【規制改革WG】訪問看護STへの薬剤の常備を議論/鎮痛剤や抗生物質など

【2022.11.07配信】規制改革推進会議「医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」(WG)は11月7日、「訪問看護ステーションに配置可能な薬剤の対象拡充について」を議論した。日本看護協会などから、訪問看護ステーション(ST)に一定の範囲の薬剤の常備を求める要望が出た。鎮痛剤や抗生物質などを想定している。特定行為研修制度を修了している場合、手元に薬剤がないため指示を実施できないことも矛盾として挙げられた。これに対し、厚労省は職種間の連携が重要との考えを示し、今後の方向性については回答はしなかった。

医療機関への請求ではなく「利用者に費用請求できないか」も論点

「訪問看護ステーションに配置可能な薬剤の対象拡充について」は、ケアプロ株式会社と日本看護協会からプレゼンがあった。

日本看護協会はプレゼン資料の中で、訪問看護ステーションにおける一定範囲の薬剤の常備を要望。
「訪問看護ステーションに常備が求められる薬剤の例」としては、脱水症状に対する輸液 、被覆剤のほか、浣腸液、ステロイド以外の軟膏、湿布、緩下剤、ステロイド軟膏、鎮痛剤、止痢剤、抗生剤などを挙げている。

現状、訪問看護ステーションは、常備が必要となる薬剤のうち浣腸液以外は購入・保管することはできず、また、購入したと しても費用を利用者に請求できないため、医療機関の代理で購入する場合以外は、費用が持ち出しとなることを問題としてあげている。

ケアプロ株式会社は配置できる薬剤の対象の拡充に加え、現在は医療機関に請求となっている費用面について、「利用者に費用請求できないか」との課題もあげている。

こうした要望に対し、厚労省は職種間の連携が重要との考えを提示。資料の中で、「 医療安全の確保及び各医療関係職種の資格法における職種毎の専門性を前提として、多くの医療関係職種それぞれが自らの能力を活かし、より能動的に対応できるよう、地域において医師、薬剤師、看護師等の医療関係職種が適切な連携体制を整備することが重要」とした。

ただ、議論の中では、厚労省の連携が重要との説明に対しては、「実際には必ずしも順調に回っているとはいえないのではないか」との意見がプレゼンター側から出たという。

また、厚労省が資料で示した「年10件以上在宅対応実績のある薬局」が36.8%であるとのデータに関して、委員からは「年間10件で十分に対応したことになるんだろうか」という意見も出たという。

日本看護協会からは、鎮痛剤など、その他非常によく使う薬剤について、「普通に使う薬剤で、通常飲み合わせ等々で問題が起こることはあまりないのではないか」との意見があったといい、「一品一品綿密に検討する必要はある」としつつも検討を求める声が出たという。

厚労省からは、患者宅に一定の薬剤を保管しておくことで急変時に対応できるのではないかとの指摘も出たという。これに対しては、在宅医療を専門にしている委員から、「現実には患者宅にストックしていると、患者さんが飲んでしまうとか、あるいはそのまま捨ててしまうという問題も多いので、ストックをすることには現実味がないのではないか」との指摘が出たという。

一方で、人口構造が変化する中で、医療職種が相互に補い合うとの観点では、昨年度、WGに提案があった薬剤師による点滴交換などを認めてほしいという要望も「同じ根っこがあるのではないか」という指摘もあったという。

WG事務局によると、現時点で何か結論が出ているということはなく、継続的に議論していく方針だとした。

編集部コメント/不動在庫など薬剤を在庫することによる経営負担はどのように訪看STは考えているのか?

薬剤の在庫は薬局にとっても、不動在庫など経営の負担となる側面があり、その解消は薬局でも簡単なことではない。それを許容してまで、訪問看護ステーションは薬剤を在庫するのか、その点が気になった。

その観点での議論があったのか。事務局に「訪看STは卸から薬剤を購入するという前提で提案をしているのか」と質問すると、事務局は「その点も1つの論点だ」と回答。
「医療機関経由になるのか、訪看STが直接買うのか。今の診療報酬の制度の中でどこまでできるか、確認する必要があるという指摘があった」(事務局)。

「薬局の遠隔の倉庫を訪看STの中に置くといった構成なども考えられるのではないか」という意見も

さらに事務局は、「もしかすると関連するかもしれないところでいうと、薬局の遠隔の倉庫を訪看STの中に置くといった構成なども考えられるのではないかという意見もあった」とした。

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