13世帯が「集団移転」希望 2019年台風被害の那須烏山市

台風19号で那珂川が氾濫し、大きな浸水被害をうけた那須烏山市下境地区=2020年10月、小型無人機から

 2019年の台風19号被害を踏まえた栃木県那須烏山市の防災集団移転促進事業を巡り、被災地域の同市下境地区の一部住民13世帯がまとまって市に移転を希望する文書を提出したことが5日、分かった。事業を巡り、住民が書面で移転の意思を市に伝えたのは初めて。市は今後、同様の意思表示を下境、宮原両地区住民に呼びかけるとともに移転に関する意向確認を行い、24年3月までに集団移転の実現に必要な「事業計画」の国土交通大臣認可を目指す。

 台風19号では、下境地区72世帯、宮原地区41世帯の計113世帯が浸水被害に遭った。

 市都市建設課によると、移転を望む文書を提出したのは下境地区のうち西自治会に所属する世帯の一部。「集団移転を希望」と書いた紙に13世帯の名簿を添付している。住民らが4日、同課に提出した。

 その際、市に対し(1)集団移転に関する積極的な情報提供(2)移転希望文書の書式の提示(3)これまでよりも小規模な住民説明会の開催-を併せて要望したという。

 市はこれまで、台風19号で被災した下境と宮原の両地区で複数回の住民説明会を開催。移転の意思がまとまった近隣5世帯以上の地区を「移転促進区域」に指定し、順に移転させる考えを説明してきた。文書の提出は、この説明に呼応した動きとみられる。

 同課は「集団移転は市が強制的に行うのではなく、住民の主体的な意思に市が協力する形で進むべきもの。その意味で、今回のような移転を望む意思表示は事業を推進する上で大きな一歩」としている。

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