大滝詠一ファンも必聴!松田聖子「Candy」色褪せるどころか輝きを増し続ける傑作  アルバムリリース40周年。デビュー3年目にしてアーティスト!

デビュー3年目にしてアーティスト。松田聖子の6thアルバム「Candy」

なんてキュートなアルバムなのだろう。とにかく可愛らしさが充満している。デビュー3年目、弱冠20歳の女の子だった松田聖子が出した6枚目のオリジナルアルバム『Candy』がリリースされたのは今からちょうど40年前、1982年11月10日のこと。もちろん可愛いだけではない。当時はまだアイドルのLPを買うのに若干の気恥ずかしさがあったが、松田聖子はユーミンやサザンと同じ感覚で堂々とレジに持って行けた。既にアーティストだったのだ。

一聴してすぐに大好きなアルバムとなったが、擦りきれるまで聴いたレコードと言ったら嘘になる。なぜなら、当時は買ってすぐカセットテープに録音して聴いていたから。なので正確に言えばテープが擦り切れるほど聴きまくった。

新参者のナイアガラーとしては、前年秋に大瀧詠一が提供したシングル「風立ちぬ」と、全10曲中5曲を提供したアルバム『風立ちぬ』に大いに惹かれた。その後、夏のアルバム『Pineapple』と2枚のベスト盤を間に挟んでの約1年後、再び大瀧が曲提供をすると聞いて、それまで以上に待ち望んだニューアルバムだったのだ。

大瀧詠一、財津和夫、細野晴臣、南佳孝、大村雅朗、松本隆が参画

『風立ちぬ』はSide Aがすべて大瀧作品という構成であったが、ここでは先行シングル「野ばらのエチュード」を含めて財津和夫が3曲、大瀧と細野晴臣と南佳孝が2曲ずつ、そして大村雅朗が初めて聖子に作曲もしている。

いずれ劣らぬ名曲揃いだが、当時の松田聖子の魅力を最大限に引き出したのは、大瀧作品以外のアレンジをすべて手がけた大村と、全作詞を担当した松本隆によるところが大きいだろう。

大瀧が提供した「四月のラブレター」と「Rock'n'roll Good-bye」は、いずれも多羅尾伴内名義による自身の編曲。メロディアスな楽曲とノヴェルティタイプとを書き分けている。後者は大瀧自身の「Rock'n'Rollお年玉」や「ROCK'N'ROLL退屈男」に連なる一編であり、間奏に「むすんでひらいて」のメロディが導入されるのが印象的なのだが、圧倒的なヴォーカル力で他作品と並んでいても違和感はない。

しょこたんも大好き「黄色いカーディガン」は細野晴臣が提供

聖子フリークの中川翔子も大好きだという細野の「黄色いカーディガン」や、最近になってコンサートで歌われる機会が多くなった南の「モッキンバード」など、甘いヴォーカルと絡み合って実に魅力的。

個人的には財津の提供曲にノックアウトされた(昭和的表現)。アルバム冒頭の「星空のドライブ」から、大村のアレンジと相俟って心地よい疾走感。実際にドライブしながら何度聴いたことか。松本の詞、特に台詞っぽい問いかけの部分が抜群で、聖子の可愛さが突き抜ける瞬間を味あわせてくれる。後々定番となる「未来の花嫁」は、アルバムで一番好きな曲である。このアレンジはもう神がかっている。

そして最後に置かれた大村の「真冬の恋人たち」は、このアルバムの冬のイメージを決定的にする名曲。男声パートはレーベルメイトの杉真理によるもの。今でもこのロマンティックな曲を聴くと、暖房でガラス窓がすっかり曇ってしまった真冬の車の中で、残念ながら恋人とは呼べなかった異性と一緒に聴いた想い出が昨日のことのように甦ってくる(私ごとにて失礼!)。

ジャケット写真も “アイドルからアーティストへ” の表れ?

シングルもアルバムも、決まりごとのようにジャケットの写真がアップだった中で、本作の引きの画によるジャケ写は異例だった。彼女をアイドルからアーティストへという意識の表れとおぼしい。が、次作『ユートピア』でその目論見があっさり返上されるのは、やはりファンからの要望であったろうか。白っぽいドレスで自転車に跨がって微笑む聖子ちゃんのあどけない笑顔がなんとも可愛らしい。

自分から見れば3つ年上のお姉さんであるにも拘わらず、今もつい “聖子ちゃん” と呼んでしまうのを許していただきたい。どうやらそれは全世代通じて、例えば現在20歳の女性もそう呼んでいるらしいから凄い。

ユーミンやキョンキョンのようにニックネームならまだ呼びやすいのだけれど、年上の女性に “ちゃん付け” もどうかと思いつつも、現在進行形のアイドル、松田聖子はやっぱり聖子ちゃんなのである。

この傑作アルバムも40年経った今でもまったく色褪せていないどころかますます輝きを増しているのだ。

カタリベ: 鈴木啓之

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