日本育ち日系人への期待と現実=新人4世記者が聞く=第3回=バカ扱いの日本、誉めるブラジル

上田ミレーニさん

 上田ミレーニさん(22歳、4世)は帰伯後、祖父母の家があるサンパウロ州アルジャー市に住み、サンパウロ州バレットス市の公立高校に入学した。
 入学当初は日本の学校との差に愕然とした。「もうブラジルの学校全然違かった(笑)。男子は髭ボーボーだし、女子は20歳みたいな見た目だし、みんなの会話の内容が大人すぎて、最初はついていけなかった」と語る。
 一方で「モテ期もきたんだよね」と満面の笑みを浮かべた。「登校初日にさっそく男子から告白されたんだけど、1年後にはその子が同性愛者ってわかって、もうめちゃくちゃだよね」。
 転入後初めての数学のテストで、いきなり学年1位をとった。テストのレベルは、日本の小学校程度だったが、「日本では勉強で褒められた経験がなかったから、これでいきなり自信がついた」という。
 その後、家族や先生の支えもあり、勉強へのモチベーションは上がり、毎日約3時間の自主学習を始めるようになった。ブラジルでは先生が日本と違い、頻繁に誉めてくれるという。
 「数学はとても簡単だったけど、歴史と地理には苦戦したな。日本にいた時とは真反対」と話す。
 大学へ行くつもりはなかったが、高校3年時に受けたENEm(中等教育全国学力検定試験)で思いのほか高い点数がとれ、大学進学を決意した。
 日本に居た頃は大学へ進学することなど考えたことも無かったというミレーニさん。受験の結果、バレットス中央教育大学(UNIFEB)教育学部への入学を果たした。「私意外にやるじゃんって思ったね。日本ではずっとバカ扱いされてきたから。大学に合格出来た時はすごいうれしかった」と振り返る。
 日伯両方の教育を体験したミレーニさんは、「日本の教育は詰め込み型だから自分には合ってなかったな」としみじみ比較した。
 ミレーニさんは現在、UNIFEBを卒業し、サンパウロ州サンジョゼ・ド・リオプレットのアルマ・アウチスタ・クリニックに就職。自閉症の子供たちへ理学療法を施している。将来は「もっと家族と子供のためになるような教育の知識を身に着けて、それを活かせるようになりたい」と語った。
 日本育ちの日系ブラジル人子弟の親の多くは、デカセギとして訪日した。ほとんどの親は工場で働き、子供と過ごす時間はおろか、子供に勉強を教えることさえままならない。学習塾に通うのが一般的になっている日本人生徒とデカセギ子弟らの間では、学力差がつきやすく、いじめの対象になったり、自信喪失から進学を断念してしまいやすい。(続く、松永エリケ記者)

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