次世代SoC「MediaTek Dimensity 9200」が発表

先日から開催されているExecutive Summitに先立って、MediaTekは、同社の「Dimensity 9000」の後継となるフラッグシップSoC「Dimensity 9200」を発表しました。より優れたパフォーマンスと電力効率の向上に加えて、モバイル半導体業界に多くの”初めて”をもたらします。

Dimensity 9200は、TSMCの第2世代4nmプロセスで製造され、第2世代ARMv9アーキテクチャを基に作られたクロック数3.05GHzのARM Cortex-X3をメインコアに備えています。

パフォーマンスと電力効率が考えられた8コアCPU


システムオンチップ(SoC)の心臓部は、4つの高性能コアと4つの高効率コアを組み合わせた、複合CPUとなっています。Cortex-X3(3.05GHz)と3つのCortex-A715(2.85GHz)はパフォーマンスを必要とする処理に使用され、4つのCortex-A510(1.8GHz)は演算能力の必要が少ないタスクを処理するようスケジューラーに選択されて使用されます。

MediaTekがGeekBench 5.0で計測したところによると、シングルコア性能は12%、マルチコア性能は10%、それぞれDimensity 9000から向上しています。改良された電力効率は、前世代から最も大きく向上した点になります。新型チップでは性能が向上しているにも関わらず、消費電力が25%削減されています。

CPUコアは、Dimensity 9200でMesiaTekが業界で初めて導入した、帯域幅8,533MbpsのLPDDR5X RAMにアクセスします。

データを永続的に保存するために、ストレージ通信プロトコル「Multi Circular Queue(MCQ)」を備えたUFS 4.0は、ストレージへの直接アクセスに現在利用可能な最速のデータ転送を提供します。

ハードウェアレイトレーシングを備えた11コアGPU「Immortalis−G715」


Dimensity 9000のグラフィックスプロセッサ「Mali G710」と同様に、「Immortalis-G715」はハードウェアレイトレーシング(RT)を備えています。

レイトレーシングについて特定の使用例は確認されていませんが、MediaTekの説明によると、ソフトシャドウ、リフレクション、アンビエントオクルージョン等の3Dゲームにおける基本的な用途でRTを使用出来ることが示唆されています。

MediaTekのGFXBench Manhattanベンチマークの数値は、GPUが前世代よりも32%高速化しつつ、消費電力が41%少ないことを示しています。

”前世代と比較すると、GPU性能が32%高速化しているが、消費電力は41%も削減されている”

ゲームと視聴体験の強化


ゲームの観点で見ると、この新型SoCはMediaTekのゲーミングテクノロジー「HyperEngine 6.0」を備えており、システム設定を自動的に最適化してゲームパフォーマンスを最大限に発揮します。

MediaTekによると、ディスプレイ技術「MiraVision 890」によって、多くのディスプレイ及びビデオストリームパラメータをスマートに調整し、ハードウェアとソフトウェアを最適化することで視聴品質を向上させます。

さらに、ゲーム体験を改善するために、この新型ハードウェアは可変リフレッシュレートに対応しており、Full HD+で最大240Hz、WHQDで最大144Hz、5K(2.5Kx2)で最大60Hzのリフレッシュレートとなります。

第6世代AIプロセッシングユニット「APU 690」


「APU 690」は、MediaTekが開発した第6世代のAI計算ユニットです。

仕様上、APU 690はETHZ 5.0ベンチマークで旧世代から35%の性能向上と、AI超解像処理(AI-SR)で45%の消費電力削減をもたらすはずです。

例えば、スマートフォンに保存されている1080pの動画を4Kモニターやテレビで再生した場合、グラフィックスシステムが動画をより高品質にアップサンプリングするためにAPUが役立ちます。このタスクは計算負荷が高いため、MediaTekが電力効率を大幅に向上したことは素晴らしいことです。

AIアーキテクチャは、従来の混合精度のAPUから改善されています。第5世代では、従来のINT16を使用していました。つまり、各整数は常に16ビットでエンコードされていたということです。混合精度コンピューティングで、APU 690は浮動小数点(分数)と整数の両方を、4ビット、8ビット、または16ビットの様々な数値バイナリ形式で処理出来るようになりました。

例えば、4ビットでは0から7までの数字をエンコードしますが、16ビットのエンコードでは65,355まで達します。0〜7、もしくは0〜255の数値の場合、16ビット形式を使用する必要はありません。ハードウェアの計算ユニットによって、より多くのデータブロックを同時に処理出来るようになっています(並列処理)。MediaTekは、APU 690の混合精度の導入により、計算速度が98%向上したと主張しています。

”混合精度コンピューティングでAPU 690の計算速度は最大98%向上します”

カメラ機能とイメージシグナルプロセッサ(ISP)「Imagiq 890」


APUは通常、AI駆動の画像処理で重要な役割を果たします。GPUとISPも、そのタスクの処理を担うことが出来ます。

新しいハードウェアにより、写真や動画のコンテンツをリアルタイムで検出し、人物、空、海、建物、植物、前景、背景といった、画像内の様々な領域を識別することが可能になります。画像のセグメンテーションが実行されると、システムは様々なフィルターまたはアルゴリズムをシーンの様々な箇所にリアルタイムで摘要出来ます。それは、彩度、色調、コントラストの調整に使用されます。

AI駆動の画像セグメンテーションにより、カメラとディスプレイの両方の画質が向上します。

MediaTekは、Dimensity 9200でAIを活用して、アクションやスポーツの撮影におけるブレを無くす「Dual Stream AI Shutter」機能を有効にしています。MediaTekは、この機能を”モーションアンブラー”と呼んでいます。

Imagiq 690は、新しいRGBWセンサーをサポートする初めてのRGBW ISPです。従来のRGBピクセルに加えて、新型センサーは白色ピクセルを備えており、色に関係無く明るさを捉えます。MediaTekが夜間撮影の明るさが30%向上されると説明しているように、それによってより良い夜間撮影が可能になります。

接続性


Dimensity 9200はWiFi 7に対応する初めてのSoCで、最大通信速度は6.5Gbpsとなります。

このチップセットはミリ波とsub-6の5Gをサポートし、通常のビームフォーミングよりも25%高速な「mmWave SMART Beamforming」機能も備えています。この新しいミリ波テクノロジーによって、ピーク速度7.9Gbpsという驚異的なデータ転送が実現します。

この記事は、編集部が日本向けに翻訳・編集したものです。

原文はこちら

The post

次世代SoC「MediaTek Dimensity 9200」が発表

first appeared on

Ubergizmo JAPAN

.

© ティー・クリエイション株式会社