V長崎両トップに聞く 岩下英樹社長/ファビオ・カリーレ監督 11位の今季振り返る

(写真左から)「競争力のあるチームにしていきたい」と語るカリーレ監督=諫早市、なごみクラブハウス、「ファンにとって近い存在になりたい」と語る岩下社長=長崎市、ジャパネットホールディングス万才町オフィス

 サッカーJ2、V・ファーレン長崎のファビオ・カリーレ監督(49)と岩下英樹社長(41)の両トップに、11位に沈んだ今季の課題を聞いた。カリーレ監督は、勝つためには高さと若さが足りなかったと指摘。コロナ禍の入場制限が緩和されたにもかかわらずホーム戦の平均観客数は昨季から微増の5061人にとどまったことから、岩下社長は集客策の未熟さを反省した。以下、一問一答。

◎岩下英樹社長 兼任で「相乗効果ある」

 -今季の振り返りを。
 期待に沿う結果を出せず、悔しく思っている。集客や街の盛り上がりは成績に引きずられたような形になり、クラブの力不足を感じた。成績に関係なく集客するためエンターテインメント性の向上が必要。まだまだ足りないと自覚した。

 -シーズン途中の3月に就任し、長崎ヴェルカ社長も兼ねる形になった。「兼任社長で大丈夫か」との声がある。
 ヴェルカは自分自身が立ち上げた。一方のV長崎はもうすぐ創設20年。歴史や関わった人の思いを引き継いでいる。安請け合いする話ではないと、覚悟を持って引き受けて全力を挙げている。サービスや運営の質が下がり、楽しいイベントがなくなったという声があるなら、真摯(しんし)に受け止めて反省すべき。
 何をするにしても「兼任社長だから」という見られ方はクラブにとってマイナス。本当にそうであるのなら進退を考えないといけないとすら思う。V長崎とヴェルカが魅力的なクラブになることが大事だし、双方の強みを生かした取り組みをもっとできるとも思う。
 財務など運営面を考えると、今まで別々の社長が同じ時間をかけて積み上げるものが一度で終わるなど兼務のメリットはある。広報、事業、営業など、合理化で相乗効果が生まれてきた。両クラブのいい取り組みを参考にするために、合同会議も開いている。

 -ファンとの距離が遠いという指摘も多い。
 もっと近い存在になりたい。そのために接点を持ちたかったが、過密日程とコロナ禍の規制で難しかった。ファンミーティングもそろそろ対面で開催したいと感じる。自分自身は会場で多くの方に声をかけていただき、いろんな意見をもらった。

 -2021年度のクラブ人件費13億円はJ2上位。来季の方向性は。
 明確に抑えるとか、もっと積むとかはない。J2では今の投資が限度に近い。監督がやりたいサッカーに必要な人選を、今の基準の中でつくる。V長崎の経営は全く順調ではなく、(親会社の)通販の収益があって成り立っている。J1昇格、定着、上位争いをして、満席になるくらい来てもらって初めて自立できる。

 -改めて、チーム編成の要職であるゼネラルマネジャー(GM)を新たに充てる方針は。
 慌ててGMを設置する予定はないが、引き続きいい人材を探している。GMがいるヴェルカといないV長崎でも補強や編成のやり方は一緒だと認識している。決裁権のある髙田旭人会長は「誰にいくらでオファーする」「この選手とは契約しない」など編成に口を出しているようにみられているけど、実態はそうではなく、強化部を中心に進めている。

 -ファンへの言葉を。
 V長崎はどんなときも支えてくださる温かいサポーターがいて、ありがたい。思いに応えて、恩返しをしたい。絶え間なく楽しめるイベントと、カリーレ監督が生み出すサッカーの面白さが掛け算になってこそ、試合会場で面白いと思ってもらえる。全力でやっていく。

◎ファビオ・カリーレ監督 課題は「高さ」と「若さ」

 -シーズン途中から登板して初めて日本サッカーで指揮を執った。今季の総括を。
 サポーターに多くの勝利を届けることができず、とても悔しい。6月の監督就任以降、チームがコロナに見舞われる前は成長を実感していた。サッカーは練習を繰り返し、戦術を落とし込まないといけない。9月以降はそれができなかった。ただ、日本サッカーには多くの学びがあった。思っていた以上にJ2のレベルが高い。質がすごくいいし、完成されている。グラウンドも素晴らしい。すごくいいレベルのリーグだと感じた。

 -チームの課題はどこにあると捉えているか。
 空中戦の失点が多かった。何度も練習したが、改善できなかった。54失点中、空中戦関連は27失点。昇格したいチームがこんなに失点があってはいけない。もう一つは、DFからのビルドアップで前線にいいボールを供給しないとFWは仕事ができない。来年の開幕前キャンプで組織化する。
 練習のプレーを試合で出せない場面が多いのも弱点だと感じた。(強化責任者の)竹村テクニカルダイレクターは私が苦労しているところや考え方を分かってくれている。補強はうまくいくと思っている。

 -母国ブラジルとのギャップは。
 とにかく怖がらず、ミスを恐れないで勇気を出してプレーしてほしい。ゴール目前なのにパスを選択する。もっとゴールに飢えてほしい。空中戦は届かないと感じたら止まってしまう。少なくとも跳んで体をぶつけないといけない。

 -来季のチームづくりをどう描いているか。
 DFラインを高く設定したサッカーをしたいので、スピードがないといけない。J2はロングボールを多く使うので、空中戦が強くなくてはならない。具体的な選手の名前を伝えて獲得の注文をした。平均年齢は下がると思う。経験のある選手と組み合わせて、若い選手を成長させたい。
 今いる若くて質のいい選手は、体つきを変えていけばさらによくなる。ベテランの域でいい動きをする選手もいる。その融合が必要。もう一つ、選手にリーダーシップを求めている。もっと声を出さないといけないし、声を出す選手を連れてこないといけない。選手間の競争力があるチームにしたい。

 -今オフの過ごし方は。
 世界のトップレベルが何をやっているのかを学ぶために、来年の始動前にイングランドのアーセナルの練習を見学してくる。監督としてもっと知識を増やして長崎に帰ってきたい。サッカーは常に進化している。攻守の強度を見たり、監督と話し合いができるようにセッティングした。

 -応援するファン、サポーターへ。
 感謝の気持ちでいっぱい。来年も引き続き応援してほしい。全員で力を合わせて、大きな仕事を果たしてみせます。皆さんの声援が、大きな力になります。


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