誹謗中傷を軽減すべくヤフコメの電話番号登録義務化…その是非を、視聴者を交えて議論

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「GENERATION」のコーナーでは、視聴者を交え“ヤフコメの電話番号登録義務化”について議論しました。

◆ヤフーが誹謗中傷対策強化に向けた一手を発表

Twitterの「スペース機能」を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、番組に出演するZ世代のコメンテーターとひとつのニュースについて議論する「GENERATION」。この日のテーマは"ヤフコメの電話番号登録義務化”。

10月18日、ヤフーは「Yahoo!ニュース」のコメント欄(以下、ヤフコメ)の誹謗中傷対策を強化するため、11月中旬から利用者に対し携帯電話番号の登録を義務化すると発表。

ヤフーは2018年から違反投稿を繰り返す利用者のIDに停止措置を講じています。現在、新たなID取得には電話番号登録が必要ですが、番号が登録されていない古いIDを使った誹謗中傷などの書き込みが後を絶ちません。

ヤフーは今回の措置について「健全な言論空間を構築するため」としていますが、ネット上では「自由な発言ができなくなる」などの声も上がっています。

そもそもヤフコメは多様な意見を共有し、新たな視点を得るきっかけの創出を目的として作られたもの。

キャスターの堀潤は、Yahoo!ニュースの読者であると同時に記事を執筆する側でもあります。そのため、「自分が書いた記事に対してというより、取材させてもらった取材対象者への誹謗中傷や厳しい意見はその人も見るだろうから、記事を書くときにはその反応も考えながら書かざるを得ない。そういう意味でいえば、(電話番号の登録によりサイトの)適正化が図られるのはいいなと思う」と肯定的な姿勢を示します。

加えて、最近では他国がヤフコメを活用し、プロパガンダに利用しているケースも報告されていると指摘します。他国からニュースを書いて投稿することはできないものの、ヤフコメであれば投稿は可能で、そこに自国に有意な情報を流し、「あたかも日本でも支持を得ているような言論を作り出している風潮がある」と懸念。堀は「今はプラットフォームがいかに個人を管理しながらサイトを開いていくか、そのバランスが問われている」と問題点を提示します。

◆Z世代の識者、そして視聴者の意見は?

ヤフコメの電話番号登録義務化について「賛成」と話すのは、microverse株式会社 CEOの渋谷啓太さん。「そもそも自由とは何かという前提で、僕は責任が取れる範囲だと考えている。誰かを傷つけ、その人が復活できなかったら責任が取れるのか。そういう意味では、電話番号認証はとても効果的だと思う」とその理由を明かします。

また、電話番号は個人が複数のアカウントを取得するのが難しいというのも理由のひとつで、現状ではヤフコメでアカウント停止措置となっているユーザーの5割以上が電話番号を登録していないとか。そうした背景から「電話番号という複数のIDを取得しにくいものをキーにそれを管理し、不適切な発言があればアカウントを停止する。それがネット上の健全な言論空間の構築においては有用な手段」と改めて主張します。

そう語る渋谷さんに対し、NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんから、今はWeb3.0などを含め情報の分散化が進むなか、電話番号の登録は個人情報を集約する中央集権的なもので「時代に逆行している動きではないか」との質問が。

これに渋谷さんは「今、個人情報利用において問題視されているのは使い方。自分が意図しないデータの使い方をされていること」と返答。例えば、個人情報を登録したSNSの運用元がそのデータをユーザーの許可なく他企業に売買するなど利用していれば問題ですが、電話番号登録はあくまで不適切な投稿者への対応と利用規約などに明記し、それを厳守していれば問題はないと話します。

大空さんは、電話番号を登録することで誹謗中傷の抑止になることも理解しつつ、その上で「果たして本当に全ての情報を民間の企業に渡さないといけないのか」と懸念。また、電話番号は今後マイナンバーカードと連動する可能性があり、より重要な個人情報となり得ることからも、大空さんは「危うい使い方をされる危険性をはらんでいるという見方をする必要がある」と慎重な姿勢を示します。

一方、Health for all.jp代表の茶山美鈴さんが注視していたのは、電話番号登録後のこと。考えられることとして、誹謗中傷をした際のアカウント停止、電話番号登録自体が予防的な意味合いを含んでいることなどを挙げつつ、「(登録された)電話番号を使って(ヤフーは)何をしようとしているのかに注目している」と話します。

Twitterスペースに参加している視聴者からは「大空さんが危惧するように問題はゼロではないが、電話番号登録には賛成」との意見が。「一足飛びに完璧な制度体制は作れないので、まずは電話番号を提供するところから」、「ヤフーはみんなが見ていて権威性もあり、それを悪用するような使い方をしている実情もある。そうした場合、まずは個人特定の強度を高めていくという意味で、電話番号の登録は非常に有効だと思う」と主張します。

データの利用について、「今、世界では法的な観点と世論的な観点がしっかり構成されている」と渋谷さん。ヨーロッパではGDPR(EU一般データ保護規則)があり、アメリカにはCCPA(カリフォルニア州 消費者プライバシー法)があり、日本国内でも改正個人情報保護法などで法律的な規制は始まっています。すでにヨーロッパではGoogleが50億円規模の罰金を科され、国内の企業でも個人情報の不正利用が問題となり利用者が激減するなど大きな経済的打撃を受けた例があります。

そうした事例を引き合いに、渋谷さんは「企業側からすれば、個人情報の不正利用をする意味がなくなっている。罰金が科され、世間からバッシングを受け、サービスの利用者も減ってしまうので経済合理的にメリットがなくなってきている世界なので、現状においてはサービスを健全化するために電話番号を登録するのは賛成」と自身の見解を述べます。

番組Twitterには「Twitterはメールアドレスや電話番号を登録している」、「個人情報を特定されることが怖いなら、発言に気をつければいいだけ」といった意見が寄せられるなか、Twitterスペースでは、また別の視聴者から電話番号登録について「大賛成」という声も。「(誹謗中傷などに対する規制が)なぜ野放しにされているのか。そうしたところからヘイトスピーチに発展する事件が起きたのではないかと悔やまれる。むしろ遅すぎた」と嘆く声がありました。

大空さんはYahoo!ニュースという存在が今や「非常に幅広いプラットフォームになっている」と言い、「そうしたなかで、電話番号を登録しなければサービスに参画できなくなってしまうような構造を作ることが果たして正しいのか」と指摘。さらに、「これまで(企業が個人情報を利用した)実績はあるし、今も現在進行形で活用されている。経済合理性がないと言いつつも行われている」と憂慮。

その上で「信頼度の話だと思うが」と前置き、「僕は社会や会社に対して信頼を置くことはできない。批判的な思考を持ちつつ、個人情報のオーナーシップは基本的に個人が持っておくべきだということがトレンドになることを期待したい」と切望。

この日は番組Twitterで「ヤフコメの電話番号登録義務化」に関するアンケートを実施。その結果は、「賛成」が64%。「反対」が17%。「どちらでもない」が19%でした。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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