44年前の夢実現 バトンつなぐ 元上五島高陸上部員 還暦過ぎ「国立」でリベンジ

バトンをつないだ4人。左から堤さん、安田さん、宇戸さん、倉津さん=東京都、国立競技場(倉津さん提供)

 「やったー!」「おめでとう」。この秋、長崎県立上五島高の卒業生で還暦を過ぎた元陸上部員4人が、44年前の北九州大会の悔いを晴らそうと、東京・国立競技場のリレーフェスティバルに出場。同級生らが声援を送る中、走りたかった決勝の「あと1本」を思い、バトンをつないだ。
 出場したのは▽堤政二(しょうじ)さん(61)=新上五島町七目郷▽安田宏さん(61)=同奈摩郷▽宇戸政雄さん(62)=福岡県▽倉津雅一(くらつまさいち)さん(62)=東京都。
 4人は1978年の夏、1600メートルリレーでインターハイ県予選を突破。北九州大会(福岡市・平和台陸上競技場)に出場したが、予選落ちし、決勝に進めなかった。
 悔いはずっと残っており、東京で高校生を中心に陸上を指導している倉津さんが今年6月、「みんなでつなごうリレーフェスティバル2022」(日本陸上競技連盟主催)が10月に初開催されることを知り、「国立であと1本を走ろう」と3人に呼びかけた。
 しかし、ブランクはあまりに大きかった。堤さんは膝やアキレス腱(けん)が悪く、体調も思わしくなかった。安田さんも40代まで県民体育大会に出場していたが、アキレス腱を痛めるなどして走るのをやめていた。
 ただ、4人で走りたいという思いは同じ。それぞれの地で練習を重ね、当日を迎えた。チーム名は「五島列島KIZUNA1978」。同フェスの種目に1600メートルリレーはなかったので、200歳以上クラスの400メートルリレーに出場。「1600メートルリレーはあったにしても走れない」と倉津さん。
 44年前と同じ走順で1走堤さん、2走安田さん、3走宇戸さん、アンカーは倉津さん。全員が持てる力を出して走り切り、関東、関西などから友人ら約20人が駆け付けて声援を送った。タイムは1分23秒45。12345と並んだ数字に皆が笑った。
 堤さんは「ゆっくりしか走れなかったので恥ずかしかったが、無事にゴールし、みんなの笑顔を見られてよかった」とほっとした様子。福岡県から応援に行った木谷(きや)義秀さん(62)は「同級生が東京五輪の競技場を走ったことに感激し、年齢、体力的に厳しい挑戦をする意気込みに心を打たれた」と感動しきり。
 安田さんは「この4人で再びバトンをつないだこと自体が誇らしい。リベンジできた。インタビューを受ける様子が会場のビューイングに映し出され、五島をPRできたことなど一生の思い出になった」と振り返った。

44年前の雄姿。左から堤さん、安田さん、倉津さん、宇戸さん=福岡市平和台陸上競技場、1978年撮影(倉津さん提供)

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