藤波「奇跡のチャンピオン」。オリベイラ「僕たちを守る空の星があったんだと思う」【GT300チャンピオン会見】

 栃木県のモビリティリゾートもてぎで開催された2022年シーズンのスーパーGT最終戦となる第8戦『MOTEGI GT 300km RACE GRAND FINAL』。11月6日に行われた決勝レースを終え、GT300クラスでチャンピオンに輝いたリアライズ日産メカニックチャレンジ GT-Rの藤波清斗とジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ、KONDO RACINGの近藤真彦監督がチャンピオン獲得の想いを語った。

藤波清斗/第1スティント担当

「まず今シーズンは開幕戦から優勝することができ、そこからいきなり(サクセスウエイトを)60kg搭載して、その後もウエイトは増えていく一方で、レギュレーション的にも1ポイント×3kgということで非常にフラストレーションの溜まるレースが多かったです。ですが、そのなかでもヨコハマタイヤをはじめチームのみなさま、そして近藤監督も条件が悪いなかで必死に取りんでくれたので、ドライバーとしても『絶対に結果を残さないといけない』という気持ちになりました」

「シリーズはずっとトップで来ていて、このままトップで行ければいいなと思っていました。ですが、予選での61号車(SUBARU BRZ R&D SPORT)のクラッシュを見たときに『自分たちも、いつこういった事態が起こるかわからないから気を引き締めていこう』という気持ちになって、今日のレースに挑みました」

「レースはスタートから順調に進みJP(オリベイラ)にバトンを渡しました。まさかJPさんが走っているときに……。今までタイヤが取れたことはなかったのですけど『ここで!?』というアクシデントが起こってしまいました。そのときはもう戦線離脱かと思い部屋に一度戻りました。ですが、あと20周くらい残っていたので、しっかりと最後まで見届けたいという想いでまたピットに戻って祈っていました。そこからは同じヨコハマタイヤ勢が本当に素晴らしいポテンシャルで追い上げてくれて、本当に助けていただきました。それでなんとか奇跡のチャンピオンを獲ることができました」

「また、タイヤが外れた後もJPさんがピットまで必死に戻ってきてくれました。もしかしたらコースにストップしてしまうことも本当に有り得たと思います。でもピットに戻ってきてくれて、ピットでもメカニックさんがスムーズにタイヤをもう一度取り付けてくれてコースに戻ることができました。ちょっとしたことかもしれないですけど、そういった力によってチャンピオンを獲ることができたのではないかなとも思いました」

「昨年は悔しい思いをしたのですけど、今年はチャンピオンを取り返すことができて本当に嬉しいです。僕はKONDO RACINGで3年目のシーズンなのですけど、本当に近藤監督をはじめ、チームメイトであるJPさん、そしてエンジニアの米林(慎一)さん、メカニックの皆さんが本当にまとまったチームで、安心して信頼でき、今シーズンも1年間走ることができたので、あの本当に感謝をしています」

2022スーパーGT第8戦もてぎ 藤波清斗(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)

ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/第2スティント担当

「本当に今日はジェットコースターのような上がったり下がったりの1日で、本当に盛りだくさんのレースだった。タイヤが外れてしまうアクシデントがありピットに戻ったけど、その後にセーフティカーでも出ればまだチャンスはあるのかなと願いながら、とにかくそれを信じて頑張った」

「最後の20周くらいはチームとの無線のやり取りがなくなったんだ。僕はもう本当に自分の走りに集中して最後まで頑張るという気持ちで走っていて、最終ラップでチェッカーを受けてレースが終わり、エンジニアから『19位で終わったよ』という無線が入った。そのときは『そうか……』と思ったけど、その後に『オレたちがチャンピオンだ!』という言葉を聞いたんだ。そのときは『マジかよ』と思ってすごく驚いたし、気持ちも少しおかしくなってしまい、どういったリアクションをすればいいのか分からなかった。でも、そのタイミングで涙が溢れ出てきて泣いてしまったよ」

「今年はすごく強いシーズンだったと思う。本当に僕たちはチャンピオンを獲得するためにベストを尽くしていたし、しっかりと1年間走ることができたと思う。ただ、今日は少しアクシデントもあったけど、それでも僕たちを守る空の星があったんだと思う。そのおかげで僕たちはチャンピオンを獲得することができた。本当に嬉しいよ」

2022スーパーGT第8戦もてぎ ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)

近藤真彦監督

「まず、昨日の予選では61号車のSUBARU BRZ R&D SPORTがクラッシュしてしまいました。そのときは、はっきり言って全然喜べなく、(タイトル争いは)2.5点差しかなく、レースで争って61号車の前でフィニッシュすればこちらがチャンピオンだと思っていたので、本当に喜ぶことはできませんでした」

「このふたりのドライバーがいれば間違いなくチャンピオンになれると思っていたので、自信はありました。ライバルのクラッシュもすごく残念に思っていましたけど、そのときに『明日は我が身だな』ということも思っていました。そして今日、レース中もやはり『明日は我が身』で、とんでもないこと(右フロントタイヤの脱落)が起こってしまいました。

「あのときはいきなり天国から地獄に落ちて、ひとりぼっちで部屋に戻り『これもレースかな』と思いました。ただ,『オレは他のチームにトラブルが起きても喜ばなかったけどな』とも思いました。でも、ひょっとしたら僕らに起きたトラブルを喜んでいるチームもいるのかななど、すごく複雑なことを考えながらピットに戻ってきました」

「そうしたら、今度は同じタイヤを一生懸命開発している他のヨコハマタイヤ勢が、他メーカーのタイヤを履く車両をぐいぐいと追い抜き、僕たちの味方をしてくれて、それでチャンピオンまで導いてくれたというストーリーがありました。ですので、やはりレースは自分たちだけではやっていないということを今日のレースで感じました。今日はレースの魅力を改めて肌で感じました」

「現在のGT300でチャンピオンを獲るということは、もちろんGT500でチャンピオンを獲ることも大変なことなんですけど、本当にそれと同等か、もしくはそれ以上にGT300でチャンピオンを獲ることは難しいことだと思います。ライバルもたくさんいますけど、ふたりのドライバーが一生懸命頑張り、チームも頑張り、ヨコハマタイヤも頑張っているので、来年もGT300のチャンピオンを目指し、そしてGT500でも星野(一義)さんのチームのように強くなり、チャンピオンを目指して頑張っていきたいと思います」

2022スーパーGT第8戦もてぎ 近藤真彦監督(リアライズ日産メカニックチャレンジ GT-R)
2022スーパーGT第8戦もてぎ チャンピオン会見に出席したベルトラン・バゲット/星野一義監督/平峰一貴/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラ/近藤真彦監督/藤波清斗

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