リタイア後もポイント獲得可能。攻めの走りを楽しめるパワーステージ【読んで得するラリージャパンWRC基礎講座7】

 11月10~13日、愛知と岐阜の両県においてWRC世界ラリー選手権最終戦『フォーラムエイト・ラリージャパン2022』が開催される。日本でのWRC開催は2010年が最後であり、実に12年ぶりのカムバックとなる。この間にシリーズのトップカテゴリーにトヨタが参戦を開始し、今季は3つの選手権で連覇を達成。チャンピオンとして母国ラリーに凱旋する。本企画は、そんなラリージャパンをいっそう楽しく見るために、中継やレポート等でよく見聞きする基礎的なラリー用語を解説していくもの。厳選した30個のワードを計10回にわけて紹介していくラリー講座の第7回目は、デイリタイアとハイブリッドブースト、パワーステージについて説明する。

19.デイリタイア

 ラリーカーがクラッシュし自走が困難になった場合や、メカニカルトラブルによって競技を続けられなくなった場合、当日の競技から退くこと。デイリタイアとなった車両はサービスパークに戻された後、規定の作業時間内(4時間以内)に修復できれば翌日の競技に再出走することが認められている。

 再出走後はペナルティタイムが課せられるため上位入賞のチャンスは小さくなるものの、最大5点がボーナスポイントとして付与される“パワーステージ”でのポイント獲得を狙うことができる。

20.パワーステージ

 優勝や入賞によって得られる選手権ポイントとは別に、ステージ順位によってボーナスの選手権ポイントが与えられるスペシャルステージ(SS)のこと。多くのWRCイベントでは最終SSに設定されている。パワーステージでの獲得可能ポイントは最大5ポイントで、ステージ2番手から5番手までにはそれぞれ4点、3点、2点、1点が加算される。ボーナスポイントはドライバーとコドライバーだけでなく、マニュファクチャラーも対象となっている。

 シーズン終了後には、その年にもっとも多くのパワーステージポイントを獲得したドライバーに“ウルフ・パワーステージ賞”が贈られる。

2021年はティエリー・ヌービルがウルフ・パワーステージ賞を獲得。今季は新シリーズ王者カッレ・ロバンペラが、2位ヌービルに大差つけて受賞を決めている

21.ハイブリッドブースト

 ラリー1カーに搭載された共通ハイブリッドユニットによって得られる電気モーターのパワーアシストとのこと。モータージェネレーターユニット(MGU)の最大出力は100kW/約134PS。エンジンの出力と合わせるとラリー1カーの最高出力は500馬力以上、最大トルクは500Nmに達する。

 MGUによる電動パワーブーストは機械式デフ、プロペラシャフトを通じて前後のドライブシャフトに伝達されるが、このアシストはSSのスタート時や、ブレーキング直後の加速時など一定の条件を満たした場合にのみ使用することができる。これらを制御するマッピングはホモロゲーションを行った3つから選択可能だが、スタート後SS走行中に変更することはできない規則となっている。

ハイブリッドユニットは、電動ブーストを効かせるだけでなくEV走行も可能。今季のWRCではリエゾン(移動区間)などでEV走行をしなければならない区間も設定されている
1.6リットル直列4気筒直噴ターボエンジンとハイブリッドユニットによるシステム合計出力は最高500PS以上となる

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