世界遺産やんばる「米軍廃棄物に対策を」 国際NGOが報告、日米に働き掛け強化も

 世界遺産保全に取り組むNGO「ワールド・ヘリテージ・ウオッチ(WHW)」の2022年次報告書に、沖縄県国頭、大宜味、東の3村の世界自然遺産に接する米軍北部訓練場での廃棄物が撤去されず、土壌汚染も除去されていないとして、日米両政府に調査と対策を求める報告が掲載された。問題を指摘した環境団体「オキナワ・エンバイロメンタル・ジャスティス・プロジェクト(OEJP)」などが7日までに発表した。OEJPは日米両政府に問題解決のため具体的に提案しており、日米政府や国連教育科学文化機関(ユネスコ)世界遺産センター、国際自然保護連合(IUCN)などへの働き掛けも強化する。

 WHWはドイツを拠点に活動する。ユネスコ、IUCNと世界遺産がある現地の団体が連携する場を設け、各国政府に問題解決を働き掛ける。OEJPの吉川秀樹代表は22年2月の会合に参加し、やんばるの世界自然遺産に関わる北部訓練場の問題を報告していた。

 報告はOEJPの吉川代表、調査団体「インフォームド・パブリック・プロジェクト(IPP)」の河村雅美代表、チョウ類研究者の宮城秋乃さん、「辺野古・高江を守ろう! NGOネットワーク」の花輪伸一さんの4人が作成した。

 報告は(1)米軍機騒音による生物への影響が調査されていない(2)遺産に関わる問題が日米合同委員会環境分科会で議論されていない(3)遺産に関する日米合意文書の全文が公開されていない(4)米軍廃棄物が撤去されず、土壌汚染も除染されていない―など六つの問題を指摘。日米政府に調査、対策と情報公開を求めている。

 OEJPの吉川代表は「WHW報告を活用し、やんばるの森を米軍廃棄物がない『真の世界自然遺産』にするために取り組んでいく」と説明。IPPの河村代表は「米国・米軍から具体的な解決策を引き出すことで、基地問題を解決していく枠組みをつくることにつなげていきたい」と述べた。 (安里周悟)

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