溺れて死ぬヤンバルクイナも 「飛べない鳥」の受難…畑のおけや池から脱出できず

 国の天然記念物で絶滅が危惧されているヤンバルクイナ1羽がこのほど、沖縄県東村高江の畑の水おけで溺れているところを救助された。一時、命が危ぶまれる状態に陥ったが、通報から保護、治療と関係者の連携と尽力で回復し放鳥された。環境省やんばる野生生物保護センターは溺れる事故を防ぐために(1)水おけにふたをかぶせる(2)脱出するための足場となる枝を入れる―といった対策を呼び掛けている。
▼でも、飛ばないヤンバルクイナは「賢い」
 ヤンバルクイナは水場を好み、頻繁に水浴びする習性がある。一方、飛べないために足場がない水おけや貯水池に落ちた場合、脱出できず溺れる事故も。センターによると、事故は2008年以降、今回を含めて11件確認されていて、5羽は発見時にすでに死んでおり、1羽は救助されたが搬送時に死んだ。
 今回の事故は9月28日に発生した。22年生まれと思われる雌雄不明の若鳥が縦約120センチ、横約80センチ、高さ約50センチの水おけで溺れた。当時、水が約35センチの高さまで入っていた。ふたはなかった。  救い上げた農家がセンターに通報し、駆け付けた大嶋優希自然保護官補佐が保護した。冷え切った体を温めながら、うるま市のNPO法人どうぶつたちの病院沖縄に運んだ。
 治療した中谷裕美子獣医師によると、搬送時には衰弱し「あと数時間遅れていたら、死んでいたかもしれない」状態だったという。一時、高濃度酸素下のICUケージに入ったが、症状が回復したことから、8日に救助現場で放鳥された。  けがや衰弱したヤンバルクイナなど希少な動物を見つけた場合は環境省やんばる野生生物保護センター090(6862)9170またはNPO法人どうぶつたちの病院沖縄090(6857)8917まで。  (安里周悟)
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