JR道ノ尾駅の人気者 「駅長ネル」が家猫に 余生は佐野さんと共に

ネルをかわいがる佐野さん=長崎市

 長崎市と西彼長与町の境界にあるJR道ノ尾駅で、7年にわたって「猫の駅長」として親しまれた地域猫のネルが8月、近くの人々の手を離れ、同市の学校事務職員、佐野寛さん(57)に引き取られた。「余生は責任を持って面倒を見たい」と佐野さんは話す。
 ネルは2015年11月ごろ、ふらりと道ノ尾駅に現れてすみ着いた。当時の駅長が「よく寝るから」とネルと命名。駅舎のあちこちで寝転ぶ愛らしさが人気となり「猫の駅長」と呼ばれるように。住民は餌やりや寝床の掃除などをしながら見守ってきた。
 佐野さんは21年2月ごろネルのことを知り、仕事帰りに駅へ通ってかわいがるようになった。ネルもなついて膝に乗ったり後追いをしたりするようになり、時には一緒に2時間も過ごす仲になった。
 そんな折、複数の住民から、ネルの飼育を打診された。駅が今年3月に無人化され、人の目が行き届きにくくなったためだ。推定8歳のネルは人間なら50歳前後で、これから老いに向かう。愛猫を亡くしたことのある佐野さんは快く引き受け、自宅へ連れてきた。
 家猫になったネルの体重は5キロから1キロ増え、毛並みもつやつやに。「駅にいたときよりはっきりと意思表示するようになり、嫌な時は抱っこもさせてもらえない。そこがまたかわいい」と佐野さんは目を細める。
 ホームには、ネルが引き取られた経緯を住民が記したお知らせが掲示されている。「ネルが長い間、駅長猫としてかわいがられてきたのは、世話をしてきた方のおかげ」と改めて感謝する佐野さん。「今は生き物の命を預かる責任を感じている。大切な家族と思ってネルと一緒に暮らしていきたい」と話す。



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