品種改良された一代限りのF1種か、古来より続く在来種か─。農と命をテーマに全国行脚し、地場産農作物も“ゲスト出演”するミュージカル「しあわせのタネ」が17日、小田原三の丸ホール(神奈川県小田原市本町)で開かれる。
市民有志が実行委員会を立ち上げ、脚本家坂口理子さんと共に市内農家への取材を重ねた。地元でほそぼそと受け継がれてきた「真ネギ」や数十年越しの改良で誕生した「下中たまねぎ」など、在来、F1種双方の“ドラマ”から関係者は「命の大切さを考えるきっかけになれば」と訴える。
舞台は、とあるカップルの結婚披露宴。都会育ちのサラリーマンの新郎は気落ちした時に食べた真ネギの味が忘れられず「脱サラして農家で在来種を育てたい」と言い出す。これにF1種を育てる農家の新婦の実家が反発。新郎側親族がF1種を「次世代に命をつながない」と批判したことで、両家のいさかいは「F1種か在来種か」の論争に発展していくドタバタ劇だ。
F1種は人為的に掛け合わせた雑種品種。一代限りで強い成長力を持ち、形や大きさもそろいやすいので出荷に適さない規格外品も出にくい。ただ、農家は種を毎年仕入れなければならず、消費者からは遺伝子の多様性を失うことでマイナスイメージを持たれることもある。
一方で在来種は土着で受け継がれた個性豊かな野菜だが、収穫量が少なく採算性が低いなど栽培の難しさが指摘される。北条早雲が持ち込んだともされる真ネギは箱根の温泉地に薬味用として出荷されたが、近年は生産農家もほとんどなくなり、直売所を除けば消費者の手に渡る機会もない。