件数36件、過去15年間で5番目の少なさ ~ 2022年10月「負債1,000万円未満の倒産」調査 ~

  2022年10月の負債1,000万円未満の企業倒産は36件(前年同月比18.1%減)で、10月では2年連続で前年同月を下回った。コロナ禍の2020年は7月94件、8月83件と急増したが、コロナ関連支援が浸透すると落ち着き、2022年7月と8月は2カ月連続で24件に減少している。
  10月の36件は、10月としては2008年以降の15年間で、2011年の32件に次ぐ5番目の低水準だった。「新型コロナ」関連倒産は9件(前年同月比±0.0%)で、負債1,000万円未満の倒産の4社に1社(構成比25.0%)を占めた。

 産業別は、最多が「サービス業他」の21件(前年同月比4.5%減)で、全体の58.3%を占めた。なお、通所・短期入所介護事業(ゼロ→4件)、訪問介護事業(1件→2件)など医療,福祉事業(4→8件)は、前年同月を上回った。
 原因別は、「販売不振」が19件(同34.4%減)で半数を占めた。次いで、「他社倒産の余波」6件(同100.0%増)、「事業上の失敗」5件(同25.0%増)と続く。
 資本金別は、「個人企業他」を含む資本金1,000万円未満が33件(同13.1%減)で、全体の9割(構成比91.6%)を占め、ほとんどが小・零細企業だった。
 形態別は、36件すべてが「破産」だった。小・零細企業は、資金余力に乏しく事業継続を断念するケースが多いことを示している。
 コロナ関連支援策は、企業の資金繰りを一時的に緩和させた。しかし、コロナ禍も3年目に入ると支援効果が薄れ、再び資金繰りが悪化した小・零細企業は少なくない。さらに、円安や資源高などによる物価上昇、人手不足が顕在化し、コロナ関連支援で過剰債務に陥った企業は新規の資金調達が難しく、倒産だけでなく廃業などの動きからも目が離せない。

  • ※本調査は、2022年10月に全国で発生した企業倒産(法的、私的)のうち、企業倒産集計(負債1,000万円以上)に含まれない、負債1,000万円未満の倒産を集計、分析した。

倒産件数36件、10月では2年連続で前年同月を下回る

 2022年10月の負債1,000万円未満の倒産は、36件(前年同月比18.1%減)だった。10月としては2年連続で前年同月を下回り、2008年以降の15年間では、2011年(32件)に次いで5番目に低い水準にとどまった。
 「新型コロナ」関連倒産は前年同月と同件数の9件で、負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は25.0%(前年同月20.4%)だった。
 負債1,000万円未満の倒産は、資金余力が乏しい小・零細企業がほとんど。コロナ支援の効果が薄れつつあるなかで業績回復も遅れ、事業継続を断念している。

1000万未満

【産業別】サービス業他が約6割

 産業別では、10産業のうち、増加が卸売業、金融・保険業の2産業、減少が7産業、同件数は農・林・漁・鉱業の1産業だった。
 最多は、サービス業他の21件(前年同月比4.5%減)で、10月としては2年連続で前年同月を下回った。ただ、構成比は58.3%で、前年同月の50.0%から8.3ポイント上昇した。
 このほか、小売業が2件(前年同月比50.0%減)で3年連続、建設業が4件(同42.8%減)で2年連続、情報通信業が2件(同50.0%減)で3年ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。また、製造業(前年同月1件)が2016年以来、6年ぶり、不動産業(同1件)が2015年以来、7年ぶり、運輸業(同2件)が2年ぶりに、それぞれ発生がなかった。
 一方、卸売業6件(前年同月比100.0%増)が、4年ぶりに前年同月を上回った。金融・保険業は1件(前年同月ゼロ)で、2015年以来、7年ぶりに発生した。
 農・林・漁・鉱業は、2年連続で発生しなかった。
 業種別では、通所・短期入所介護事業4件(同ゼロ)、食堂,レストラン(同ゼロ)と訪問介護事業(同1件)が各2件、土木工事業、建築工事業、野菜卸売業、生鮮魚介卸売業、荒物卸売業、生命保険媒介業、喫茶店、外国語会話教授業などが各1件で前年同月を上回った。

1000万未満

【形態別】消滅型の破産が100.0%

 形態別は、「破産」が36件(前年同月比12.1%減、前年同月41件)で、2年連続で前年同月を下回った。構成比は100.0%で、前年同月の93.1%より6.9ポイント上昇した。
 10月として負債1,000万円未満の倒産がすべて破産だったのは、2020年以来、2年ぶり。
 負債1,000万円未満の倒産は、小・零細企業がほとんどを占めている。いったん業績不振に陥ると、そこから経営を立て直すことは難しい。さらに、小・零細企業の多くは、経営再建や事業再構築のための資金余力にも乏しく、先行き見通しが立たない場合、事業継続を断念せざるを得ないのが実状だ。

【原因別】販売不振が5割

 原因別の最多は、「販売不振」が19件(前年同月比34.4%減)で、10月としては2年連続で前年同月を下回った。また、負債1,000万円未満の倒産の5割(構成比52.7%)を占め、前年同月の65.9%より13.2ポイント低下。「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が2件(前年同月比33.3%減)だった。『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は21件(前年同月比34.3%減、前年同月32件)で、2年連続で前年同月を下回った。負債1,000万円未満の倒産に占める構成比は58.3%で、前年同月の72.7%より14.4ポイント低下した。
 このほか、代表者の病気や死亡を含む「その他」が3件(前年同月比40.0%減)で、6年ぶりに前年同月を下回った。一方、「他社倒産の余波」6件(同100.0%増)と「事業上の失敗」5件(同25.0%増)が、それぞれ2年連続で前年同月を上回った。また、「信用性低下」が1件(前年同月ゼロ)で、2013年以来、9年ぶりに発生した。

【資本金別】1千万円未満が9割

 資本金別は、「1千万円未満(個人企業他を含む)」が33件(前年同月比13.1%減、前年同月38件)で、10月としては2年連続で前年同月を下回った。構成比は91.6%で、前年同月の86.3%より5.3ポイント上昇した。
 内訳は、「1百万円以上5百万円未満」20件(同53.8%増、同13件)、「個人企業他」6件(同45.4%減、同11件)、「5百万円以上1千万円未満」4件(同42.8%減、同7件)、「1百万円未満」3件(同57.1%減、同7件)だった。
 このほか、「1千万円以上5千万円未満」が3件(前年同月比40.0%減)で、4年ぶりに前年同月を下回った。「1億円以上」は2008年より15年間、「5千万円以上1億円未満」は2年ぶりに、それぞれ10月では発生しなかった。

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