和の音色(11月6日)

 日本産ウイスキーは海外でも評判がいい。もはやスコットランド、アイルランド、米国、カナダの有名どころと肩を並べる。寿屋(現サントリー)が1923(大正12)年、京都・山崎に蒸留所を設けたのが始まりとされる▼100年近くたち、今は全国で造られるようになった。中でも埼玉県の新興メーカー、ベンチャーウイスキーは世界の愛飲家から絶大な支持を集める。香港のオークションで54本セットが約1億円で落札されたというから、人気の高さは破格だ▼20年ほど前、前身の会社が経営不振に陥り、約400樽[たる]もの原酒の廃棄を迫られた。手を差し伸べたのが郡山市の笹の川酒造。「業界全体の損失になる」と自社の酒蔵で全てを預かった。時間と手間をかけて熟成させた重みを知っていたからだという。その原酒を使って再出発した会社が世界に飛躍した。同業者の支えもあってこそだろう▼ウイスキーは音楽に例えられる。多様な楽器が調和の取れたハーモニーを織りなすように、絶妙な原酒のブレンドが奥深さを生む。試行錯誤を重ねる根気勝負の作業でもある。欧米産の洋酒に勝る日本産の真骨頂は、切磋琢磨[せっさたくま]に互助も息づく和の音色か。

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