こちらは「吉原ごぼう」といって広島・東広島市 豊栄町のご当地野菜です。味がいいといわれながら生産量が少なく、“幻のゴボウ” と呼ばれています。そんな中、『ゴボウで地域おこし』と、地元の人たちが動き始めました。
【写真を見る】幻の「吉原ごぼう」 新人女性農家が初収穫 東広島市 地域活性化を目指す
先週末(6日)、広島市の神社で開かれたファーマーズマーケットです。
その一角で販売されたのが幻のゴボウ…。東広島市 豊栄町の「吉原ごぼう」です。
川崎理恵さん
「太くても柔らかくて色白で、とても香りがいいゴボウなんです」
100グラムがおよそ100円と、普通のゴボウより割高ですが、初めて聞く名前にお客さんは興味津々です。
買い物客
「初めて買った」
「何かね、珍しいと聞いたので」
「豚汁に入れようかなって。立派だったので、おいしそうでした」
川崎理恵さんは、ことしから「天神原たなか」という屋号で吉原ごぼうの栽培を始めた新人農家です。
川崎理恵さん
「実際に買っていただく方の顔を見られるっていうのは、やっぱりうれしいですね」
吉原ごぼうの産地、吉原地区です。
吉原出身の川崎さんは、夫と子どもと暮らす黒瀬町から車で1時間かけて、この畑に通っています。週3日のペースですが、収穫するこの時期は毎日です。
一緒に作業をする実家の父・田中雅芳さんも、やはりゴボウ作りは初めてです。雅芳さんが重機で土を掘り、スコップと棒でゴボウを掘り出します。
田中雅芳さん
― これは一級品ですか?
「一級品です」
吉原ごぼうは、一般にふつうのゴボウより大きく、大きいものは1メートル近くになります。自慢は味の良さです。
川崎理恵さん
「普通のゴボウと違うのが香りやえぐみが少ない」
生でも食べられるそうです。
柴田和広 記者
「あっ本当、えぐみがないですね」
川崎理恵さん
「ないです。サラダに入れたり」
おいしさのヒミツは畑の土でした。
父 田中雅芳さん
「これが本当のゴボウの土なんですね。これ、キラキラ光っているのが見えると思います」
光る土で育てると、市販のゴボウも吉原ごぼうになるというのです。
先生役の農家が、その正体を教えてくれました。地元で吉原石と呼ばれる花崗閃緑岩という石でした。
先生役の農家 迫真治さん
「この石がいいんです。この吉原石が出るところしか、吉原ごぼうはできないと」
ー 何がいいんですか?
「何がいいのか、どこへ聞いたらいいでしょう」
迫さんによりますと、吉原石が風化した土がゴボウ栽培に適しています。ただ、その土があるのは、吉原地区の中でも長さ1キロほどの限られた範囲です。
迫真治さん
「1キロくらいの範囲の少しの面積の中で作りますから、『幻のごぼう』というんじゃないですか」
もともと、吉原ごぼうは、10軒ほどの農家が細々と作っていました。しかし、高齢化でやめる人が出る中、地域の世話役を務める迫さんが、3年前から周辺の農家に栽培を持ちかけています。
迫真治さん
「田中さんと話をしたら、娘が帰って農業したいということを聞いてですね、『ぜひ、ゴボウを作ってくれんか』と」
川崎理恵さん
「あんまり何も考えずに、チャレンジできることはやりたいなと思って、『やります』と」
畑は、迫さんの紹介で2アール余りの休耕地を借りました。
迫真治さん
「夢としてはやっぱり、毎年、若い人が1人・2人ずつですね、作ってもらえれば、この地域も活性化するんじゃないかと」
地元の人も川崎さんの就農を喜んでいます。
寺田ちえみさん
「黒瀬からわざわざ、週に何日か通ってお父さんを助けられて、すごくいいことだと思います」
寺田さんは、さっそく川崎さんのゴボウを注文しました。
川崎理恵さん
「小っちゃい頃から知っている方に、そうやって『がんばって』って言っていただけるのが、すごく励みになりますね」
川崎さんの本業は、福祉施設の管理栄養士。ゴボウの加工品作りにも意欲を持っています。来年は、栽培面積を増やして作る計画です。