ローソン100「だけ弁当」シリーズ 「売れるわけないだろう」苦節10年…一人の熱い社員がヒット確信

「のり磯辺揚」「白身フライ」などこれまで発売した5種類の「だけ弁当」

 ご飯と、おかずは5本のウインナー。ローソンストア100(川崎市幸区)が昨年発売した弁当は、斬新な内容で話題を集めた。「好きなおかずを思う存分堪能したい」。おかずが1種類、その名も「だけ弁当」シリーズは一人の社員の熱い思いから誕生し、今や同社の弁当の収益の柱に成長。16日には第6弾を投入する。気になるその中身とは─。

◆「見た目悪い」商品化まで10年

 「『見た目が悪い』『ウインナーは弁当の顔にならない』。会社からは、売れるわけがないだろうと言われ続けた」。次世代事業本部統括マネジャー林弘昭さん(44)は苦笑する。

 なぜ、ウインナーをおかずの主役の座に据えたのか。「単に自分が好きだから」。林さんの答えは明快だ。発売は2021年6月。だが、商品化までに10年もの歳月を要したという。

 当初、会社側の反応は鈍かったものの、長年店舗運営に携わり、顧客の動向に日々アンテナを張る林さんには、絶対に売れるとの確信があった。

 スーパーのような多彩な品ぞろえと、ほとんどの商品が100円(税別)という均一価格を特徴とするローソンストア100。林さんは、おかずが1種類のシンプルな弁当は麺類や総菜などと一緒に購入されることも多いはず、と会社に訴え続けた。

 商品開発の担当者の尽力もあり、発売が決まったのは21年春。当初は関東エリア限定とし、他の商品と組み合わせてもワンコインで収まるよう価格は216円に設定した。

 彩り豊かな弁当とは一線を画す見た目のインパクトもあってか、発売後は交流サイト(SNS)を中心に多くの反響を呼んだ。同年8月には全国展開。客層は幅広く、「子どもの頃の夢がかなった」との声も寄せられたという。

 「ウインナー弁当」の販売累計は約140万食(今年10月末時点)。林さんは「(他にも)ありそうで、ないところがウケたのでは」と分析する。

◆コスト巡る「せめぎ合い」の勝者

 21年11月にはシリーズ第2弾「ミートボール弁当」を発売。その後も「のり磯辺揚」「白身フライ」「チキンナゲット」と、林さんの提案が相次いで商品化された。

 そして、満を持して今月リリースするのが「玉子焼弁当」だ。ご飯の上に8切れの卵焼きを敷き詰めた。

 こだわりは冷凍の卵焼きではなく、手焼きとした点。同社には卵を焼く機械や製造ラインがなかったため、発売に当たり、製造を担う工場を探すことから始めたという。だし巻き卵は、関東は甘め、中京・関西はほんのり甘めと地域によって味付けを変え、それぞれにだし醤油(しょうゆ)も添える。

 また、他の「だけ弁当」の容器が楕円(だえん)形であるのに対し、より多くの卵焼きをきれいに並べるため四角形を採用。既存の容器を流用することで費用を抑えた。

 物価高騰の折、やはり課題は原材料コストだ。これまでも、例えば白身フライにかけるタルタルソースの量を「多めにしてほしい」と訴える林さんに、商品開発の担当部署が難色を示すなど、コストを巡る「せめぎ合い」が繰り広げられてきたが、「大抵、林さんが勝つんです」と広報担当者。顧客のニーズをよく知る林さんだからこそ主張には説得力があり、実際に発売すると、それが「正解」であることが多いのだとか。

 「だけ弁当」について、「まだまだアイデアはたくさんある」と林さん。温めている構想を具現化するための挑戦は続く。

◆だけ弁当 「弁当の定番だが主役になれないおかず」を主役に据える、をコンセプトに掲げる。これまでに5種類を発売し、価格はすべて216円。シリーズの販売累計は約277万食(10月末時点)。

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