S&P 500、知っておきたい構成銘柄と注意点−−円安の資産防衛手段になるのか

S&P 500に関連する投資信託やETFに投資されている方、または投資を検討されている方は、日本にも多くいると思います。

ではS&P 500が、どのような指数なのかご存知でしょうか?

アメリカの500銘柄に分散投資している……というくらいでしたら、もう少し知っておくと投資の役に立つかもしれません。


S&P 500とは

S&P 500とは、S&P ダウ・ジョーンズ・インデックス社が公表している、米国株式市場の株価指数のひとつです。1957年にS&P500の基盤は完成しており、指数算出開始日は1957年となっています。歴史が長い指数であることでもS&P 500は信頼性の高い指数であると言えます。

米国の証券取引所には6,000社以上が上場しています。その中からS&P グローバル社が、時価総額や浮動株時価総額など複数の基準から企業を選定し、さらに時価総額でスクリーニングをかけた上位の500社(S&P 500グローバルのウェブページによると503社)がS&P 500です。

S&P 500に組み込まれる銘柄の条件としては、米国企業のなかで時価総額が53億ドル以上、浮動株が発行済株式総数の50%以上、四半期連続で黒字利益を維持という条件が公開されており、その条件を満たした銘柄から時価総額で加重平均し指数化したものがS&P 500であるということです。

米国株式市場全体に対して約80%の時価総額比率を占めていることから、S&P 500は米国市場全体の動きをおおむね反映している指数と考えることができます。米国の市場動向を把握する上ではウォッチすべき非常に重要な指標です。銘柄入れ替えを年4回検討するのも特徴となっています。

つまり、S&P 500は米国経済の成長に沿って成長する指数と言えるでしょう。

S&P 500の魅力

投資の神様と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が、奥様への遺言として「私が死んだら1割は米国短期国債に、残り9割はS&P 500に連動するインデックスファンドに投資しなさい」と運用アドバイスを残したというのは有名なエピソードでしょう。

バフェット氏の戦略としては10%の現金で米国短期債を買い、残りをすべてS&P500をベンチマークとする低コストのインデックスファンドへ投資するものですが、バフェット氏に資産の9割を投資しても問題ないと思わせるほど、魅力のある指数と判断されていると言えます。

私が生まれた1982年から2022年現在までの約40年でみてみますと、米国市場は1987年のブラックマンデーや2000年代初期のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、そしてコロナショックなどの金融ショックで一時的な下落はあったものの、それを乗り越えて長期では右肩上がりで成長し続けています。S&P 500も同様に、長期で見るとチャートは右肩上がりです。

それでは今後も成長し続けるのかと聞かれると、投資なので未来は誰にもわかりません。すでに現在、リセッションや金融危機の懸念がありますし、10年ほど米国経済が低迷し続ける可能性もありえないとは言えません。

ただ、現在はドルが世界の基軸通貨であり、政治や軍事的にもアメリカが覇権国であるといえます。またイノベーション(技術革新)を起こす企業を数多く生み出したアメリカの歴史を考えると、米国経済は強いと個人的には考えますし、S&P 500はその米国のなかで選ばれた企業の指数であることは投資の優位性と言えるのではないでしょうか。

また日本に住み、日本円で資産を保有する私たちにとっては円安のヘッジにもなるかと考えます。円安への資産防衛の手段として有効なのはドル建て資産を保有することで、その選択肢にS&P 500はなると考えます。

投資初心者の方でも少額から始めやすい投資として活用できることもS&P 500の魅力です。米国株は1株単位から投資ができるので、少額から投資できるのも魅力です。ただ、そうはいっても個人の資産で500株買うのはかなり難しいので、安く分散投資できるのはS&P 500に連動する投資商品の魅力でしょう。投資信託では100円から投資が可能です。

加えて、S&P 500に連動する投資信託やETFは比較的低コストなものが多く、初心者でも比較的リスクを抑えて長期投資ができるなど運用が行いやすいというメリットもあるのではないでしょうか。

S&P 500指数構成銘柄トップ10

もう1つ、S&P500の魅力として構成銘柄には世界的にトップレベルの企業が多いことも挙げられます。

時価総額加重平均であるS&P 500指数は時価総額の大きい銘柄の動きに影響されやすい指数といえるので、構成する割合の多い上位10銘柄は覚えておいてください。2022年11月3日(木)時点の上位10銘柄は以下の通りです。

(1)Apple Inc.【AAPL】
(2)Microsoft Corporation【MSFT】
(3)Amazon.com, Inc.【AMZN】
(4)Tesla, Inc.【TSLA】
(5)Alphabet Inc. A【GOOGL】
(6)Berkshire Hathaway Inc. Class B【BRK.B】
(7)Unitedhealth Group Inc.【UNH】
(8)Alphabet Inc. C【GOOG】
(9)Exxon Mobil Corporation【XOM】
(10)Johnson & Johnson【JNJ】

上位10銘柄だけでも、世界の名だたる企業がそろっていますね。業種では情報技術が26.3%、ヘルスケア15.3%、ファイナンシャルが11.4%となっています。

S&P 500の注意点

S&P 500の魅力をお伝えしてきましたが、注意点としては異次元金融緩和からの経済正常化、早期利上げやリセッションで米国経済や株式市場がこのまま下落していくのではという懸念ではないでしょうか。足元での反発もベアマーケットラリー(下落局面での一時的な上昇)と見ている方が多いようです。

ゴールドマン・サックス・グループによると、S&P 500種指数は過去との比較や金利を考慮した場合にはなお割高だが、米国株に魅力的な投資機会が見いだされつつある、と報じられています。短期的に見ると「ハロウィンに株を買え」や「年末ラリー」という格言があるように、統計的には年末にかけて上昇に優位性がありそうですが、ではいま買えば利益になるかという判断は常に難しいと言えるでしょう。

ただ少額ずつ長期的に積み立てていくのをS&P 500で検討するというのであれば、早く始めるほど福利の効果も期待できるので悪いタイミングではないかもしれません。まずは投資信託で100円から……というように、ハードルを低く設定して、とにかく始めてみるというのはいかがでしょうか。つみたてNISAやiDeCoも活用していただくと、税制メリットがあるのでより良いと思います。

10月31日週「相場の値動き」おさらい

11月4日(金)の日経平均株価は、前営業日比463円65銭安の2万7,199円74銭と続落。先週末10月28日(金)の日経平均株価は2万7,105円20銭でしたので、週間では94円54銭の上昇となりました。

今週注目された11月FOMCでは、FRBは4会合連続となるトリプル利上げ(0.75%の利上げ)を決定しました。

パウエルFRB議長の会見では、最終的な金利水準は従来の想定よりも高くなったとしているものの、利上げ減速の時期が早ければ次回会合となる可能性を示唆(ハト派的スタンス)したものの、いずれかの時点で利上げ幅を縮小することが適切との発言から12月も0.75%の利上げである可能性があることや、政策金利の最終的な水準は従来の予想より高くなるとの見通しを示したことで、タカ派的な姿勢を維持する姿勢から米市場は下落。パウエル氏の発言で相場は右往左往させられた印象です。

週末の日経平均も下落しています。12月FOMCの利上げ幅が注目されるなかで、雇用統計の結果を受けて12月FOMCの利上げ見通しがどう変化しているのか(私はCMEの FedWatchというツールを見ています)、週明けの日本市場の値動きもチェックしていきましょう!

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