若年有権者の投票率を向上させるにはどうすればよいのか?Part4 統一地方選の過去のデータから見る投票率向上策(データアナリスト 渡邉秀成)

2023年執行予定の統一地方選挙まで1年を切りました。

次回、第20回統一地方選挙は4月9日、23日に執行予定です。

この統一地方選挙は各自治体の代表者を決める選挙です。

どのような代表者を首長にするか、議会議員に送り出すかで自治体運営の方向性が大きく変化するので、地域住民にとっては今後の地域運営がどのようになるのかを決める重要な選挙になります。

そのような地域運営の動向がどのようになるのかを決める重要な選挙にも関わらず投票率は低下傾向にあり、無投票で当選する議会議員が決まる地域も多数あります。

図1 統一地方選の投票率の推移

そんな投票率が低下傾向にある統一地方選挙ですが、物価上昇が続いているにも関わらず、賃金上昇が見られない状況が続いていますので、次回の統一地方選挙ではこのような状況を打開できる候補者を地域の代表にしようとする動きも出てくるのかもしれません。

そこで今回は20年近く前に執行された2003年第15回統一地方選挙時と

そして前回2019年第19回統一地方選挙時で、

有権者がどのようなことを考慮して投票したのかを観察してみたいと思います。

2003年と2019年で争点は変わったのか

20年近く前に有権者が投票する際に考慮した問題は、今までに解決されてきたのでしょうか?

それとも問題は解決せずにそのままなのか、むしろ状況は悪化しているのかを見てみましょう。

2003年統一地方選挙時、2019年統一地方選挙で有権者が投票する際に考慮した問題をグラフにしたものが下記になります。

(データは公益財団法人 明るい選挙推進協会 意識調査結果 からのものです)

図2 投票する際に考慮する問題(左:2003年、右:2019年)

グラフを見比べると医療、福祉、景気、物価、雇用、教育に関係するものが上位にきていることが確認できます。

2003年の調査時から16年経過した2019年においても、有権者が投票する際に考慮する問題というのはおおよそ変化していないことがわかります。

医療福祉政策はなぜ重視されるのか

第15回統一地方選挙が執行された2003年4月というのは、サラリーマンの医療機関の窓口負担が3割になった時期でもあります。

2022年10月からは75歳以上の方等で一定以上の所得がある方は、医療費の窓口負担割合が2割になります。

少子高齢化問題が解消されず、医療費負担が増える傾向にあることを考えると、有権者が投票する際に考慮する内容の上位に医療福祉関連が上位に来るのは当然なのかもしれません。

若年有権者は健康に問題がある人が少ない傾向にはあるので本人自身の医療費等についてはあまり考えることはないのかもしれません。

しかし家族、親族等の介護課題を抱えると、若年有権者(ヤングケアラー等)にとっても医療福祉政策は無関係ではなくなります。

景気・物価・雇用はなぜ重視されるのか

また、景気・物価・雇用といった日常生活を送る上で密接に関わる問題についても、投票する際に重要視している有権者が多いことがわかります。

独立行政法人労働政策研究・研修機構の資料(図3)を見ても、1990年代後半から賃金が低下傾向にあることが確認できます。

図3 賃金傾向

賃金が上昇せず、消費税、社会保険料等、各種負担金が上昇しており生活に利用できるお金が減少している傾向にある人が多いので、次回2023年統一地方選挙では、賃金、雇用、物価等に関する点を重視する有権者が増加することが予想されます。

自治体によって生活環境が変化する

選挙になると誰に投票して良いのかわからない、誰に投票しても変化はない等の話が出るのですが、どのような人を議会に送るか、首長にするかで、住む自治体の生活環境が変化することは大いにあります。

例えば、厚生労働省の「乳幼児等に係る医療費の援助についての調査」を見ても、自治体ごとに違いがあることがわかります。

ここでは市区町村における乳幼児等医療費援助の実施状況について色分け地図(図4)を作成してみました。

図4 市区町村における乳幼児医療費助成の実施状況

多くの自治体が15歳年度末、18歳年度末くらいまで医療費助成制度があることがわかります。

ここでは乳幼児等の医療費助成制度で色分け地図を作成しましたが、その他の制度で自治体ごとに比較をしても、さまざまな違いに気づくことができると思います。

投票率を上げるには?

投票率が低下傾向にあると言われますが、生活に密接した情報を行政サイドが市民に知らせる仕組みを作ることで、市民が他の市区町村と行政サービスを比較することを始めると思われるので、有権者の投票行動に結びついてくるものと思います。

行政側が提供する情報というのは、自治体が個別に提供していることが多く、全国的に比較することが難しい傾向にあります。

全体的な位置付けの中で、各自治体がどのような場所に置かれているのかを把握できる情報が充実することで、有権者の投票意識も高まるものと思われます。

各種予算をどのような分野にどのような割合で分配していくのかをきめる首長、議員をどのように議会に送り出すのかを決める選挙は有権者にとって非常に重要な意思表明手段です。

近年ですと兵庫県明石市の子育て支援などは注目を集めていますが、

首長が変わることで住民の生活環境が大きく変化することの一つの例ではないでしょうか。

まとめ

統一地方選挙まで半年を切りました。

過去の選挙において各議員等が公約した内容は実現できているのか、公約したが実現できていないかをチェックして、有権者は2023年第20回統一地方選挙で投票する政党、候補者等を絞りをかけてみてもいいのかもしれません。

今回は20年ほど前の統一地方選挙における有権者が投票する際に意識した内容と、直近の有権者の投票意識を比較をしました。

有権者が重視する内容は大きな変化がなく現在まで続いているようです。

今回は統一地方選挙において有権者が意識する内容について観察をしてきました。

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