野母崎、バス乗り継ぎ「不便」 路線維持へ効率化、待合環境改善を検討

三和地域センター敷地内の栄上バス停で樺島線に乗り継ぐ人々=長崎市布巻町

 長崎市の最南端、野母崎地区と市中心部を結ぶ長崎バスの樺島線。昨年4月から昼間の直通便がなくなり、三和地域センター敷地内の栄上(えいがみ)バス停で乗り継ぎが必要になった。利用客らは「乗降が増えて大変」「待ち時間が長い」と口をそろえる。市と事業者は「路線維持のため」と理解を求めつつ、待合環境の改善などを検討している。

■ 赤字続き
 「うわー、20分待たんば…」「他なかやろうか」「なかよ。ほんと不便」
 10月中旬の昼すぎ。自宅のある野母崎地区からバスで市中心部へ遊びに出かけた70代の姉妹は、栄上バス停で降り、時刻表を見てため息をついた。この区間に他のバス会社や鉄道はなく、約30キロの距離にタクシーを使うのは費用負担が大きい。
 長崎バスを運行する長崎自動車(長崎市)などによると、市中心部と市南部をつなぐ路線のうち、4路線(樺島線、晴海台団地線、川原線、平山台団地線)は利用客が減り赤字が続いていた。ルートが重複していたため、運行効率化を図ろうと乗り継ぎ方式「ハブ&スポーク型」を導入、2路線に集約した。
 野母崎の乗客が市中心部に向かう場合、平日午前10時~午後2時と土日祝日午前10時~午後3時は、他の2路線と合流する栄上でどちらかのバスに乗り合わせる。川原線は平山台団地を経由する。
 変更後も樺島線の便数はほぼ維持し、平日上下50便のうち13便が乗り継ぎに。エヌタスTカードで支払えば、乗り継ぎ後の運賃を100円割り引く。この方式により、年間で実車距離を約11万キロ短縮し、約5千万円の経費削減を見込む。

乗り継ぎ方式前と乗り継ぎ方式後(昼間のみ)

■ 14~26分
 昼間の利用は多くが70代以上で、通院や買い物をバスだけに頼る人も少なくない。長崎自動車は利用客の要望を受け、栄上からさらに先、スーパーなどが集まる平山台入口まで毎日2便運行している。
 一方、遅延の場合も加味し、栄上での接続時間は14~26分と長めに設定している。利用客は三和地域センターロビーの椅子に座れるが、土日祝日は施錠されるため、悪天候でも屋外で待たなければならない。
 野母崎地区の主婦(74)は「雨や風が強く、寒い日は大変。乗り継ぎになって以降、出かけることが減った」。同地区の別の女性(77)は「病院の予約に間に合うよう乗ったつもりが、待ち時間が長くて間に合わなかったことがある。足腰が悪く自分の体を支えるだけで精いっぱい。買い物にも行けない」と首を横に振る。

■ 26万人減
 こうした不満に対し、市は「路線がなくなるのが最悪のシナリオ。市民目線で考えた結果」と理解を求める。市公共交通対策室によると、市南部4路線は2019年までの5年間で利用者が延べ約26万人減少し、約5億円の赤字。人口減少や新型コロナウイルス禍などで厳しさが増す中、ハブ&スポーク型にすることで減便と運賃の引き上げは回避した。
 野母崎連合自治会は市に対し▽待合の環境改善▽乗り換え便を減らし中心部直通便を運行-などを要望。これも踏まえ、市は三和地域センターのロビーを土日祝日も開放する方向で準備を進めている。
 今後について、長崎自動車は「持続可能な公共交通ネットワークへの転換を図る上で、効率的で地域に合った運行形態を目指す」として、来春のダイヤ改正で、待ち時間をなるべく短縮できないかを検討。野母崎地区の市恐竜博物館のイベント繁忙期に臨時直通便を運行することも視野に市と協議する。


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