居酒屋で“推し活”…店員への「投げ銭」スタート 1回の上限額は1万円、福井県のわらび全店で導入

投げ銭システムを使う利用客(左)と接客する従業員=福井県福井市高木町のわらび高木店

 居酒屋経営のわらび(本社福井県福井市文京7丁目、中村敏明社長)は、利用客が接客担当の従業員らに、ネット上でチップ代わりの「投げ銭」を支払えるシステムを導入した。新型コロナウイルス流行で飲食業界が大きな打撃を受ける中、担当者は「接客を磨くモチベーションになる。顧客満足度の向上や店舗の売り上げ増につながれば」と期待している。

 福井県内の「わらび」全6店で10月下旬に導入した。同社によると、同様のシステムは県内飲食店で初めて。

 店内のテーブルやカウンターに設置した宣伝用ポップ(札)のQRコードをスマートフォンで読み込むと、店舗名や従業員の一覧が表示された専用サイトにつながり、従業員の名前や写真、それぞれの夢や目標、お薦めのメニューなどを見ることができる。

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 利用客は投げ銭を贈る従業員を選び、100~2000円分のスタンプを購入する仕組み。1回の購入上限額は1万円。決済完了後の画面を提示すると、投げ銭を贈った従業員が店内にいる場合は直接お礼を伝える。各従業員が受け取った投げ銭の75~80%を給与に上乗せし、全店舗通じたランキングも表示していく。従業員の参加は任意としている。

 投げ銭のシステム「Throw(スロー)」は、ITベンチャーのglow(グロー)=本社同県坂井市丸岡町熊堂、嘉門大助社長=が開発した。店舗での運用シミュレーションや従業員のモチベーション向上につながるサイト設計などは、わらび側と共同で行った。わらび高木店で実施した約2週間の試験運用では、8人の従業員に計1万800円の投げ銭があった。

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 わらびの中村潤也人材育成管理部長は「好きなアイドルやミュージシャン、アニメのキャラクターを応援する“推し活”は幅広い世代に定着している。従業員の夢や目標、趣味などに共感して応援していただけるとうれしい」と説明。「割引きという形ではなく、接客パフォーマンスの向上という付加価値でお客さんに還元していきたい」と力を込める。

 「スロー」の初期導入費や固定費は無料。グロー社は今後、他の飲食店や観光、美容などの幅広い業界にも広げていく方針。

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