「覆面の貴講師」にM塾頭…知る人ぞ知る有名講師が教える沖縄の小さな学習塾 2人が大事にしていること

 沖縄県那覇市壺屋の小さな学習塾「インフィニティー進学スクール」は、知る人ぞ知る有名講師が教壇に立つ。覆面レスラーの姿で全国を飛び回る「覆面の貴講師」こと数理哲人と、化学者のM塾頭だ。引く手あまたの2人は、なぜ小さな学習塾で教えているのか。

 哲人さんが塾で教えるようになったのは、およそ1年半前。塾の経営者、仲宗根麻紀さんが講師の確保に困っていると知り、講師を引き受けた。

 M塾頭の前職は県外にある研究機関の管理職。たまたま見つけた塾の求人に応募した。「研究者時代は沖縄に縁がなかったが、引退後はどう過ごすか考えると逆に目が向いていた。初等教育にも興味があったので、『ダメ元』で応募してみた」という。仲宗根さんは経歴に仰天しつつ、塾に迎え入れた。

 2人が大事にするのは「自己学習力」だ。哲人さんは「ググって(ネット検索で)出てくる情報は断片的だ。知識は有機的に結びつけないと」と語る。大都市の生徒を引き合いに出し「上には上がいる」と生徒を鼓舞する。M塾頭も「研究の先端は分からないことだらけだ。答えはなく、自らが答えをつくらないといけない」と、自らの経験を基に、学び続ける重要性を説く。

 塾には学年も学習状況もばらばらな生徒が集まる。2人は生徒に個別の課題を与え、将棋の「多面指し」のように指導する。「なぜロシアとウクライナは戦争しているの?」など、授業と関係のない質問も飛び出すが、動機付けのチャンスと捉え、真剣に向き合う。

 昨年度、さまざまな事情で学校に通えなかった中学生が高校に合格した。生徒は現在、高校で部活に励み、世界レベルで活躍しているという。小規模の学習塾だからこそ見える生徒一人一人の成長。2人は感慨深く目を細める。

 「受験、受験というより、学び続けていたら受験なんて簡単に通り抜けられる、というのが理想だ」。学びの達人2人は、小さな学習塾で理想の指導法を模索している。

 (稲福政俊)

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