プジョー9X8に「不具合」/ブリーフィング遅刻で罰金/来季に向けた“偵察団”も【WECバーレーン木曜Topics】

 WEC世界耐久選手権の2022年第6戦『バーレーン8時間』が、バーレーン・インターナショナル・サーキットで開幕。走行初日となった11月10日(木)は、昼と夜に2回のフリー走行が行われ、いずれのセッションでもプジョー・トタルエナジーズの93号車プジョー9X8がトップタイムを記録した。

 最終戦ということもあって、パドックでは今季に別れを告げる様子や、来季を睨んだ動きなども見られるようになっている。そんなバーレーンの木曜日のパドックから、各種トピックスをお届けする。

■ポルシェはスーツも特別カラーに

 既報のとおり、ポルシェはLMGTEプロでの最終レースを迎える911 RSR-19に特別カラーを施してバーレーンに現れたが、さらに4人のドライバーにも特別なレーシングスーツを着用させている。

 通常はグレーをベースとしたスーツを着用しているポルシェGTチームのドライバーは、その車両と似たようなストライプが入ったブラックのスーツに身を包んでいる。

 最終戦でのタイトル獲得を目指して92号車をドライブするミカエル・クリステンセンは、次のように語っている。

「僕が参戦するという特権を与えられたこの偉大な時代をいい形で終えたいと思うことは、とても大事なことだ。それは重要ではあるけれど、911 RSRは少なくともこのレースの後、プロカテゴリーで歴史に残るという事実もある。だから、このレースの重要性にはいろいろなレベルがあるんだよ」

92号車ポルシェ911 RSR-19をドライブするミカエル・クリステンセン

■ブロンズドライバーのハイパーカーテストに「待った」

 AFコルセ83号車オレカ07・ギブソンをドライブするフランソワ・ペロードは、決勝翌日の日曜に予定されているシリーズの『ルーキーテスト』で、アルピーヌA480・ギブソンLMP1マシンをドライブする予定だったが、FIAとACOが彼の参加をキャンセルした。

 スポーティング・レギュレーションでは、ブロンズドライバーはWEC公式セッションでハイパーカークラスの車両に乗ることができないからだ。ペロードが運転できないにもかかわらず、アルピーヌはそのLMP1マシンをテストに参加させることを検討している。

 アルピーヌのチーム代表であるフィリップ・シノーは、ペロードがプライベートでA480を試乗することは可能だという。「別の機会に、別の場所でやるだろう」と彼は述べている。

 シノーはまた、アルピーヌが今週末に世界選手権タイトルを争うことができるのは、ハイパーカーカテゴリーにおけるBoP(性能調整)のおかげであると明言した。

「我々がそこにいるのは、BoPのおかげだ 」とシノー。

「トヨタ、グリッケンハウス、LMP1が同じグリッドに並ぶことはありえない。将来的には、(アルピーヌもLMDh車両で参入して)同じファミリーのクルマで比較できるようになるので、もっと簡単になると思う。これまでは簡単ではなかったんだ」

最終レースを迎えているアルピーヌA480・ギブソン

■プジョー9X8、ギヤボックスを交換

 テクニカルディレクターのオリビエ・ジャンソニーによると、プジョーはフリープラクティス1で「不具合」が発生した後、93号車プジョー9X8のギヤボックスを交換した。

 木曜日は両セッションともプジョーが最速タイムをマークした。しかし、ジャンソニーは興奮する必要はないと語っている。

「悪くはないように見えるが、まだフリー走行の段階だ。タイヤのデグラデーションはここではとても重要だから、ラップタイムはチームが今日とった戦略によって大きく左右される。でも、少なくとも我々自身は、やりたいことをやることができた」

バーレーンのFP2で初の公式ナイトセッションを走るプジョー9X8

■2023年参戦のキャデラック陣営が3度目の“偵察”

 キャデラック・チップ・ガナッシ・レーシングは、来年キャデラックV-LMDhでハイパーカークラスに参戦するため、マイケル・ハーベイを含む代表団が今週末バーレーン入りしている。同チームのスタッフは、今年のスパ6時間レース、ル・マン24時間レースにも、偵察のため出席していたと見られる。

 GMのスポーツカーレーシング・プログラムマネジャーを務めるローラ・ウォントロプ・クラウザーは、先週のセブリング・インターナショナル・レースウェイにおける24時間耐久テストを成功を受け、比喩的に「2インチ背が伸びた」と表現した。

「24時間を走りきるために必要なパーツがすべて揃っていることを確認することは、大変な努力の積み重ねだった。最後まで走りきったことは、チームが必要としていたことであり、本当に良い気分と達成感を得るための特別なモチベーションとなった」

「まだやるべきことはたくさんある。ロレックス(24時間)が目前に迫っているが、これでもう大丈夫、微調整に取りかかれるという気持ちになれたと思う」

 またクラウザーによれば、コルベット・レーシングは来年のル・マン24時間に2台目のシボレー・コルベットC8.Rを出すことは「おそらくない」という。2024年にスタートするカスタマーコルベットZ06.R GT3プログラムの強化に注力する中で、来年のGTE仕様マシンは「シャシーの数が限られる」と述べた。

現在LMGTEプロクラスに投入されているシボレー・コルベットC8.R。クラス消滅に伴い、来季はLMGTEアマクラスに戦いの場を移す

■2023年シーズンの不出場が決定

 LMP2からプロ/アマクラスがなくなることが予想される中、ARCブラティスラバは来季のWECに参戦しないという。

 チームオーナー兼ドライバーのミロ・コノプカは、「私は自分の夢を実現し、スロバキアチームとスロバキア国旗を世界選手権とこのモータースポーツ分野での最大のイベントであるル・マン24時間レースに出場させた」とこれまでの取り組みを総括した。

ARCブラティスラバが2022年のWECで走らせている44号車オレカ07・ギブソン

■本日の罰金情報

 ミシュランはFIAから1000ユーロの罰金を課された。イベント開始前にシリーズが受け取った最初のタイヤ申告において、3台が「正しくない」とされたためだ。

 Dステーション・レーシングのドライバーであるチャーリー・ファグは、木曜日の朝のドライバーブリーフィングに遅刻したため、500ユーロの罰金を科された。

 一方で、チーム・プロジェクト1のマッテオ・カイローリはドライバーブリーフィングに姿を見せなかったものの、これは空港の遅延により飛行機の乗り継ぎができなかったためであり、スチュワードはペナルティを科さないことを明らかにしている。カイローリはレースディレクターと個別のブリーフィングを行うことになる。

 また、ユナイテッド・オートスポーツは、フリー走行2回目にピットボックスで耐火服を着ていないスタッフがガムテープを手渡したとして、250ユーロの罰金を科されている。

マッテオ・カイローリもドライブするチーム・プロジェクト1の46号車ポルシェ911 RSR-19

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 走行2日目、11月11日(金)は、現地時間11時(日本時間17時)から60分のFP3のセッションが行われた後、16時50分(同22時50分)からLMGTE、17時10分からハイパーカー&LMP2の予選セッションが、それぞれ10分間にわたって行われる予定だ。

2022年のWEC第6戦が行われているバーレーン・インターナショナル・サーキット

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