元本確保型を選んで塩漬けのiDeCo、運用商品はどう変更すればよいのか?

iDeCoをはじめてみたものの、どの商品を選べばよいか分からずそのままになっている、あるいは、結局なじみのある元本確保型商品にして放置している、という方は少なくないのではないでしょうか?

今回は、その後の手続きについて具体的に解説します。


指定運用方法を確認する

iDeCoを始めるにあたっては、いくつかのステップを踏まなければなりません。口座開設では基礎年金番号や企業年金に関する事柄などを会社に聞かなければならないなど、見慣れない言葉も多く「面倒だった」とおっしゃる方もいらっしゃいます。

やっと口座開設が終了すると、今度は毎月の掛金をいくらにするのか悩みます。なにしろ60歳まで引き出すことができないお金です。多すぎると老後以外のライフイベントの時に困りそうだし、少なすぎると必要な老後資金を準備することができないし……と、1,000円刻みの掛金に頭を悩ます方も少なくありません。

最終的には「金額変更もできるから」と折り合いをつけ金額指定。しかし、毎月の掛金の引き落としが始まっても、気は抜けません。なぜならば、iDeCoは運用商品をそれぞれが選んで始めて手続きが完了するからです。

しかし、この運用商品選びもなかなか大変です。運営管理機関にもよりますが、一般的には30種類前後の商品が準備されているので、真面目な方に限って「何を選んだらよいのか分からない」状態でフリーズしてしまうのです。

iDeCoにおいては、たとえ運用商品を選ばずとも、掛金の引き落としは開始されます。しかし、加入者自身が商品を選ばずに一定期間(通常3ヵ月以上)放置していると、運営管理機関が定めた「指定運用方法」により運用が始まってしまうので注意が必要です。

運用商品を自らが指定していない人に対し、運営管理機関は「早く商品を決めてください」とお知らせします。連絡待ち状態の間、掛金は「未指図資産」として管理されます。これは行き先がないため、お預かりとしているという意味で、現金のようなものと思っていただければ結構です。

一定期間が経過すると、それぞれの運営管理機関が定めた「指定運用方法」に、掛金は移ります。その後は、加入者からの変更指示がない限り、継続的に指定運用方法にて運用が継続します。

指定運用方法は何が問題なのか?

では、指定運用方法とはなんでしょうか?

これは、iDeCoの商品ラインナップから、運営管理機関が選んだひとつの運用商品です。以前は「デフォルト商品」と呼ばれ、定期預金など元本確保型が設定されていることが多かったのですが、最近はそうでもなくなってきました。

例えば、大和証券のiDeCoの場合、指定運用方法は「あおぞらDC定期」ですが、野村證券は「ターゲット・イヤー・ファンド」です。これは、加入者の年齢が上がるにつれ、株式へ投資する比率を自動的に下げていく投資信託です。加入者の生年月日により振り分けられるので、現在40歳であれば「マイターゲット2045」が自動的に当てられます。

資産運用においては、若くて運用期間が長く持てる場合は株式配分を高めた積極的な資産運用が適し、年齢が上がりその後の運用期間が短くなるに連れ債券配分を高めた保守的な運用が適している、という考え方があります。この理論に従ったターゲット・イヤー・ファンドは合理的な選択肢とも言えますが、投資において採用すべき理論はこれだけでもないことも知っていただきたいところです。

また、楽天証券、SBI証券(セレクトプラン)のiDeCoの指定運用方法は、「バランスファンド」です。前者は「楽天・インデックス・バランス・ファンド」で、基本配分は株式15%、債券85%。後者は「SBI グローバル・バランス・ファンド」で、基本配分は株式40%、債券60%です。

iDeCoは、時間を味方につけ資産を成長させていく仕組みです。指定運用方法がその方が望む運用商品であれば問題がないのですが、認識がないまま買い付けが行われているのであれば、今すぐに変更すべきです。自分の将来を、なんとなく流れに任せてしまうのは、残念な選択ではないかと考えます。

指定運用方法は、会社の確定拠出年金(企業型DC)からの資産移換の際も同様に適用されます。なにも指定せずに移換手続きを行うと、資産全額が指定運用方法に切り替わりますから、特に慎重に手続きしましょう。ある程度の残高がある場合は、いったん定期預金など元本確保型商品を指定し、そこから少しずつ「時間分散」しながら投資信託に振り替える方がよいでしょう。

また「とりあえず、わかりやすい元本確保型商品」に設定している方も、本当にこのままでよいのか再考しましょう。そもそもiDeCoを始めた目的が将来のためにお金を成長させたいということであれば、投資信託での運用が目標達成のためには必須ではないでしょうか?

配分変更とスイッチング

iDeCoの運用商品を変更するには、「配分変更」と「スイッチング」という2つの技を使い分けていきます。配分変更は、次月の掛金で買う運用商品を変更すること、スイッチングは、今手元にある資金の中身を売買により変更することを言います。

例えば、指定運用方法商品を止めて、次月からは投資信託Aを買いたいという場合、iDeCoのマイページにて「配分変更(配分指定という運営管理機関もあり)」をします。配分変更の画面では、現在買い付けている商品情報があり、それをどのように変更したいのかを問う構成になっています。この場合は、投資信託A:100%と入力します。すると毎月1万円の積立をしていた場合、これまでは毎月指定運用方法商品が買い付けられていましたが、次月からは投資信託Aを1万円買い付けることになります。

仮に複数の投資信託を購入したいという場合は、投資信託A:70%、投資信託B:30%、合計100%と割合を指定して入力します。変更は何回でも無料でできますが、次月買い付け分の変更なので、反映される変更の締め切り日があるので確認しましょう。

配分変更はあくまでも次月からの買い付け商品の変更ですから、手元にたまっているお金の中身はいまだに指定運用方法100%、あるいは元本確保型商品100%です。つまり残高分には全く手がついていない状態なので、今度はスイッチングで動かしていきます。

スイッチングとは、今ある商品を売って、別の商品を買うという行為です。iDeCoのマイページから「スイッチング」を選ぶと、現時点で保有している運用商品毎の残高が表示されます。指定運用方法に○○口、○○万円という形です。例えば現在、定期預金が5万円あり、これを全部売却して投資信託Aを購入したいという場合は、定期預金を「全部」売却とし、購入可能な商品一覧から投資信託Aを選択し100%と入力します。もし複数の投資信託を買い付けたい場合は、配分変更と同様、割合を指定して購入します。

例えば企業型DCからの移換で50万円が元本確保型に入っていて、これを投資信託に変更したいという場合、一度のスイッチングで終了するのではなく複数回に「時間分散」する方が、高値づかみを防げます。その場合は、定期預金を「一部」売却し、投資信託を買い付けする作業を月に1回など予定をもうけて複数回繰り返します。

売却するものが元本確保型の場合は、買い付け日が古いものから並びますから、希望するものを指定して売却します。投資信託の場合は、口数を指定して売却します。操作方法が分からない場合やネットでの手続きに不安がある場合は、コールセンターにヘルプを要請しましょう。

配分変更と異なりスイッチングは、いつでも、何回でも可能です。売却をするものが投資信託の場合、「信託財産留保額」としてコストがかかる商品もありますので、あらかじめ確認しましょう。また売却した資金で新しい商品を購入するので、すべての手続きが完了するまでに数日かかります。運営管理機関のウェブサイトでは、詳細について案内がありますので、ご一読されることをオススメします。

配分変更とスイッチングはiDeCo独特の手続きですが、ほったらかしからの脱却の時にも使いますし、ポートフォリオのメンテナンス、いわゆる「リバランス」の際にも使います。またタイミングをみながら利益確定をして受取に備えるといった場合にも使いますので、ぜひマスターしておきたい技でもあります。

© 株式会社マネーフォワード