女性社長は58万4,130人、12年間で2.7倍増 ~ 第11回「全国女性社長」調査 ~

 2022年の全国の女性社長は58万4,130人(前年比7.9%増)で、全企業の14.70%(前年14.24%)を占めた。女性社長は調査を開始した2010年(21万2,153人)からの12年間で2倍増と大幅に増え、女性の社会進出が変化していることを示した。

 産業別では、美容業や飲食業などを含む「サービス業他」が28万3,434人(構成比48.5%)とほぼ半数を占めた。また、女性社長率では不動産業が24.48%と唯一、20%台に乗せた。
 代表者の高齢化が進み、妻や娘などが事業を承継するケースも少なくない。また、自治体などの創業支援やESG(環境・社会・企業統治)の機運の高まりや、女性活躍推進の取り組みが広がり、女性社長の増加につながっているようだ。女性社長の視点による商品開発や市場開拓などの新たな動きで、アフターコロナに向けた経済活動の活性化への寄与も期待される。

  • ※本調査は、東京商工リサーチの保有する約400万社の経営者情報(個人企業を含む)から、女性社長(病院、生協などの理事長を含む)を抽出し、分析した。調査は今回が11回目(前回2021年11月2日発表)。

「女性人口10万人当たり」の社長数は東京が唯一、2,000人を超える

 都道府県別の女性社長の最多は、東京都の15万1,314人(前年14万1,962人)だった。以下、大阪府5万5,987人(同5万2,249人)、神奈川県3万7,029人(同3万4,457人)、愛知県3万840人(同2万8,712人)、福岡県2万5,358人(同2万3,745人)と、大都市が上位を占めた。
 一方、最も少なかったのは島根県で1,661人(同1,592人)。以下、鳥取県2,067人(同1,982人)、福井県2,138人(同2,082人)の順。
 2020年国勢調査の都道府県別人口に基づき、「女性人口10万人当たり」の女性社長数では、トップが東京都の2,117人で唯一、2,000人台に乗せた。次いで、沖縄県が1,256人、大阪府が1,217人、山梨県が1,033人で、この3府県が1,000人台だった。一方、最少は新潟県の433人。以下、山形県446人、秋田県456人、島根県479人の4県が500人を下回った。
 大都市圏は人口が多く大きな市場を抱えていることに加え、サービス業のシェアも大きいため、女性社長が多くなる傾向にある。一方、人口減少率が大きく、新設法人も少ない地域では女性社長の割合は低く、大都市圏と地方とのシェア格差は年々広がっている。

女性社長

女性社長率は14.70%、前年より0.46ポイント上昇

 「女性社長率」(企業数に対する女性社長数の割合)は14.70%で、前回の14.24%から0.46ポイント上昇した。調査を開始以来、毎年、女性社長比率は上昇している。女性社長数は47都道府県すべてで前年を上回った。女性社長比率が全国平均14.70%を上回ったのは13都府県で、沖縄県が20.62%(前年20.47%)で唯一、20%を超えた。以下、東京都16.76%(同16.50%)、福岡県16.34%(同16.10%)の順。一方、新潟県9.32%(同9.15%)など3県が10%を割り込んだ。

地区別 「女性社長率」トップは近畿15.54%、最低は北陸の11.09%

 地区別の「女性社長率」は、トップが近畿の15.54%だった。前年の15.11%より0.43ポイント上昇し、前年2位からトップにランクアップした。
 2位は、前年3位の関東が15.44%(前年14.98%)でアップしたが、前年トップの九州は15.41%(同15.15%)で3位にダウンした。
 一方、最低は北陸の11.09%(同9.70%)だった。唯一、前年10%未満だったが、女性社長率は1.39ポイント上昇し、10%を超えた。
 「女性人口10万人当たり」の女性社長数の最多は、関東の1,133人(同1,045人)で唯一、1,000人台に乗せた。以下、近畿940人(同868人)、九州822人(同775人)、中国726人(同672人)、四国713人(同666人)の順。
 最低は東北の544人(同523人)で関東の半分にとどまる。以下、北陸618人(同515人)、中部704人(同648人)の順。

産業別 女性社長の最多は「サービス業他」の28万3,434人

 産業別で女性社長が最も多かったのは、「サービス業他」の28万3,434人で、全体の48.5%とほぼ半数を占めた。飲食業や医療・福祉事業、エステティック、美容業など、小資本でも起業が可能な業種が中心で、国や自治体の創業支援や副業を考える人の増加が背景にあるとみられる。
 次いで、不動産業の8万6,210人(構成比14.7%)、小売業6万2,909人(同10.7%)の順。
 産業別の「女性社長率」は、トップは不動産業の24.48%(前年24.12%)。次いで、サービス業他が18.53%(同17.89%)で続く。このほか、小売業は15.51%(同15.28%)、情報通信業が12.97%(同12.71%)など、7産業で10%を超えた。
 一方、建設業5.33%(同5.30%)、農・林・漁・鉱業8.06%(同7.91%)、運輸業9.07%(同8.96%)の3産業は10%未満で、働く業種や職場環境で女性社長率に差があるようだ。

女性社長

女性社長の名前は「和子」が11回連続トップ

 女性社長の名前は、1位が「和子」の6,090人だった。次いで、2位が「幸子」の5,618人、3位が「洋子」の5,486人、4位が「裕子」4,711人、5位が「陽子」の4,011人だった。
 トップの「和子」は、昭和初期から昭和27(1952)年頃まで女性の生まれ年別の名前ランキングトップで、「幸子」「洋子」なども上位にあげられ、その影響を色濃く反映している。
 名前が「子」で終わる社長は28万4,943人で、ほぼ半数(構成比48.7%)を占めた。一方、18位の「明美」(2,524人)、22位の「真由美」(2,250人)など、名前の最後が「美」は4万9,505人(構成比8.4%)と1割にも満たず、対照的な結果となった。

出身大学別 日本大学がトップ、上位10位は前年と同一

 女性社長の出身大学は、日本大学が458人(前年452人)でトップ。2位が慶応義塾大学376人(同372人)、3位が東京女子医科大学317人(同314人)だった。以下、4位が早稲田大学312人(同300人)、5位が青山学院大学237人(同235人)で、上位10位は前年と変動はなかった。
 国公立大学は、8位に東京大学(178人、前年8位)、16位に広島大学(130人、前年16位)、18位に大阪大学(121人、同19位)、20位に九州大学(115人、同19位)、24位に東京医科歯科大学(102人、同24位)、28位に千葉大学(94人、同29位)と、旧帝大を中心に6校がランクイン。
 また、医科歯科系では、3位の東京女子医科大学のほか、13位に日本歯科大学(143人)、24位に東京医科歯科大学が30位以内にランクインした。
 上位30位以内の女子大は4校(前年5校)に減少した。

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