403号機関車、ついにお披露目!明治期の姿に復元し豊洲で一般公開 特定の時刻になると汽笛や走行音も聞けます

2022年11月12日、江東区豊洲の芝浦工業大学附属中学高等学校で元鉄道院403号機関車の除幕式が行われました。本日から一般公開が始まり、公開空地内で24時間見学可能になります。運転台の公開は月曜~土曜の9時~17時です(日祝及び学校がお休みの時は休み)。

403号機関車は1886(明治19)年にイギリスのナスミス・ウィルソン社で製造された400形のうちの1両です。機関車本体と炭水庫が一体となったタンク式の機関車で、のちに国産の860形(A9形)、230形(A10形)などの礎となりました。日本の鉄道黎明期の姿を現代に伝える貴重な存在と言えるでしょう。

日本では、最初は国鉄の前身である鉄道局に所属したのち、現在の東北本線・高崎線・常磐線などの前身にあたる日本鉄道で活躍。1897(明治30)年にJR外房線の前身である房総鉄道に譲渡されますが、1907(明治40)年の房総鉄道国有化によって出戻りするかたちとなり、鉄道院時代の1909(明治42)年に「No.403」と改められます。

1914(大正3)年に廃車されると、今度は西武鉄道の前身である川越鉄道へ譲渡。晩年は上武鉄道に貸し出されていましたが、1965(昭和40)年に西武鉄道へ返却・廃車され、所沢市のユネスコ村や西武鉄道横瀬車両管理所で展示・保存されてきました。鉄道ファンの中には横瀬のイベントでご覧になったことがある、という方もいらっしゃるでしょう。

芝浦工業大学附属中学高等学校は今年100周年

機関車を保存展示する芝浦工業大学附属中学高等学校は、日本鉄道開業50周年記念事業の一つとして、1922(大正11)年、東京市麹町区に「東京鐵道中学」として設置されました。その後は東京育英中学、東京育英高等学校と校名を変更し、さらに時を経て芝浦学園と合併します。1982年には板橋区坂下に移転し、芝浦工業大学中学高等学校として6カ年一貫教育を開始。2017年に新豊洲へ移転し、現在の校名になりました。

前身の東京鐵道中学が設置されたのは鉄道開業50周年時、今年は鉄道開業150周年ですから、同校は開業100周年を迎えたわけです。そこで「創立100周年記念事業を進めるにあたり、本校と前身の東京鐵道中学とのつながりを象徴するようなモニュメントはできないだろうか」(芝浦工業大学附属中学高等学校 佐藤元哉校長)と考え、蒸気機関車の設置・展示を検討したといいます。

2021年9月に委員会を立ち上げ、蒸気機関車を探したところ、同学の卒業生でもある西武建設の方から「西武鉄道が蒸気機関車を所有している」と紹介を受け、寄贈を受ける運びとなりました。403号機関車の全長は約9メートルで、デゴイチなどと比べると半分ほどの大きさですが、「小ぶりながらも愛らしいその姿が豊洲の地に馴染むのでは」(佐藤元哉校長)と期待が寄せられます。

当時の姿を再現、定刻に音がなる仕組みも

2022年4月に撮影された修復前の姿(写真:西武鉄道)

403号機関車の保存展示にあたり、西武建設の助力を受け、横瀬車両管理所で徹底した補修整備が施されました。除幕式の配布資料などによりますと、失われていた製造銘板とナンバープレートを復元して取り付けるだけでなく、ユネスコ村時代に取り付けられたという独特な形状の前照灯(ケースのみ)と標識を撤去し、当時のオイルランプを模した前照灯を設けているということです。

2022年9月、製造銘板やナンバープレートが取り付けられました(写真:西武鉄道)

運転室内には失われていた圧力計と水位計を設置し、運転室前の汽笛や後ろ側連結器も取り付けました。機関車は全体的に外板の劣化が進行しており、徹底的なハツリと再塗装を実施。痛みが激しい部分は撤去した上で新たにステンレス板を取り付けているそうです。

2022年5月、汚れや錆の除去作業を行う様子(写真:西武鉄道)
2022年8月には芝浦工業大附属中高鉄道部による塗装イベントも行われています(写真:西武鉄道)
2022年9月、運び出しの様子。移動設置の予定日は台風14号が関東を直撃するという予報でしたが、9月19日の新豊洲設置時には奇跡的に台風が去ったそうで、無事横瀬から新豊洲の地へと運び込まれました(写真:西武鉄道)

展示の見所は機関車のみではありません。港区教育委員会とJR東日本からは高輪築堤築石の寄贈を受け、機関車展示土台に使用しています。明治期の姿に戻った機関車と高輪築堤は親和性も高く、鉄道開業当時の姿に思いを馳せられるようです。

さらに、博物館明治村の協力のもと、動態保存されている蒸気機関車9号の汽笛と走行音を採音。これを一体的な音源として加工し、毎日12時と17時に定刻再生する機能も備えます。12時は「午後も頑張ろう!」という元気の良い音調、17時は「そろそろ家に帰りましょう」という音調になっているそうです。

記事:一橋正浩

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