<南風>働き方改革

 2019年に事業承継で前院長から今の病院を譲り受け、多額の借金を背負い再出発、最もやりたかったことは働き方改革だった。過去の私の働き方は本人が望んでやっているならまだしも、会社が強いると明らかにブラック企業。自分自身も雇われ時代に年収は増えたが一向に改善しない労働環境に辟易(へきえき)し、幸福を感じられなくなっていた。

 持続可能な会社と働き方を実現するにはどうしたらいいか。経営者として何にお金と時間を使うべきか。当時、社会で認知され出していたwork life balanceとは。それを正しく教えてくれたのが小室淑恵さんの「残業ゼロの仕事術」という本だ。そのご縁で出会ったLife is Love社の比嘉夫妻は2年にわたり二人三脚で改革を前進させる強力な後押しを頂いた。

 とは言え、最初は大きな痛みを伴った。ここには書き切れないが皆が痛みを伴った。私の年収も前年の3分の1に圧縮して予算を捻出。それでも当初は誰もが疑心暗鬼のまま進めていかざるを得ず、同時にコロナ禍も訪れたことで一層の混乱と不安が広がった。

 業務効率を高めつつ医療の質を落とさないことを担保する無理難題は、一言で言えば生産性の向上であるが、一筋縄ではいかない。それでも少しずつ成果が出始め、スタッフ自身がその恩恵を感じられるようになってからは好循環に入った。

 一番大きなエンジンとなったのは「人の成長」。放っておいても人は成長できないし、経営者の思い通りに成長してくれない。そのための環境を整備することが経営者としての一番の役割で、その中で成長してきたスタッフの芽を育てられるかだ。私自身も多くの失敗を経て何とか少しだけそれを理解できるようになったのはつい最近。多大な協力をしてくれた全ての人々に心から感謝したい。

(周本剛大、琉球動物医療センター院長 沖縄VMAT隊長)

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