「自転車盗は犯罪です!」 諫早で多発 19歳巡査が啓発ポスターで抑止

描いた啓発ポスターの前でスタンプを持つ山下巡査=諫早駅前交番

 「自転車盗は犯罪です」「狙われてるのは 無施錠です!」。駅駐輪場などでの自転車盗が多発している長崎県諫早市で、抑止と防止双方の視点で訴える啓発ポスターが10月から町中などに掲示されている。諫早署地域課の山下花菜巡査(19)が画力を生かして完成させた。犯罪意識、防犯意識の低さが指摘されている自転車盗をなくすことで、治安悪化を招く新たな犯罪の発生を防ぎ、「地域の安心・安全につなげたい」と話す。
 幼い頃から絵を描くことが好きだった山下巡査は、古里である鹿児島県内の高校の美術科で油絵を専攻。同県の高校美術展では上位入賞した腕前だ。目撃証言から犯人の特徴を描く似顔絵捜査官に憧れ、「街の雰囲気が好きだった」という本県で警察官に。今年2月、同署に配属された。
 平地が広がる諫早は通勤・通学や生活の足として自転車が使われ、それに伴い自転車盗も多い。同署が認知した今年の自転車盗件数は10月末現在、47件(前年同期比13件増)と県内の警察署で最多。うち44件が無施錠による被害だった。「歩きたくなかったので、止めてあった自転車を足代わりに使った」「施錠するのが面倒くさかった」などと犯罪や防犯に対する意識の低さも目立つという。
 諫早駅前交番に勤務する山下巡査は、通学のために買ってもらったばかりの自転車を盗まれた高校生を見て心を痛めていた。上司から「ポスターを作ってみんね」と声をかけられた時は、「描きます」と即答した。
 自転車盗は犯罪だと強調した抑止ポスターと、地域から犯罪の芽を生まないために施錠を呼びかける防犯ポスターの2種類で、並べると自転車のタイヤがつながって見える。自転車利用が多い高校生ら若い世代を意識し、自転車に使われるワイヤロックを手錠に見立てるなどインパクトのあるデザイン、キャッチコピーにした。市内の交番や駐在所前、中学、高校などで掲示している。
 このほか、啓発スタンプの原画も担当。同署はパトロールで無施錠の自転車を見かけると、「鍵かけんば」などの文言が入ったスタンプを押した札をくくりつけ、注意を促している。山下巡査は「自転車盗を軽視してはいけない。出来心でも後悔することになる。犯行を踏みとどまらせるとともに、利用者も鍵かけの意識を持つきっかけになればうれしい」と話した。


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