おかやまマラソン13日号砲 3年ぶりランナーの祭典

 「おかやまマラソン2022」(実行委員会、岡山陸上競技協会主催)は13日、岡山市中心部から南部を巡る42.195キロの日本陸連公認コースで開かれる。新型コロナウイルスの影響で中止が続き3年ぶりとなる大会は、ファンラン(5.6キロ)を取りやめ、フルマラソンのみ実施。1万2000人が出場予定で、リニューアルオープンしたばかりの岡山城やJR岡山駅前のビル街、のどかな田園風景など多彩な表情を見せる岡山路を駆ける。道中には地元特産品をそろえた“おもてなし”を用意し、沿道応援とともにランナーを後押しする。

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 午前8時45分、ジップアリーナ岡山(同市北区いずみ町)前の国道53号をスタート。同駅前の桃太郎大通りから市役所筋を抜け、自然豊かな市南部の干拓地で折り返す。後半は30キロ過ぎに高低差約17メートルの岡南大橋(同市南区海岸通―中区江並)を渡り、旭川沿いを北上する。観光名所の後楽園や岡山城を望みながら走り、シティライトスタジアム(同市北区いずみ町)でフィニッシュする。

 沿道では各所に設けた応援スポットで大学生や高校生が吹奏楽、ダンスなどを披露。「おもてなし給食」のコーナーにはシャインマスカットや清水白桃ゼリー、ラーメンといったグルメをそろえ、岡山の食の魅力を感じてもらう。またサポート役となるボランティアには約5000人が応募、給水やランナーの誘導などを務める。

 新型コロナが収束しない状況を勘案し、今回は定員を前回から2割削減した上で海外枠も設けず、各種の感染対策を講じての実施。大声での応援を控えるといった制約はあるものの、郷土を盛り上げるランナーの祭典がいよいよ県都に戻ってくる。

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楽しさ表現 心温まる大会に スペシャルアンバサダー 有森裕子さんに聞く

 五輪女子マラソンメダリストの有森裕子さん(55)=岡山市出身=は、おかやまマラソンの第1回大会(2015年)からスペシャルアンバサダーを務めている。PR役のほか運営面での助言、コース監修にも携わり、思い入れのあるレース。3年ぶりの開催となる今年は「心温まる大会に」と願う。

 ―新型コロナウイルスの影響で2度中止された大会がようやく再開します。

 「スポーツを通じて岡山の皆さんをつなぐ」との思いで大会を応援してきただけに、コロナ禍でできなくなってしまっていたことに残念な思いをしていました。久しぶりの開催が決まり、第1回大会の時のような喜びを感じています。皆さんに3年ぶりのうれしさや楽しさを目いっぱい表現してもらえるような心温まる大会として再スタートを切ってもらいたいです。

 ―今大会では、負傷者や急病人の応急手当てを行う「メディカルランナー」の出場枠を新設し、感染対策も徹底して行われます。

 安全、安心を確保していくことは非常に大切です。新型コロナに対する情報や状況は当初から随分変わり、対応ができるようになってきました。ただ、不安を感じる人もおり、医療現場もまだまだ大変な状況が続いています。愛される大会にするため謙虚に丁寧に進めていくことが重要です。

 ―コロナ禍により、各地で大会が中止されるなど市民がスポーツに親しむ機会が減ってしまいました。

 実は私はそれほどネガティブには捉えていません。コロナ禍でみんなが不便、不自由になったことで、オンライン会議など多様なコミュニケーションツールが普及しました。これまで、さまざまなハードルのため社会参加が困難だった障害者の立場を理解することにつながった面もあります。この気付きがスポーツの在り方を広げていくことになるのではないでしょうか。今まで以上に共生したスポーツがつくられていくことを楽しみにしています。

 ―今後の大会運営に生かせるものはありますか。

 スマートフォンなどを使って距離や時間を計測し、それぞれの場所や時間で楽しむ「オンラインマラソン」というものがあります。おかやまマラソンでも、ハイブリッドで取り入れてみてはどうでしょうか。岡山に来られない障害者だけでなく、タイミングが合わずエントリーできなかった人も参加できるため、多くの人を取り込むきっかけになります。そういった方法を見いだし、盛り上げにつなげてほしいと思います。

 ―おかやまマラソンの魅力は何でしょうか。

 県民による途絶えない応援や沿道で提供する多彩な給食などホスピタリティー(おもてなしの心)が非常に高いところです。岡山市中心部は街路樹が紅葉し、気候も一番良い時期に走ることができ、岡山の良さを全国の参加者に知ってもらえる。地元ランナーや応援する人もわがまちの良さや忘れかけていた風景を堪能してもらいたいです。

 ―有森さんは今回も走る予定です。参加者へメッセージをお願いします。

 久しぶりの大会ということで、うれしくて気持ちがはやってしまう人が多いのではないでしょうか。でも、けがをしないよう無理せず、気持ち良くスタジアムに帰ってきてほしいです。私も前回の19年大会では不本意にも途中棄権してしまったので今回は完走を目指します。「3年ぶり」を楽しみながら一緒にゴールを目指していきましょう。

 ありもり・ゆうこ 1966年生まれ。岡山市立岡北中、就実高から日体大を経て実業団のリクルートでトップランナーとなった。女子マラソンで92年バルセロナ五輪銀メダル、96年アトランタ五輪銅メダルを獲得。現在はNPO法人ハート・オブ・ゴールド代表理事としてスポーツを通じた社会貢献に力を入れ、日本陸上競技連盟副会長、知的障害者の競技活動を支援するスペシャルオリンピックス日本理事長も務める。

郷土色豊かなメニュー “名物”おもてなし給食

 コース各所でランナーに配られる「おもてなし給食」は毎回好評で、いまや“名物”の一つと言っても過言ではない。3年ぶりの今回も、果物や銘菓など郷土色豊かな多彩なメニューをそろえており、岡山の食の魅力発信にも生かす。

 19種類の給食を、フィニッシュ地点を含めた計12カ所で提供する。人気上位の果物は、シャインマスカットと早生(わせ)ミカン、モンキーバナナを用意。新たに大会ロゴマークの焼き印入りの「たまごせんべい」、塩分補給にぴったりの「種無し干し梅」が登場する。

 通常は屋台が連なる「ラーメン給食」は、新型コロナウイルス感染対策で1店のみに限定。コース最大の難所・岡南大橋を渡った31.5キロ地点で、細切れチャーシューを載せたしょうゆラーメンを振る舞う。

 「大手まんぢゅう」や「白桃きびだんご」、「瀬戸大橋まんじゅう岡山物語」など銘菓も盛りだくさん。おいしいエネルギー補給源を前に手が伸びがちになるとは思うが、くれぐれも食べ過ぎには注意して42.195キロを走り抜けよう。

ランナーに割引や飲食 奉還町商店街

 発着点に近いJR岡山駅西口の奉還町商店街は、12、13日に「ランナーズおもてなし奉還祭」と題したイベントを開く。ゼッケンを提示したランナーは、商品の割引や飲食の提供などのサービスが受けられる。

 同商店街振興組合に加盟する大衆食堂やカフェ、衣料品販売など10店が参加。飲食をした出場者に菓子やつまみをプレゼントしたり、古着やパンなどを値引きしたりする。商店街の入り口や対象店舗前に大会ののぼりを立ててPRする。

 イベントは、ランナーを温かく迎えて岡山県外の人に商店街を知ってもらうきっかけにしようと、2017年から毎回企画している。同組合の森元康輔理事は「走り終えた後などにゆっくり訪れてもらい、疲れを癒やしながら楽しい時間を過ごしてほしい。大会ととともに商店街の盛り上げにつながれば」と話している。

有森裕子さん
「ランナーズおもてなし奉還祭」のちらし

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