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2022年11月8日に公開された動画のテーマは……夏の参院選は違憲!?なんで選挙が無効にならないの?
ゲストにライターの平河エリ氏をお招きし、一票の格差問題について語っていただきました。
【このトピックのポイント】
・7月の参院選では一票の価値に最大3.03倍の差が発生。福岡高裁宮崎支部では「違憲状態」仙台高裁では「違憲」の判断が下される
・「違憲」「違憲状態」にも関わらず選挙が無効とされない理由は「行政訴訟法の事情判決」にあった
・国会での一票の格差是正の取り組みも人口変化のスピードに追い付かず。平河氏「根本的な変更が必要」
7月の参院選は「違憲状態」福岡高裁宮崎支部
たびたび議論にあがる一票の格差問題。7月の参院選では一票の価値に最大3.03倍の差があり、弁護士グループが各地で訴訟を起こしています。
この件について福岡高等裁判所宮崎支部は、憲法が求める投票価値の平等に反した「違憲状態」と判断しました。
また、仙台高等裁判所は「違憲」と判断しましたが、いずれも選挙を無効とする訴えは退けました。
11月8日時点で5件の「違憲状態」、1件の「違憲」の判断がされているにも関わらず、選挙は無効にならないのはなぜなのでしょうか。
その理由について平河氏は「行政訴訟法の事情判決」だと解説します。
これは「取り消すことによって著しく公共の利益を損なうものについては違法でも取り消さない」ということです。
平河氏「選挙を無効としてやり直そうとしても同じ違憲状態、あるいは違憲の選挙をやり直すことになり、やり直す意味がなくなってしまう。なので国会で議論して違憲を解消したうえで(次の)選挙をやってくださいというのが裁判所の要求なんだと思います」
また、選挙を無効にしてしまうと、違憲の状況を改善するための手続きを行う国会自体が無効になってしまいます。そのため、問題解消に向けた議論を進めることができないという状況に陥ってしまうのです。
MC鈴木「聞けば理屈は一応分かるけど『違憲だけど選挙は無効じゃない』って違和感ありますね」
「違憲」と「違憲状態」はどう違う?
7月の参院選で発生した一票の格差について、仙台高裁では「違憲」、福岡高裁宮崎支部では「違憲状態」との判断が下されました。この2つにはどのような違いがあるのでしょうか?
選挙区によって一票の価値の不平等が著しければ「違憲状態」、違憲状態が国会によって「合理的期間」内に是正されなければ「違憲」とされています。
初めて違憲状態の判決が下されたのは1992年の参院選の6.59倍です。その後2010年の参院選の5.00倍が違憲状態とされ、徐々に厳しい判断がされるようになっています。
この一票の格差の問題に対して、国会も裁判所の判断に呼応して定数の是正に取り組んでいます。しかし、その動きが今の日本の人口変化のスピードに追いついていないのが事実です。
平河氏はそのギャップを埋めるために「小選挙区にしろ大選挙区にしろ根本的にフレキシブルに変えていかないといけないのでは」とコメント。
もともと参議院には県の代表が集まるといった意味合いがあったものの、合区が設置されたことでその意味合いが薄れている、と平河氏は言及します。
また衆議院小選挙区では選挙区の形が複雑化しており、東京では特にそれが顕著です。それについて平河氏は「地域代表制が失われてしまっている」と指摘。「参議院と衆議院の在り方を見直して迅速に対応していただきたい」とコメントしました。
MC鈴木は都議時代の経験を踏まえ「弁護士グループのみなさんの動きがすごく大事」とコメント。違憲状態・違憲の判決は議会にとって大きなプレッシャーになるとのことです。
MC鈴木「『会期中にやらないといけない』という議論の前提が揃うので、判決や皆さんの動きはすごく大事な取り組みだと思います」
動画本編はこちら!
一票の格差問題はなぜ解消しない?解決策はあるのか?平河エリ氏とガッツリ討論!
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