母 藤原久美子さん
― 2人の表情は?
「もうちょっとはだいじょうぶかな。ううーん、だいじょうぶだと思います」

およそ2時間にわたるお通りもいよいよ大詰め。2人は最後まで笑顔でした。

姉 藤原実央さん(16)
「妹だからとか、特にそういうわけじゃないけど、安心というか、楽しく歩けました」

妹 藤原瑠南さん(13)
「お姉ちゃんにはずっとついて行こうと思ってがんばっていたけど、みんな、がんばっているから自分も同じようにがんばって、最後まで絶対やり切ろうと思ってやっていました」

お通り保存振興会 後藤茂行 会長
「ずっと続けていきたい。この東城の町が元気な限りやっていきたい。逆に元気を出すためにやりますし。お通りがあるから、みんな元気になるし、やはり、そういう存在かなと思う」

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