読者のみなさんからいただいた家計や保険、ローンなど、お金の悩みにプロのファイナンシャルプランナーが答えるFPの家計相談シリーズ。
今回の相談者は、39歳、時短勤務の会社員の女性。子ども3人とも中学受験の予定ですが、今の家計状況で大学まで教育費がもつか不安とのこと。FPのシミュレーションは? FPの宮里惠子氏がお答えします。
子ども3人(12歳、9歳、7歳)とも中学受験を予定していますが、大学までの教育費用が不安です。
夫(39歳)は公務員で年収1,100万円、妻の私(39歳)は、時短社員で年収280万円です。子育てを考えフルタイムに切り替える予定はありません。このままで乗り切れるでしょうか?
【相談者プロフィール】
・女性、39歳、会社員(時短勤務) ・夫:39歳、会社員(公務員)
・子ども:12歳、9歳、7歳
・住居の形態:社宅(関東地方)
・毎月の世帯の手取り金額:50万円
・年間の世帯の手取りボーナス額:200万円
・毎月の世帯の支出の目安:45万円
【毎月の支出の内訳】
・住居費:4万円
・食費:10万円
・水道光熱費:2万円
・教育費:20万円
・保険料:3万円
・通信費:2万5,000円
・車両費:1万円
・お小遣い:3万円
【資産状況】
・毎月の貯蓄額:3万円
・ボーナスからの年間貯蓄額:60万円
・現在の貯金総額(投資分は含まない):1,200万円
・現在の投資総額:700万円
・現在の負債総額:-円
宮里:家計を拝見いたしました。お子さん3人が中学受験予定ですが、大学までの教育費が不安とのことですね。子どもが巣立ったあとの老後資金や住宅資金にも触れてみたいと思います。
毎月の支出は教育費が4割。一方娯楽費は?
まず、現在の家計状況を見てみましょう。いただいた資料によると、投資総額と貯蓄総額合わせて1,900万円で、これまで堅実な生活をされてきたことがうかがえます。
年間収支は、世帯年収が1,380万円、手取り額は約800万円です。年間支出は540万円、年間貯蓄額は96万円となっています。
支出の内訳で気になるのは、毎月の支出額45万円のうち、教育費が20万円で、支出に占める割合が40%を超えている点です。現在、1人目のお子さんが12歳で小学6年生。私立中学受験に向けての塾の費用が膨らんでいると想像します。
一方で、支出の明細に日用品費、衣料費、レジャー娯楽費等の項目が一切ないことも大変気になります。これらの費用がかからないことは考えにくく、支出項目を整理する必要がありますね。
ボーナスからの特別費も要確認
ボーナスのうち、貯蓄額を除く140万円の使い道についての記載がありませんでしたので、上記の支出項目や投資、車のメンテナンス等の大型支出分が含まれていると解釈します。
人生の三大出費といわれる住宅購入費、教育費、老後資金のうち、ご相談の内容には将来住宅を購入する予定があるのかどうかの記述がありませんでした。住居費4万円はいわゆる公務員宿舎の家賃だと思いますが、定年まで住むことができると仮定します。
また、定年後の住宅費用と老後資金のためには、現在の貯蓄を取り崩さずに生活できるといいと思います。
3人が大学を卒業するまでの教育費をシミュレーション
来年、1人目のお子さんが私立中学に入学し、2人目のお子さんが小学4年生になり、中学受験の準備に入る時期になります。この先どれくらいの教育費がかかるでしょうか。
3人のお子さんが中学受験をして、私立大学に自宅通学をすると仮定して、3人目のお子さんが大学を卒業するまでの教育費のシミュレーションをしてみました。
小学校・中学校・高等学校の学習費は文部科学省「子どもの学習費調査」(平成30年度)、大学は自宅から私立大学に通学すると仮定して、日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」(令和3年度)の統計結果を元にしています。
増えていく教育費。最大500万円かかる年も…
高等学校の学習費については、2020年度から私立高校も授業料の実質無償化政策(高等学校等就学支援金制度)が実施されています。ただし、年収制限があり、相談者の場合世帯収入からみて、支援の対象外になる可能性が高いと思われます。
現在、教育費が年間240万円(20万円×12か月)かかっています。統計値から逆算して、1人目のお子さんの塾費用は年間144万円としました。2人目と3人目のお子さんが中学受験塾に4年生から通塾し、4、5年生は年間50万円とし、6年生では1番目のお子さんと同じ114万円がかかると見込み、計算しています。
上の表のように、現在240万円がかかっている教育費は、1人目のお子さんの受験が終わっても軽くなることはなく、2人目のお子さんが小学6年生になり、塾費用が高額になる時期から1人目のお子さんが大学を卒業するまでの8年間は、年間300万円以上、年によって500万円近くの教育費がかかる試算となりました。
浪人や下宿、夫の万が一に備えて家計や保険の見直しを
夫は公務員ですので、年収は今後も安定していると思われます。まず昇給については考えず現状維持として見積ってみましょう。
3年後から増える教育費に備え、今後、毎月の貯蓄(3万円)とボーナス(200万円)をすべて教育費に回すとしてみましょう。現在かかっている教育費240万円にプラス236万円が加算でき、合計476万円になります。
ただし、先に挙げた日用品費や衣料費、レジャー娯楽費や家財、車の買い替え、車検代等の大型支出が全く考慮されていません。
実際には夫の給料の上昇が見込まれると思われますが、それでも病気やケガ等の想定外の出費があれば、今後貯蓄ができないだけではなく、これまでの貯蓄を取り崩さなければならないことになります。
大学進学時に、子どもが自宅外通学や理系学部から大学院に進学する可能性、浪人して予備校費用がかかったりする可能性もあります。
現在は、1人目のお子さんだけ教育費がかかっているので、年間144万円の塾費用をかけられましたが、今後2人目、3人目のお子さんにも同じだけの塾費用をかけるのかどうか、1人目のお子さんの受験が終わった後でもいいので、節約できるポイントがなかったかを振り返ってみましょう。
3人のお子さんが私立中学に進学し高等学校を卒業するまでの間、お子さん達の進路の選択肢を狭めることにならないよう、夫の万一のための定期死亡保険の額の見直しもしっかりしておきましょう。
退職後の住宅取得も考慮し、妻のフルタイム勤務の検討を
住居費については、定年まで公務員宿舎に住むことが可能であっても、退職後の住居の準備があるのかどうか、相談内容にありませんでした。
現在は、ご相談者自身はフルタイムでの就労を考えていないようですが、3人目のお子さんが中学生になるころ、ご相談者は45歳です。そのころには子育ても一段落します。フルタイムでの就労を考えてはいかがでしょうか。
退職後の住居と老後費用の両方を準備するための時間は、45歳から夫の定年までの20年間あります。現在の貯蓄をキープしたまま子育て時期を乗り越えて、その後ご夫婦で資産形成すれば、退職後に住宅を取得することも可能になると思われます。