意外と知らない睡眠の“新常識”「朝を制する者が夜もよく眠れる!?」「 眠れないのは自己防衛反応だった!」

みなさんは毎日、十分な睡眠が取れていると思いますか? 実は睡眠は、認知症の発症を予防する重要な役割を担っているそうなんです。今回は質の高い睡眠の取り方について、睡眠医療に詳しい中部大学生命健康科学研究所特任教授で医学博士、日本睡眠教育機構理事長の宮崎総一郎先生に、SBSラジオ『IPPO』パーソナリティの牧野克彦アナウンサーが聞きました。

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十分な睡眠取れていますか?

「不安で眠れない」は自己防衛反応だった!

牧野:不眠には様々な原因があると思いますが、過去の不幸な出来事が原因で、不安でなかなか寝付けないという人に、先生はどんなアドバイスをしていますか。

宮崎:不安で眠れないというのは、実は正しい反応なんです。睡眠には、記憶力がよくなる効果があるので、ぐっすり眠ってしまうと悪い記憶がいつまでも消えずに残ってしまうんです。ですから、辛い出来事があった後、1か月間くらい眠れないというのは、悪い記憶がいつまでも残らないようにするための自己防衛反応だといえます。

牧野:人間の自己防衛反応が、あえて眠れなくしているということだったんですね。

宮崎:夜眠れないことで昼間の活動に影響がある場合は、日中の短時間仮眠が有効です。若い人ほど眠る力が強いので、仮眠時間の目安は年齢によっても異なりますが、小学生なら7分、大人なら15分くらい、高齢者では30分以内をおすすめしています。

認知症と睡眠の関係

宮崎:ここ20年の研究で、大きないびきを伴い、睡眠中に呼吸が止まることがある「睡眠時無呼吸症候群」という病気が広く知られるようになりました。実は睡眠時無呼吸症候群の患者は、一般の人に比べ、約1.5倍ほど認知症になる危険性が高いことがわかっているんです。

人間の脳は、起きている時間帯はずっと活発に動き続けているので、脳内にアミロイドβや活性酸素などの悪い物質が溜まっていきます。脳は睡眠中にこれらの「ゴミ出し」をしているので、眠れない状態が続くと、脳が「ゴミ屋敷」になり、認知症リスクが上がってしまうというわけなんです。ですから、長引く不眠は自己判断でそのままにせず、病院の受診をおすすめします。

睡眠の質を上げるには?

牧野:睡眠の質を上げるにはどうしたらいいでしょうか。

宮崎:一番大切なのは、朝の光と朝食です。

牧野:昼食でも夕食でもなく、朝食ですか?

宮崎:夕食に関しては取らない方がいいくらいです。牧野さんは、今朝は何を食べましたか?

牧野:水を1杯飲んで、バナナを少しだけ食べました。

宮崎:それが悪いんです! 私は朝食には、少なくとも4品は取るようにお伝えしています。ご飯やパンなどの炭水化物や果物、野菜は食べる人も多いと思いますが、朝食ではそれらに加えタンパク質の摂取が重要になります。

朝食のタンパク質に含まれる必須アミノ酸のトリプトファンは、日の光を浴びると元気ホルモンのセロトニンになり、夜は睡眠ホルモンのメラトニンに変わるので、朝食で摂取すると昼は元気で夜はよく眠れるようになるんです。

朝からそんなに食べられないと思う人もいるかもしれませんが、4品を意識すれば、自然とタンパク質を食べる機会も増えると思うのでぜひ心掛けるようにして下さい。

牧野:朝食がここまで睡眠に影響を及ぼしているとは思いもしませんでした。

宮崎:朝を制する者が夜もよく眠れるということです。

理想の睡眠時間は?

牧野:理想の睡眠時間についても教えて下さい。

宮崎:はい、まず牧野さんは、最近何時間くらい眠っていますか?

牧野:6〜7時間です。

宮崎:起きた時に頭はスッキリしていますか?

牧野:少しぼーっとしています。

宮崎:それは睡眠が足りていないということです。理想の睡眠時間というのは、人それぞれで異なります。朝起きたときに疲れがなくて、昼間の活動に差し支えなければ、短めの睡眠時間であっても睡眠は足りていると考えられます。朝起きたときに疲れが残っていたり、昼間に強い眠気があったりするようでしたら、睡眠が足りていないと考えてください。

牧野:何時間が正解ということではないんですね。

宮崎:前回のショパン国際ピアノコンクール(2021年開催)で2位になったピアニストの反田恭平さんは、11時間以上寝ているそうです。4位の小林愛実さんも昔から10時間以上寝る子だったといいます。先にお伝えした通り、睡眠には記憶力をよくする効果があるので、ピアノも上手になるわけなんです。

そして、睡眠時間はその人の基礎代謝とも関係があります。筋肉質の人は基礎代謝が高いので長時間眠ることができますし、逆に高齢者の場合は代謝が落ちているので、睡眠時間も短くなります。

牧野:年を取ると朝早く目が覚めてしまうというのは、そういうことが関係していたんですね。

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