神戸連続児童殺傷事件の記録廃棄 最高裁、一転して詳細調査へ 世論高まり方針転換 家裁関係者らから聞き取り調査

 1997年に神戸市で起きた連続児童殺傷事件の事件記録を神戸家庭裁判所が廃棄していた問題で、最高裁が背景や経緯などの詳細調査に乗り出すことが9日、関係者への取材で分かった。10日から同家裁などの関係者への聞き取り調査を始めるという。最高裁は問題発覚当初は「個別案件の調査は行わない」としていたが、世論の高まりなどから方針転換する。

 法務省などの複数の関係者によると、再発防止と記録保持のルール化へ向けた情報収集などが目的。年内にも開く最高裁の有識者委員会からも意見を聞き調査を進めていくという。重大少年事件を巡っては各地の家庭裁判所で記録廃棄が相次いで判明しており、それらも調査対象に含めるかどうか個別に検討するという。

 神戸連続児童殺傷事件は1997年2月から5月にかけ兵庫県神戸市須磨区で発生。男子中学生(事件当時14歳)が相次いで小学生5人を殺傷した。犯人の少年が「酒鬼薔薇聖斗(さかきばらせいと)」と名乗ったことから「酒鬼薔薇事件」などとも呼ばれる。

 発生から25年となる今年、兵庫県警や神戸地検の作成した供述調書、実況見分調書などを含む記録が全て破棄されていたことが判明。「廃棄された当時の状況やどのような検討がなされたかは不明」(神戸家裁)とされる。下級裁判所による重大事件記録の「特別保存」制度の運用を巡るあいまいさも問題として浮上し、被害者遺族などから批判が高まっていた。

 最高裁は10月25日付で出した通達「事件記録等の廃棄の事由に関する今後の方針」で再発防止への取り組みを下級裁判所に指示。同月27日の参院法務委員会では、立憲民主党の牧山弘恵氏(神奈川選挙区)の「神戸をはじめとした不適切廃棄自体について調査を行わないのか」との質問に「(最高裁の)有識者委員会の意見を聞くなどして判断していく」(小野寺真也総務局長)と答弁。神戸家裁による廃棄の発覚当初に「個別案件の調査は検討しない」としていた従来方針からの変更を示唆していた。

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