働き盛り男性は要注意「むちゃ食い症」 体重増からうつ病発症も、医師警鐘

「ダイエットブームが拒食症の増加につながったように、ストレスフルな社会や雇用環境の変化がむちゃ食いを増やしているように思います」と話す中井義勝医師=京都市中京区

 食事の量や食べ方などで異常が生じて、心身共に影響が及ぶ摂食障害。「拒食症(神経性やせ症)」や「過食症(神経性過食症)」などの病気の総称だが、「過食性障害」と診断されるケースも増えている。しかし、一般に過食性障害という病名や症状は知られていない。働き盛りの男性が比較的多いと見られるが、「どれくらい患者がいるかも分からない」と専門医は警鐘を鳴らしている。

 過食症が意図的な嘔吐(おうと)や下剤の服用で食べた分を帳消しにしようとするのに対し、過食性障害は嘔吐せず体重が増加していく。夜食やおやつなど、複数回にわたってケーキや菓子パンなど高カロリーの物を衝動的に食べてしまう。放置するとメタボリック症候群や、生活習慣の乱れからうつ病を発症する恐れもある。うつ病の発症で受診し、事後的に過食性障害と診断される場合もあるという。

 2013年に米国精神医学会が改訂した精神疾患の診断基準(DSM―5)で新たに過食性障害が盛り込まれた。

 過食性障害について、臨床を通じて研究している烏丸御池中井クリニック(京都市中京区)の中井義勝医師は、「障害」と呼ぶ違和感などから「むちゃ食い症」と呼ぶことを提唱、一般向けに「むちゃ食い症」(ぱーそん書房)を春に出版した。

 中井医師によると、他院も含めた調査で、患者の9割が女性とされる拒食症や過食症と比べ、「むちゃ食い症」は男性の割合が3~4割と多く、年齢幅も20~50代と比較的広い。職場などでのストレスで発症するケースが多いのではないかという。

 治療は、基本的には学校や会社を休まず生活リズムを整える。「夜中に起きて食べるので、生活のリズムがひどくなっている。まずは3食と睡眠による生活のリズムを治す」という。

 そして、レシートや食事を写真に残して食べた物を記録する認知行動療法が有効ではないかという。「むちゃ食い」を完全に断ち切るのではなく、回数や飲食の量を抑えることで摂取カロリーを減らす。ストレスとうまく付き合うようカウンセリングを重ね、3カ月から1年で回復する患者が多いという。

 中井医師は「むちゃ食い症のことがもっと知られるようになり、自分が何で苦しんでいるのか分からない人が救われれば」と話している。

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