水に浮かんで、流れてくるパフェや料理…思い出の甘味処を再現 湯河原

店内のリバーカウンターからは、注文したあんみつやパフェが流れてくる

 あんみつやパフェを流水に浮かべて提供する風変わりな飲食店が、人気を呼んでいる。湯河原町宮上に店を構える「流甘味(りゅうかんみ)むろさだ」。同所で創業した元商店の名を受け継ぐコンビニが昨年閉店したことをきっかけに、4代目オーナーの室伏美樹さん(46)=同町=が「地元を元気にする店を残したい」と一念発起し、幼い頃祖母に連れて行ってもらった思い出の“流れる甘味処”を再現させた。

 同店は町営都市公園近くの温泉場に今年3月にオープン。木目調のカウンター席に水が流れるレール「リバーカウンター」を備え、水に浮かんだデザートや軽食がゆっくりと目の前を流れていく。注文票もトレーに乗せて流し、できあがった料理ももちろん、水に浮かんで運ばれてくる。室伏さんは「目で見て楽しい夢のような飲食店は、子どもたちに大人気」と笑みを浮かべる。

 埼玉県出身で元会社員の室伏さんは約10年前、長女とともに湯河原町に移住。親族の跡を継ぐ形でオーナーになった。約100年前に酒類を販売する商店として創業した店は、1988年ごろから「コミュニティ・ストア」の湯河原むろさだ店として運営していたが、新型コロナウイルスの影響で本部が撤退。同店も準じて昨年に閉店した。

 その後、空き店舗に入るテナントを探したものの「なかなか見つからなかった」という室伏さんは、コロナ禍などの影響を受けた事業を対象とした県の補助金制度を知り、新規事業を検討。「申し込み期限まで1カ月しかなかったが、経営の素人ながら何かできないかと頭をひねっていた」と振り返る。

 思い浮かんだのは、幼少期に祖母と訪れた地元・埼玉の甘味処だった。「流れてくるデザートが魅力的で、幼いながらに全国展開だと思っていた。いつか娘にも体験してもらえたら」。あの思い出の甘味処を「湯河原にも作ろう」と決意した瞬間だった。

 ただ、開店に当たっては並々ならぬ苦労が待ち受けていた。静岡県沼津市で流れるスイーツの店を経営し、埼玉の思い出の店での勤務経験もある店主に“弟子入り”して、メニュー作りやリバーカウンターの仕組みなどのノウハウを習得。町商工会や町内の看板制作会社などにも協力を仰いだといい「店作りに関して全くの素人だが、子ども時代の憧れを再現することができて感無量」と感謝する。

 昭和レトロな雰囲気漂う埼玉県と静岡県の甘味処に尊敬の意を込めて、メニューにあんみつやうどんをとり入れた。「地元素材を使うなど、湯河原らしさと今っぽさにこだわった」という室伏さん。「流れるデザートが、湯河原の新しい名物として老若男女に親しまれるようになれば」と期待を込めている。

 午前10時から午後5時まで。水曜定休。問い合わせは同店、電話0465(62)2016。

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